91 / 238
トラブルメーカー~悪気がないのがタチが悪い!~
しおりを挟む『今日という今日は許さないー‼』
「ぎゃあああああ、ごめん、悪気は無かったんだってばー!」
『悪気がないなら何しても許されるのかああああああ‼』
巨大な蜘蛛の異形──蓮がフエを追いかけ回していた。
本来なら勝てるはずの相手なのだが、フエは全面的に自分が悪いと思っているのか逃げ回り続けていた。
「おいおい、またかよ。フエの奴、今度は蓮の何の地雷踏んだんだ?」
ロナクは呆れたように言ってコーラを流し込んだ。
『相当怒ってることから蓮が言われたくなかったことじゃないかしら、それもかなり』
「そうだよなー」
ロナの言葉にロナクは同意する。
まだ逃げ回るフエの壁になるように、康陽が蓮の前に立っていた。
『康陽さんどいて! フエ姉さんどつけない!』
「いいから、落ち着け。フエをかばう気はさらさらないが、見てみろ、ここら一帯凄いことになっているぞ」
『……』
広場の土はめくれ、荒れ放題になっていた。
蓮はそれを見て、異形の姿から人の姿に戻る。
ブラウスにスカートの格好で地面に降り立つ。
「でも、康陽さんも、康陽さんだよ! 何で聞いたの⁈」
「聞いたんじゃない聞かされたんだ、俺はスルーして本を読んでたが内容がぶっ飛んでたからつい聞いてしまったんだ」
「別に人間もぐむしゃした回数教えたわけじゃないしいいじゃない!」
康陽の後ろでフエが言うと、蓮はぎろりと睨んだ。
「そういう問題じゃない! 夫婦間でどうこうする内容を勝手に言って、止めて頂戴‼」
「でも、夫婦の営みが少し物足りないんでしょう?」
「フエー‼」
「やっべ逃げろ」
ダメ押しと言わんばかりの言葉を言ったフエに、蓮は怒髪天を衝いた。
それを見て、フエは逃げ出した。
「あの姉貴、零さんの所に逃げたな……迷惑かけられないの知ってて!」
「落ち着け、落ち着け」
ガルガルとなっている蓮を抱きしめ、康陽は宥めていた。
「番いとかだと夜の営みも色々あるんだなー」
「ロナク口全部縫い合わせられたくなかったら黙れ」
「ギャー! ねーちゃん蓮がこえぇ‼」
『今のは貴方が悪いわ』
蓮に余計なことを言ったロナクを、蓮は睨み付けた。
ロナクは悲鳴を上げて姉に抱きつく。
しかしロナはそんな弟を叱った。
「部屋に戻るぞ」
「ちょっと康陽さん!」
「聞かされた俺も黙っている訳にはいかんからな」
「な、な、なー⁈」
ずるずると康陽に引きずって行かれる蓮を二人は見送った。
そしてやって来たマヨイがぷーとふてくされる。
「ちゃんとなおしてほしいの」
使い魔の触手達を使って地面を綺麗に直した。
「あそぶのー」
「おままごと? おにぎょうあそび?」
「りょうほうしましょう? ね、おにいちゃん」
「ああ……」
精神が幼い異形の子等と、その子等と一緒に遊んでいる銀がやってきておままごとしながら人形遊びをしていた。
「……あそこは平和だねぇ」
『いいことでしょう? ちょっかい出したら駄目よ』
「わかってるよ、ねえちゃん」
仲よさげに遊ぶ四人を見て、ちょっかいを出さないようにロナはロナクに諭すようにいった。
「おい、フエ、今日は帰らないつもりか?」
荒井の料理を食べてながら、零はフエにたずねた。
するとフエは苦笑いして。
「今帰ったらざっくりやられちゃうから帰れない」
「柊はどうするんだ?」
「使い魔達に任せているから大丈夫」
「本当に大丈夫なんだか」
零は最期のハンバーグの一切れを頬張り、料理を食べ終えた。
「おーい、風呂入れ」
「分かった」
零は風呂へと向かった。
「おい、フエ」
「何慎次?」
「蓮が激怒するなんて俺はみたことねぇぞ、一体何した?」
「言ったら私が更に締められるから内緒ー!」
「全く……」
慎次は呆れたような息を吐き出した。
すると裸状態の零が風呂場から出て来たので慎次はバスタオル二枚を慌てて渡した。
零は腰に一枚巻くと、体を拭き、下着を履いて、寝間着に着替えた。
「何をそんなに慌てる」
「堂々と裸みせんな、こっちが恥ずかしい」
「む、そうかすまん」
着替え終わった後、そんな会話を慎次と零はして、零は歯磨きしに向かった。
歯磨きを終えると慎次が髪を乾かし、零はベッドで寝た。
「私も一緒に寝るー」
「疲れてるんだ、何もするなよ」
「知ってる知ってる、新興宗教の施設に言って異形ぶちのめして、そのまま警察に連絡して幹部しょっ引いて貰った後、別の異形案件で連れて行かれたんだよね」
「分かってるならいい」
フエがダブルベッドに入り、零がすやすや寝るころ、フエも目をつぶって眠った。
「全く、面倒な奴だ」
慎次はそう言ってエプロンを外し、コートを着て姿を消した──
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、pixivにも投稿中。
※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。
※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる