152 / 238
開放そしてまた封印
しおりを挟む「漸く出られたー!」
ロナの影の封印から介抱されてロナクは叫んだ。
「言っとくけど一時的だからね、エルのご飯をジンが収穫している間だけだから」
「ちぇー」
フエの言葉に、ロナクは不満そうに地面を蹴る。
「いーじゃん、そろそろ開放してくれても」
「反省が見られないのに開放するわけないでしょう?」
フエがずい、とロナクに詰め寄る。
ロナクは気まずそうな顔をした。
「分かったらタチの悪い新興宗教団体の本拠地に送るからさくっと殺して肉集めてきてね」
「行きましょう、ロナク」
「分かったよ、ジン」
既に準備済みのジンを見て、ロナクは肩をすくめた。
「それにしてもマジかよ、終わったらまた封印⁈」
「反省が見られないって言ってるでしょう」
「反省してるって、本当本当!」
「アンタの本当はあてにならない、いいから行ってこい!」
「いで!」
フエに蹴り飛ばされて、ロナクは姿を消した。
続いてジンも姿を消した。
「真面目にやってくれるといいけど」
『封印開けだからはっちゃけるかもしれません』
「それねー」
フエはロナの言葉に肩をすくめた。
「ロナク」
「いや、悪かったって!」
「どうしてくれる、予定よりも肉が少ないではないか!」
「だから悪かったって!」
ジンはロナクを揺さぶった。
ロナクが悪意を増大させる際、予定以上に増大させ異形化させてしまったからだ。
その結果、ジンがエルの為に確保するはずだった悪人の肉がかなり減ってしまったことにジンはかなりご立腹だ。
「どうしてくれる! エル様がお飢えになられたら!」
「だから悪かったって!」
「やっぱり予想した通りだったわ」
「げ」
「フエ様」
フエは呆れた顔でロナクを見下ろしていた。
とんと空中から下り、床に着地する。
「全く、調子乗るからこうなるのよ」
「うぐ」
「ねぇ、ロナ?」
『はい、何も言えません』
「ねーちゃん⁈」
ロナが姿を現すと、影が広がり、無数の手がロナクを影へ引きずり込んだ。
「ちょっと待ってよねーちゃん!」
「ロナ待つなやれ」
『はい』
疲れたような声色で、ロナは言う。
ロナクは影に引きずり込まれ、影は元通り。
「いいこと、ロナク。アンタの仕事は異形を作ることじゃないんだからそこんとこ分かりなさいな」
『知ってるからだしてくれよー!』
「はっちゃけて異形作ったからださない」
『うぐ』
「エル様の為の肉が……」
「それなら別途で私が補充したからそれもっていきな、住処に置いてある」
「有り難うございます」
フエの言葉にジンは頭を下げた。
「じゃあ、戻ろっか」
『はい』
「はい」
三人はその場から姿を消した。
「『新興宗教団体○○とテロリスト集団××の組織の本部壊滅、原因不明』……お前らだな」
「うん、正解ー」
新聞を見てため息をついた零が、フエに言う。
フエは満面の笑みで頷いた。
「……エルの肉か」
「正解ー」
「ロナクを封印から出したら多分宗教団体の方で異形化する事態になって肉が少なくなったから急遽テロリスト集団も襲ったということか?」
「ピンポンピンポン大正解!」
「嬉しくない正解だ」
「まぁ、人様の迷惑になる連中だからいいってことよ」
「そうか」
「おい、でロナクはどうなった」
慎次が零の朝食を零の前に置いてから尋ねる。
「もっかい封印、反省するまで出さない」
「そうか……」
「反省、いつするんだろうな」
「しらなーい」
零の問いかけに、フエはむくれたように答えた。
悪意の異形の子である悪意を司るようなロナクの反省などいつおきるか予想がつかないからである──
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる