上 下
160 / 238

脱出の手助け~異形の子等の力フル活用~

しおりを挟む



「はい、分かりました、はい」

 スマートフォンの通話を切る。

「どうしたんだ?」
「幼い娘を年離れた甥の妻にすると夫と義両親が言い出してどうしようもないから実家まで連れて帰って欲しいと」
「そういう依頼も多いな」
「緊急性が高いらしい慎次転移を」
「わかった、行くぞお前ら、目ぇ閉じろ」

 零、レオン、ニルスが目を閉じると、影から手が出て四人を包み込む。
 影の手が消えると目的の家の前に来ていた。

 零が電話をかけ直す。

「今、居るのは貴方とお子さん達だけですか、分かりました」

 零はチャイムを鳴らすすると荷物を抱えた女性を幼い子どもが二人居た。
 零は女性の手を取り、影に隠れる。

「両親は頼れますか」
「はい、相談しました。両親からも説得したようですが聞き入れられず、こういう形に」
「では両親の家へ、貴方の実家へ戻りましょう、遠いのでしょう?」
「はい」
「なら、大丈夫だな。慎次」
「目を閉じてください、お嬢ちゃんも僕もな」
「二人とも目を閉じるのよ」
「はい」
「あい」

 慎次以外の全員が目を閉じると影から手が伸び、包み込んだ。
 影の手が消えるとその場から全員が消えていた。
 代わりに、別の家の前に姿を現した。

「私の、実家……⁈ あのどうやって⁈」
「それは秘密です、これここの弁護士で腕利きで私からの依頼だと安くしてくれる弁護士です、そこに連絡して離婚へ」
「はい」
「それとこの封筒の中身、役にたつと思います、弁護士と共に見てください」
「有り難うございます」

 封筒を受け取ると女性は家に子どもと共に入って行った、両親らしき年老いた男女が出迎えた。


「あの封筒の中身は?」
「女性の旦那と浮気相手の写真と二人のやりとりと嫁いびりとセクハラの証拠録音さ」

 慎次が尋ねると、零は何でも無いように述べた。

「いつの間に」
「フエに頼んだ」
「ああ、なるほど」

 零の言葉に慎次とレオンは納得して頷いた。

「さて、帰ろうと思うが土産を買ってから帰るとしよう」
「いいですねぇ」
「伊賀さんと高嶺さん、瑞穂さんも頑張ってますからね」
「まぁ、いいか」

 零はタクシーを捕まえ、乗り込むとそのまま駅に向かい、土産物コーナーを物色して買い込んでから、人気のないところでニルスが視覚操作の結界を張り、その後慎次の力を使って転移して事務所の二階の自室に転移した。

「はー無事に戻れたな」
「高嶺さんと伊賀さんはいるでしょうか」
「居なかったら戻ってくるまで待てばいい」
「瑞穂さんはいるでしょう」

 ぞろぞろと下へ下りてくる。

「あ、所長さん‼」
「零さん!」
「零さん‼」

「不義理を働く義実家から女性を一人救出してきた、帰りの土産だ」

 零はそう言ってクッキーやらパイやら食べ物を置く。

「わー! ちょうどお茶にしようと思ったんです!」
「零さん、有り難うございますわ」
「零さん、どうもっす!」

 そうやって和やかに一時を過ごしてから、零達は見廻りへ戻った。




 それから一ヶ月後、女性から無事離婚できたと報告があり、これで娘達を守れると安堵の声を聞けた。

「さて、元義実家側はどうなってる?」
「ああ、小さい女の子をひきニートに嫁がせようとか馬鹿考えるのもいい加減にしろって親戚達に怒鳴られて、ひきニートも余計なお世話だってキレて孤立して、義実家連中は遠くに逃げていったよ、元旦那が左遷された場所に一緒ににげていったみたい」

 フエが現れてそう説明した。

「なるほど。馬鹿は元義実家連中だけだったという訳か」
「そゆこと」

 零は頷くとフエにクッキーとパイの箱を二つ渡した。

「マヨイ達と共に食べるといい」
「うん、そうする!」

 フエはにこりと笑ってその場から姿を消した。




「みんなー零さんからの差し入れだよー!」
「おかし?」
「そう、お菓子」
「わーい!」
「おかしすきー!」

 箱を開けて菓子を皆に分けながら、フエはお茶を入れ、菓子を口にした。

「こういうのも悪くないね」

 そう呟いて──





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、pixivにも投稿中。 ※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。 ※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

処理中です...