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異形案件でなくとも~良き人を守りたい~

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 零と荒井は見廻りの最中だった。
 どう見ても異形案件ではなさそうな事案と遭遇する。
 高校生くらいの年の子達が同年代であろう少年を殴り蹴飛ばしていたのだ。

 荒井は動画を撮り、音声を録音してから、零と共に乱入し、犯罪者集団を蹴散らした。

 そして警察も呼んでいたらしく、動画と音声データを渡すと犯罪者集団は連れて行かれた。

「大丈夫かい?」
「あ、有り難うございます」
「いつもあんな目に?」
「はい……今日はたまたま学校が開いてなかったから此処に来るように言われて……お金を持ってこれないなら……」
「全く嘆かわしい」
「親はどうしてる」
「僕には興味がないようで……妹ばかり」
「そうか」

 零は若干のネグレクトを受けている事に気づいた。

「なら、私が君の今回の件を担当しよう、警察や弁護士にもそう連絡する」
「い、いいんですか?」
「勿論だとも」

 その子と連絡先を交換し、その子が立ち去ると荒井が口を開いた。

「できるのか?」
「できるとも、何度もやってきた案件だからな」
「……そうか」




 零は自分の人脈と権限をフルに使い、罰金刑に持ち込んだ。
 また、受験の前ということもあり何名かは推薦が取り消しになっていた。




 そして、賠償金として貰ったお金を新しい銀行口座に作らせいれて、少年に渡した。
「親には決して言ってはならないよ、あ。探偵事務所の事は言っていいよ」
「はい、僕、祖父母に連絡した所引き取られることになりました」
「そうか」
「祖父母が住んでいる所が僕の第一志望なので、頑張りたいです」
「そうか、頑張るといい」
 少年はそう言って探偵事務所を後にした。




 その数日後、探偵事務所に夫婦とみられる人物がやってきた。
「アンタか! うちの子を唆したのは!」
「はて、何のことでしょう?」
「出来損ないが私の父母と連絡を取って、引き取られていったんだよ、それだけならいい、父母から『お前らにやる財産は全部この子にやる』『びた一文も渡さない』と言われたんだ」
「ほぉ、つまり貴方達のネグレクトが知られたと、私の所為で?」
「その上、父から会社を解雇宣言された、この年でどうやって職をさがせと?」
「そうよ、妹が可哀想だと思わないのかしら」
「妹を可哀想だと思わない程、貴方は息子をないがしろにし、妹を溺愛していた」
「それの原因で父母に縁を切られたんだ、お前らの責任だろう」

 男女はぎゃーぎゃーとわめき、探偵事務所のものを壊しはじめたとたん体の動きが止まった。

 そしてしばらくして、警察がやってきて連れて行かれた。

「荒井か?」
「ああ、動けなくするくらいなら簡単だ」
「多少は暴れても良かったのだがな」




「えー零さんにそんなことする奴いたの? 教えてくれたらよかったのにー」

 慎次が住処に戻るとフエがむくれてそう言った。

「お前は大事にするだろうが」
「だって『花嫁』さんに危害を加えようとしたんだよ?」
「だからといって大事にして言い訳ではないだろう」
「むー」
「フエ姉さん、慎次兄さんの言う通りだよ」
「荒井の言う通りだ」
 蓮と康陽がやってきて、慎次の味方をする。

「むー!」
「零に本気で危害を加えた場合ならともかく、暴れる程度だ、可愛いものだろう」
「可愛くない!」
「大事にしたら、零さんに迷惑がいくの分かるでしょう?」
「それはそうだけど、うー」
「ともかく、何もするなよ」
「うー」

 不本意そうなフエを残して慎次はその場を立ち去った。




「五体不満足にしても良かったんだが、それはやり過ぎだからな、分かっているさ」

 ベッドに横たわり、慎次はそう言って目を閉じた──




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