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異形性の発露と我慢する異形の子~「花嫁」の独り言~

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 その日、異形の子等の調子が皆おかしかった。
 同時に異形性が発露したのだ。
 つまり発情期にも似ている。

「う゛ーくそ、みんなで蓮さんの所行くぞ!」

 顔を赤く染めたフエがそう言うと、苦しそうにしている異形の子等は頷いていた。
 一人を除いて。




「ふーすっきり……ちょ、慎次⁈ なんでアンタ我慢してるの⁈」

 ヤルことをやって、すっきりとしたフエが苦しそうにしている慎次に駆け寄る。

「異形性発露しまくってんじゃん! 早く零さんの所にいきな⁈」
「……っあの手のかかる奴に負担はかけられない」
「いいから! 此処で我慢して暴走したいの⁈」

 フエがそういうと慎次は目を見開いた。
 そして舌打ちして立ち上がり、その場から姿を消した。

「本当、大丈夫かな……様子見に行く……べきじゃないよね」




「ふぅ……」

 異形の子等の相手が終わり、シャワーを浴びて浴室の外に出ると、荒井がベッドに倒れ込んでいるのを零は見つけた。

「荒井?」

 裸のまま駆け寄ると、そのまま荒井に零はベッドに押し倒された。

「……なるほど、お前も異形性が発露している時か」

 納得したように言って荒井を見ると、目は血走り、呼吸は荒く捕食をこらえているようにすら見えた。

「いいぞ、好きにしろ」

──お前には世話になってるしな──

 荒井は零の唇に食らいつくように口づけをした──




「わりぃ……無理させた」
「げほっ……いつものことだから慣れてる」

 零とヤルことをやった慎次はぐったりとしている零の体を浴室で洗い流し、汚れを落とし、体を拭いて着替えさせて、ベッドに寝かせた。
 冷蔵庫からゼリー飲料を取り出して、それを飲ませる。

「ああ、喉にしみる……」
「本当に大丈夫か?」
「ああ、慣れてる」
「……」

 慎次がじとっと見つめると零は手を上げた。

「慣れてはいるが、今日の人数は疲れたよ」
「正直でいい」

 慎次の視線に本当のことを言った零の頭を慎次は撫でた。

「今日はゆっくり休んでいろ、俺とレオンとニルスで異形の方は対応する」
「荒井……」
「何だ?」
「……お前は行かないで側に居てくれ……」
「……分かった、レオンとニルスに異形の方を対応するように言う」
「ああ」

 慎次がそういうと、零は手を離した。
 慎次はそのまま、レオンとニルスに伝えるべく一階へ下りた。




「……孤児院の時にいた『兄』を思い出すなんて言ったら、荒井に失礼だな……」
 一人になった部屋で零はぽつりと呟いた──





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