クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

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番いを作る方法?~異形の子のやるべき事~

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「ねえ、フエお姉ちゃん」
「どうしたのレラ」

 会議室で本を読んでいるフエにレラが問いかけた。

「番いってどうやって見つけるの?」
「うーん……難しいね、それに答えるのは」

 フエは困った顔をして笑った。

「お姉ちゃんも見つけるの大変だったの?」
「そうよう、マヨイは半世紀弱かかったし、私はそれ以上かかったわ、一番短いのはりらじゃないかしら」
「りらお姉ちゃんが?」
「あの子で四半世紀だから」
「ほへー」

 レラは驚いた顔をしていた。
 それを見てフエは笑う。

「それにしてもどうしたの、急に番いを見つけたいなんて」
「康陽さんと蓮お姉ちゃん!」
「ああ……うん、一番健全で理解のある番い見つけた蓮ね」
「蓮お姉ちゃんみたいな番い見つけたい!」
「それなら蓮みたく仕事をこなさなきゃいけないし、人間に擬態するのももっと上手くやらないと」
「まだまだ、できてない?」
「少なくとも力加減は、ね。ちょっとした拍子に人外レベルの怪力でばきってやってしまうもの」

 フエがそう言うと、レラはしょんぼりとした。

「レラはまだ生まれて15年しか立ってないし、その間ずっとお父さんの中に居たんでしょう?」
「うん」
「じゃあ、仕方ないわよ、私みたく生まれてすぐ外に出て、あれこれした訳じゃないんだし、慣れるのは時間がかかるわよ」
「うん……」
「だから、一人で今は行動せず、ちゃんと私達と一緒に行動すること、いい?」
「うん!」
「ならよろしい」

 元気の良い返事をしたレラをフエは満足そうに見つめる。

「何を話してる?」
「紅お姉ちゃん!」
「紅姉さん」

 会議室に紅が入ってきた。

「いや、レラが番いを欲しがってるみたいだけど、早すぎるってね」
「そうだな、生まれて15年だが、その15年は親の体内で過ごしてきたお前には早すぎる」
「そうなの?」
「そうだ、第一番いが見つかるとは限らん、番いを持たない私が言う」
「紅姉さん年長だけど番いいないの」
「何で?」
「必要かと聞かれたら必要かどうか分からなかったからだ」
「そうなの?」
「フエとマヨイは番い側が二人を必要とした。りらも似たようなものだ」
「ほむほむ」
「蓮と康陽は互いを強く必要とした、まぁその必要とする過程で色々トラブルはあったがな」
「あったあったー!」

 フエは楽しげに頷いた。

「何があったの?」
「それはねぇ……」
「フエ姉さん、口は災いの元って言葉しってる?」
「げ」

 フエは少し顔を青ざめさせた。
 いつの間にか蓮が入って来ていたのである。

「私と康陽さんの件は秘密! って何度いったら分かるの!」
「何があったのー?」
「ちょっとごたごたしただけよ」
「蓮が自分は異形の子だからって康陽さんから逃げ回ってたの」
「フエー!」

 蓮は怒髪天を衝く勢いで蜘蛛に姿を変え、フエを追いかけ回した。

「ちょ、たんまー!」
『許さないー!』

 フエは焦って逃げ出し、会議室から出て行った。
 蓮は会議室の入り口を破壊し、フエを追いかけた。

「全く」

 紅は指を鳴らし、会議室を修復した。

「番い見つけるのって大変なんだ……」
「それだけ学習したならいい、番いを求める余り異形の子のやるべき事を忘れるな」
「人を害する異形を殺す事」
「分かっているならいい」

 紅に頭を撫でられ、レラは自慢げに胸を張った──





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