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有能だけど……~割れ鍋に綴じ蓋~
しおりを挟む「フエ」
「どうしたの紅姉さん」
ある日の朝、通路を歩いているフエに紅が話しかけた。
「以前ロナクとジンが潰したヤクザ集団関係なんだが」
「どの?」
「結構前」
「OK把握」
何か分かったらしいフエは頷く。
そのまま紅は続ける。
「異形化する薬を作ってたのは有名な○×病院でな」
「え、あそこなの⁈」
「正確にはあそこで、働いている黒沢裕一郎という医者だ」
「めっちゃ有名な医者じゃん」
「そうだ、という訳で」
「で?」
「被害が甚大になる前に殺してこい」
「わーい、どうやって?」
「骨まで残すな、失踪したように見せかけろ」
「OKOK」
フエは其処まで聞くと、姿を消した。
「さて、私は薬の処分をしなければな……」
紅もそう呟いて姿を消した。
「黒沢先生! あの薬がどこにもありません‼」
「なんだって? あの薬は決して分からないように隠しておいたはずだ」
「それが全て消えています」
「……となると、あるのは手元に──」
「ご機嫌よう、お医者さん」
「「「⁈‼」」」
フエが姿を現し、スカートの裾をもって挨拶をする。
「悪い悪いお医者様、ヤクザに薬を売って異形化させて街を混乱させようなんて酷いお医者様」
「この世界には救いはない、ならば人じゃなくなるか、それか一瞬で殺されるかが救いだ」
「そう、じゃあ貴方から実践して」
医者の上半身が消し飛ぶ、だが、みちみちと音がしたと思ったら、傷口から巨大な口を持ったワーム型の触手状の異形が姿を現した。
近くに居た医師と看護師も異形の者となっていた。
「あーあ、めんどくさ」
フエはどろりと溶けて黒い液体となり、異形と化した者達の体を侵食し、そしてばきばきと捕食した。
血を一滴も流さず。
「『黒沢裕一郎医師他看護師複数名失踪!』か……フエ、これお前がやったんだろう」
零は新聞を読みながら紅茶を飲み、フエは本を読んでソファーに座っていた。
「わかるー?」
「事情は紅から聞いてたからな、適任者はお前だろう」
「さっすが零さん」
「で、何しに来た」
「ちょっと異形性発露してるから相手してくださいー!」
「はいはい……」
零は疲れたように言ってベッドに座ると、フエに押し倒された。
「えへへー『花嫁』の零さん、本当優しいから大好きー!」
「それ、柊に聞かれると後々問題発言だぞ」
「居ないから言ってるの」
「だから浮気者めといわれるのだ」
「もー、手加減しないよー?」
「いつもだろうが」
零はため息をつくと、フエに服を脱がされた。
しばらくしてから、零のあえぎ声が部屋に小さく響いた。
「浮気者」
「しかたないでしょう、異形性発露しちゃったんだから」
「浮気者め……」
「もー!」
ベッドに座っていた柊を押し倒し、フエはキスをする。
「足腰立たなくなるまでヤルからね」
そう言ってフエが柊の服を剥ぐを、柊はうっとりした表情を浮かべた。
「割れ鍋に綴じ蓋か」
「どうしたの紅姉さん」
「いや、何でもない」
ふと呟いた紅の言葉に、蓮が首をかしげるが、紅はそれ以上のことは言わなかった──
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