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異形≒邪神~その名言うべからず~

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「なーんでロナクはあそこまで問題児なのかなぁ」

 フエは会議室でぼやいていた。

『すみません、フエ姉さん、ロナクがすみません』
「いや、ロナが謝る事じゃないから」

 首を下げるロナクに、手を振って否定するフエ。

『でも、私はロナクの「姉」です』
「そうだよねー、ロナクの双子の姉だもんねぇ」
『はい』
「責任感じてる?」
『え?』
「自分達のどちらか片方だけなら母親は生きていたかもしれないという事に」
『それは……』
『フエ! ねーちゃんをいじめんな!』
「封印されてるアンタは黙っとけ」
『ぎゃ!』

 フエがロナの影に刃のような物体を突き刺すと、ロナクの悲鳴が上がった。

「まー意地悪な質問だけど、私は産んだ時点で死亡確定だったから責任感じてるよ。これでも」
『確かに責任を感じずにはおれません、ですが……』
「蓮の母親のケースがあるから?」
『はい』
「まぁ、しょうがないよねー」
『……』

 フエは肩をすくめてため息をついた。




 蓮の母親は生きている。
 だが異形の子を孕んだ代償として不老不死の呪いがかかっていると言って良い。
 それ故、死ねずに住処の片隅でひっそりと暮らしている。




「アレも救いはないからね」
『……』
「異形の子を孕んで救いがあるのは今んところクラル達のお母さんだけじゃない?」
『あれは父である異形が人間に慈悲深いですから……』
「それね」

 フエが手を叩き頷く。

「つーか異形で統一していいって本人が言ってるあたり心広いよね本当の名前は──なのに」
『フエ姉さん!』
「おっとあまり言っちゃいけなかったんだ」
『フエのドジー……んぎゃ!』
「お黙り」

 フエは再度ロナの影に刃物のような物体を突き刺した。

「私達も零さんも異形としか呼ばないのはそいつの力をそぐ為だもんね」
『そうですね』
「異形は人間に取っては邪神、人間に害を与えるのがほとんど」
『だからこそ、私達はそれらを異形と呼び、神としての名前を呼ばない』
「そう、そうやって少しだけでも力をそぎ落とすの、名前で呼んだらヤバいヤバい」

 フエは肩をすくめた。

「だからニルスも、ニルスとしか呼ばない、人間の振りをしている時の名前でしか」
『それでも十分力を与えてしまってますからね』
「そう、だからレオンじゃなきゃ駄目なのよねぇ、彼奴の使い魔マジ強いから」
『本人も、ですよ』
「確かに」

「呼びましたか?」

 レオンがやって来た。

「お帰りーレオン、今日はどうだった?」
「過去に逃げようとしたので使い魔達に殺させました」
「タイムトラベラー的な奴だったのかー」
「ええ、そうやって逃げようとしたのが不味かったですね」
『貴方の使い魔はそういう輩にこそ強いものね』
「ええ」

 ロナに言われて、レオンは頷く。

「ところで、ロナクは」
「そこ」
「へ?」
『ここだよーうわーん!』

 ロナの影をフエが指さすと、ロナクの泣きわめく声が聞こえた。

「ああ、まだ仕置きの最中で」
「昨日の事は許しがたい」
「確かに」
「だから当分このまま」
『そんなー!』

 ロナクの悲痛な声が響き渡った──





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