クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

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新しい「妹」~クラルとマヨイの妹~

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「うわ⁈」

 フエが住処を歩いていると、巨大な触手のような異形が姿を現していた。

「マヨイのお父さんじゃん、どうしたんですか?」

 触手はぐねぐねと体動かした。

「え、クラルとマヨイに妹ができたから、身の安全も考えて此処に預けたい、それはいいですけど……」

 フエがそう言うと、触手に割れ目ができ、そこから大人の女性のような存在がずるりと出て来た。

 直後、マヨイやその女性のような存在に似た女性が割れ目から顔を出す。

「いつも申し訳ないわ」
「マヨイのお母さん、気にしないでください」
「じゃあ、私達は行きますから、行きましょう、貴方・・

 女性が触手の中に再び入ると、割れ目は消えて、異形は居なくなった。

「もしもーし」
「ん……」

 黒髪に黒い目に色白の肌、白いワンピースの女性らしき存在が目を覚ます。

「……」
「初めまして、私はフエよ」
「ああ、フエ姉さん! 会いたかった! 私はレラ!」
「おうふ」

 女性らしき存在──レラはフエに抱きついた。

「ちょっと力加減覚えようねー人間だったら大けがしちゃうから」
「ああ、私ったら、恥ずかしい」

 フエに指摘されて、レラは顔を真っ赤にした。

「生まれて何年?」
「15年です」
「成長早いなおい、マヨイとは真逆だな」
「マヨイお姉ちゃんは?」

 レラはキョロキョロと見回す。

「うーうー♩」
「マヨイお姉ちゃん!」

 マヨイが四つん這いになってやって来たのを見て、レラはマヨイに抱きついた。

「新しい異形の子か?」

 となりにいたクラルが見つめるそして驚いたような仕草をした。

「クラル、マヨイー。その子貴方達の『妹』よ。生まれて15年しか経過してないらしいからちゃんと面倒みてね、私も手伝うけど」
「いもうと⁈」
「父に母……今もラブラブなのか」
「ラブラブっぽいよ、あの様子だと」

 フエがそう言うと、クラルは呆れたような仕草をする。
 マヨイはぎゅっと抱きしめられている。

「『花嫁』さんにも会いたいの!」
「あーちょっと待ってね……うん、今は休んでるからいいよ、行こう案内してあげる」

 フエがカツンと靴をならすと扉が現れ、開けると探偵事務所の二階につながっていた。

「わぁ……」

 レラは見るもの全てに目を輝かせている。

「うー……」
「……」

 そんなレラをマヨイとクラルは不安げに見つめている。

「珍しいな扉を作ってくるなんて」

 ソファに座っていた零がフエ達を見る。

「ん、その子は──」
「新しい異形の子でマヨイ達の妹」
「私、レラって言います! 『花嫁』さん、会いたかった!」
「ぐえ」

 レラが抱きつくと、零は変な声を上げた。

「はいはい、レラ! 力の加減は覚えようねって私さっき言ったばっかりだよね⁈」
「あ……ご、ごめんなさい『花嫁』さん、だから嫌いにならないで……」
「この程度で嫌いにならんさ……少し息ができなかったがな」
「あうう……」

「マヨイ」
「う?」
「実の兄姉きょうだいとしてレラをしっかり守るのと、人間のルールを教えるぞ」
「う!」


 まだ幼い異形の子である妹のレラを見て、クラルとマヨイは決意をした──





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