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自分の本体を見てげんなり~過去を夢見る~
しおりを挟む「自分の本体を見るのもなんか変な気分だなぁ」
フエは「世界」の中心で眠る白い邪神を見つめた。
周囲では、人魚のような異形が歌を歌っている。
「あの糞親父のと違って聞いてて心地良い歌だけど、やっぱりなんかなぁ」
フエは自身の「本体」を眠らせ続けている異形と「本体」を見つめた。
「見てても良いことないし、かーえろ」
フエはその場から姿を消した。
「フエ、お帰り何処へ行っていた」
通路を歩いているフエに紅が話しかける。
「ちょっとばっかし本体の様子を見に行ってたの」
「本体の、お前のか?」
「うん?」
「何か起きなかったか」
「何も」
「それなら良いんだ」
紅はそう言って立ち去った。
「私の本体を見れるのは私だけだからね」
紅が居なくなった後、フエはぽつりと呟いた。
「でも、あれが本体なのは認めたくねー、だからこっちだと黒にしてるんだけど……」
フエはため息をつくと、自分の部屋に戻った。
部屋に戻るとベッドで柊が寝ていた。
「私も寝よ」
フエはそう言って柊の隣に潜り込み、目を閉じ、そして眠りに落ちた。
喰らう。
死にたくないから喰らう。
親を、世界を作った奴を、世界を維持する奴を。
そしてその権限を奪う。
だから、こうなった。
フエが目を覚ますと、不安そうな顔で柊が顔をのぞき込んでいた。
「フエ……」
「んーどうしたの柊さん」
「うなされていたから……」
「うなされていた? 私が?」
フエが驚いたように問いかけると、柊はこくりと頷いた。
「……うなされる夢、だったのかねぇ」
「フエ、今日は休んでゆっくりしたほうがいい」
「そうもいかない、私に何かあったなら、世界に何か異変が起きているかもしれない」
「世界なんかより君が大切だ」
「柊さん、気持ちは嬉しいけど、それはできない」
フエはにこりと笑って柊の頭を撫でてから姿を消した。
「……フエの浮気者……」
一人取り残された柊はぽつりとそう呟いた。
「あーはははは! 蟲の異形にニルス襲われて怪我したの!」
「ニルスだけでよかったぞ、零に被害が及んだらしゃれにならんからな」
「いや全くもってその通り」
探偵事務所で爆笑していたフエは慎次からの言葉に真顔になる。
「ニルスを負傷させたのは私のミスだ」
零が重い表情をしていると、フエは零の顔を包んだ。
「そんなことなーい、ニルスには零さんを守れと命令してるからね、被害が彼奴だけですんで良かったに決まってる」
「だが……」
「零さん、そんなに思い詰めないで、ね」
フエは零の頬にキスをした。
「これでより安全になるでしょう、とりあえず今日は私が見廻りするから、慎次とレオンは零さんの護衛をお願い」
「了解です」
「わーったよ」
「んじゃ」
フエはそう言って姿を消した。
「フエ、何かあったのか?」
「さぁな、まあ何かあったんだろうよ」
「そうか……」
残された零の言葉に慎次が答えて、零はなんとか納得したようだった。
その日、零の街から半径100キロメートルの範囲に居る異形が根こそぎ捕食されて、その際人間が関わっているものが数件あり、事件として取り扱われることになったという──
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