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魔性の宝石~異形の作りしもの~

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「瑠璃の瞳?」
「はい、父が買ってきた宝石なのですが……どうも気味が悪くて、父もなんかおかしくなってきて……」

 その日、依頼者がやって来ていた。
 依頼者の女性は深刻そうな表情で内容を語る。

「……お父さんは今どうしてますか?」
「『瑠璃の瞳は誰にもわたさん』とか言って書斎にこもりっきりで食事も取らず」
「不味いですね、早く行きましょう」
「受けてくれるのですか?」
「不味い事態になっているのが目に見えてますから」

 そう言って依頼人に家までの案内を頼んだ。

 屋敷だった。
 相当な金持ちなのが分かった。

「書斎は」
「ここです、でも鍵がかかっていて」
「分かりました、できればここから離れてください、貴方にも被害が及ぶ場合があります」
「ですが……」
「依頼人を危険な目に遭わせる訳にはいかないのです、分かってください」
「はい……」

 依頼人が離れた場所へ行ったのを見ると零はニルスを見る。

「ニルス」
「分かっていますとも」

 ニルスはそう言って扉に手をかけた、ガチャリと音が鳴る。
 ニルスは扉を開け放った。

「これはこれは……」
「わだざん、これはわだざんぞ……‼」

 身なりの良い服を着た、年老いた男がいた。
 体は痩せ細り、しわだらけになっていた。
 そして抱えているのは巨大な瞳のような青い宝石。

「フエ、マヨイ!」
「あいよ」
「う!」

 フエが老人から宝石を奪い取る。

「が、がえ゛ぜ!」

 老人とは思えない迫力でフエから宝石を取り戻そうとするがその前にマヨイの触手が老人をすっぽりと包み込んだ。
 中でしばらく暴れているのが分かった。

「いやぁ、持ち主の寿命と正気を奪って巨大化する宝石ねぇ、厄介厄介」

 フエはそう言って、宝石を消滅させた。

「はい、マヨイ、奪われた寿命と正気」

 白く輝くものをマヨイにフエは渡すと、マヨイは頷き、触手にぶち込んだ。
 すると、暴れていたのが落ち着いたのか、大人しくなった。

「う!」

 マヨイの触手から老人──壮年の男性が出てくる。

「私は何があったんだ?」
「お父さん!」
「おお、まいじゃないか、どうしたんだい、泣きそうな顔をして?」

 鬼気迫る表情をしていた老人は、穏やかな壮年の男性になっていた。

「よかった、本当によかった……あの宝石を買ってからお父さんおかしくなったのよ?」
「あの宝石……ああ、あの宝石か……なぜだか妙に執着心がわいて……何故だろう、ところで宝石は?」
「アレは危険な物なのでこちらで処分させていただきました。あのままお持ちでしたら貴方はミイラになっていたことでしょう」
「そんな、まさか」
「ちなみに宝石を持っていた時の貴方です」

 レオンが動画に収めていたのか二人に見せる。
 二人は息をのんだ。

「ほ、宝石が巨大化して私がこんな老人に⁈」
「お父さん、今度からものを買うときは注意して」
「ところで、どなたからお買いになられたんですか?」
「○×町にできた宝石店でミスト宝石店という宝石店です、そこの宝石がどれも素晴らしいと褒めたら、店主がお客様にはこの貴重な『瑠璃の瞳』を……と」
「荒井、フエ、行ってこい」
「了解」
「ラジャー」

 荒井とフエはその場を後にした。

「被害者が他に出ていないといいのだが……」
「調査しましょうか?」

 爪を噛む零に、ニルスがそう言い出した。

「頼む」
「では」

 ニルスはいつものにやけ面でその場から立ち去った。




「やっぱり異形だったわ」

 げぷぅとフエはゲップをした。

「店主が異形で、普通の宝石に紛れて店の客に危険な宝石を売りさばいていたとはな」
「そして宝石がため込んだ寿命やら何やらを全部店主が吸収するって作戦だったと」
「用が済んだ宝石は自動で店主のところに戻ると」

 荒井が吐き捨てるように言うと、スマートフォンが鳴った。

「はい、もしもし」
『荒井か、ニルスが危険な宝石を所持している人物の居場所を全部突き止めた、フエと共に行って宝石を破壊してほしい、マヨイも連れて』
「了解」
「じゃ、行こっか」

 メールで地図に×印が着いた箇所を見て、荒井とフエはその場から姿を消した。




「つっかれたぁ」
「全くロクでもねぇことしやがるな」
「だが、被害が完全に出る前に食い止められた、感謝する」

 零がフエ達にそう言うと、フエはにこりと笑った。

「零さんの頼みだからねぇ」
「しかし、このような案件他にもあるかもしれんぞ」
「……ニルス、調べてきてくれ」
「仰せの通りに」

 ニルスは笑みを浮かべて立ち去った。

「彼奴が関わってたんなら締めればいいんだけど、無関係だろうしねー」
「というか、探偵事務所で働いてからほとんどの事件と無関係になっているからな」
「奴が関係したのは、奴と遭遇した最初の事件だけか……」
「今は私の命令もあるから、何かやらかすことはできないはずだよ」

 零の言葉にフエがそう返す。

「なら、いいんだが」

 零は疲れたように、椅子に腰をかけた──





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