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「兄」は思う~依存する番い達について~
しおりを挟む「どうしたのクラル」
バーのような場所で一人手についてる口で酒を飲むクラルにフエが話しかける。
「ああ、フエか……」
「なんか言いたそうだね?」
「お前は依存する番いで苦労はしないか?」
「まぁ、大変な時もあるけど可愛いもんよ。ヤバくなったらゴートゥーベッドして、イチャイチャすればいいだけの話だし」
ずるっとクラルのコートがずれる。
「本当、そういうもんなんか……」
「と言うかマヨイも似たようなもんだよ」
ピシ‼
グラスにヒビが入り砕けた。
「あーもー! クラル、何やってるのよー!」
「す、すまん……とんでもないことを聞いたから……」
「そーお?」
フエは透明な硝子とよく似た素材をかき集めて手のひらで包み、再びそれをグラスの形へと戻した。
「マヨイ……私が知らぬ間に、大人になって……」
「あの子は子どものままだよ」
「……」
「ずっと子どものまま」
「聞き分けの良い、大人しい子のまま」
「でも、隼斗さんと零さんが関わるなら別、二人は守らないといけない対象だからね」
そこまで言って、フエはグラスに何かの液体を注ぎ飲み干した。
「かー! やっぱマヨイの所の林檎ジュースは美味いね!」
「それは、そうだろう」
クラルは誇らしげに言う。
「あの子は豊穣の化身だ、その地を実り豊かにする、水場も同様」
「けれども姿を現してはならぬ、父の血を濃く引いてるから、表だって何かはしない」
「そうだ」
「ただし例外が、ある。隼斗さんと零さん関係ね」
フエはそう言って林檎ジュースをつぎ足し、飲み干す。
「私達ではどうにもならない異形性、クラル貴方は──」
「今はコスプレと言われているが、奇跡の医師と呼ばれている」
「そうね、医者から見放されるような病気をした善良な人を無料で救っている」
「移植手術が必要な子でさえも」
「臓器はいくらでも作れる」
クラルの手の口が新しい酒が入ったグラスの酒を飲む。
「そこがマヨイとの違いなのね」
「そうだ」
「誰もが貴方の手術を受けたがる、けど受けれる訳じゃない」
「私は異形の子、気まぐれ故に」
「本当にそうかしら?」
クラルの言葉に、フエは疑問を投げかける。
クラルは答えない。
「結局、悪人が多すぎるってだけの話よね」
「いや、善人がいるが全てが善人ではないというわけだ」
「確かに」
「母親が善人でも、父親が悪人の場合がある、逆に父親が善人で、母親が悪人の場合もある」
「その通り、人は皆仮面で自分を隠している」
「ああその通りだな」
フエは唇を舐めて言う。
「でもそんな仮面は私達には通じない、なぜなら──」
「異形の子、だからだ」
「その通り」
「……」
「では、何にしようか」
「何?」
「まだ飲むんでしょう? 付き合うよ」
「番いはいいのか?」
「ここに来る前に抱き潰しておいた」
「そうか……」
そう言って二人はグラスを持つ。
「乾杯」
「乾杯」
掲げ、中の液体を飲み干すのだ、幾度も──
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