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零のとある一日~不穏を残す~
しおりを挟む探偵事務所の朝。
零は目を覚ました。
「くしゅ」
くしゃみをする。
前日紅が久々に異形性の発露が起きたといって相手をして疲れて裸のまま寝たから少しだけ肌寒かった。
「おい」
「荒井か」
零の裸を見ても何も思わないような態度でに荒井は零にタオルかけてやる。
「飯の支度している間に風呂で汚れ落としてこい」
「わかった」
零はタオルを羽織って風呂場へと向かった。
そして暖かなお湯が入っている浴槽に入る前に、シャワーで髪や体を洗い、風呂につかる。
「ふぅ」
心地よさにうとうとし始める。
「おいこら、風呂場で寝ると死ぬぞ」
慎次がおたまと鍋を打ち合わせ、ガンガンとならした。
それにふっと零は意識を取り戻す。
「すまない……」
「いい、早く上がれ」
「ああ」
零は荒井に言われるままに風呂から上がり、体を拭いて着替え、料理がおかれたテーブルの椅子に腰掛ける。
「いただきます」
零は手を合わせてそう言うと、朝食に手をつけ始めた。
お粥、それへの付け合わせ。
漬物。
一見すると簡素に見えるがよく見ると手が込んでいた。
出汁はきちんととられ、各付け合わせも種類豊富。
漬物も市販のものではなく作った物。
「ごちそう様」
「おう、じゃあ歯を磨いてこい」
「分かった」
零は歯磨きをしにいった。
荒井はその間に片付けを開始している。
零の歯磨きが終える前に洗いは後片付けを終え、仕舞い、エプロンを外してコートを羽織った。
「おわったぞ」
「着ろ」
歯磨きを終えた零に、荒井はコートを渡す。
「さて、行くか」
「ああ」
そう言って事務所の下の階へと移動する。
「こんなでかい赤ん坊のような異形が出るとは思わなかった」
「とにかく走れ!」
おぎゃああああああ‼
人間の赤ん坊のようだが、巨大な異形から逃げる零達。
「出口が塞がれてるぞ」
「ぶっ壊せばいい!」
荒井の足下の影が広がり、壁を破壊する。
光が差し込んでくる。
ぎゃああああああ!
異形の一部が溶ける。
「……荒井」
「了解した」
廃棄予定の館が揺れる。
その間に零達は脱出し、館が崩れ、異形は陽光にさらされて溶けていった。
「……」
耳障りな悲鳴を聞きながら、零は呟く。
「あの異形なんだったんだ」
「あれ、だけで終わる異形じゃありませんよおそらく」
「確かにな」
不穏な言葉を残して零は荒井達とその場を後にした──
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