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告げ口~番いを蔑ろしてるつもりはないけれど~

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「ロナクの奴はまだ謹慎中か」
「謹慎中というか封印中だがな」
「そうか」

 朝食後の紅茶を飲みながら新聞を見つつ言う零に、慎次はそう返した。

「ロナクのやらかしは以前から目に余るものだったからな」
「俺が封印されてた時からか?」
「そうだ、主犯格を異形化させて事件の全貌が見えなくなりかけたなんてしょっちゅうだったぞ」
「……そうか」
「フエが居たから事件解明できたのも数知れずだ」
「フエはまぁ、万能だからな」

 慎次は軽く肩をすくめた。
 零は飲み干したカップを置く。

「以前はことある毎に、性行為に及びたがったが最近は減った、よい傾向だ」
「あーそれはいいな」

 零の言葉に慎次は遠い目をした。
 その訳は──




「フエの浮気者ぉ!」
「だから浮気じゃないっていってるでしょう⁈」
 フエと柊の口論。
 それに慎次が、
「そうだな、ご褒美と称して『花嫁』を抱くのは浮気だな」
「慎次ぃー!」
「フエの浮気者ぉ!」
「だから違うってばー!」
 火に油を注ぐ発言をしていた。
 結果柊は号泣。
 それにどうしようも無くなったフエが部屋へ連行という流れになった。

あの馬鹿フエも、番いがいるんだから異形性の発露以外は控えればいいのに」

 紅がやって来て呆れたように言う。
「フエがそれを実行できるか?」
「できるとしても一時だな、彼奴の異形性は強く『花嫁』を求める感情も強い」
「確かに」




 と、言うようなことがあったからである。
 だが、そのことを慎次は零に言うつもりはない。

「まぁ、だべったり愚痴を言う回数は増えたが、性交渉でしんどい思いする訳でも無いしな」
「零、お前相当苦労しているなぁ」
「まぁな、さて」

 零は達上がり、カップを流しに持って行った。
 コトンと置くと、慎次がすかさず洗う。

「私でも洗えるぞ」
「お前は割りそうだから却下だ」
「むぅ」

 零は不服そうな顔をした。
 だが、それを無視して慎次はカップを拭き、しまう。

「そろそろ見廻りだろう、行くぞ」
「分かってるか」
「当然だ」

 零の後を慎次はついて行く。

「さて、今日は何もないといいな」
「何もないが、本当に何もないならいいのだが」

 零が不満げに漏らす。

「安心しろ、異形の連中が近くにいたら俺等が通った時点でビビって姿現すから」
「そうじゃないのもいるだろう?」
「まぁ、確かに」
「私もついて行くー!」
「げ」
「フエ」

 慎次が顔を引きつらせ、零は名前を呼んだ。

「何でお前がいるんだ?」
「フエさんが見廻りするんでしょう、私にも手伝わせてよ」
「何を要求だ」
「愚痴を聞いてくれることを求める、柊さんの独占欲が日に日にましてるからここに来るのも大変だった」
「自業自得だろう」
「慎次のせいでもあるでしょう!」
「知らん」
「よくわからんが、行くならさっさと行くぞ」

 零が事務所の外に出ようとするのを二人は慌てて後を追う。
 その日は、隠れていた小さな異形達がフエの出す異形性におびえて出てくるという事案が多数あり、その対応に零と慎次は苦労したそうだ──





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