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変わりつつあること~「花嫁」の周辺で~

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「あー疲れた」

 フエは住処の自分の部屋に戻った。

「フエ……!」
「柊さん、ただいま」

 抱きついてきた柊を抱きしめ返した。

「最近ないがしろにされているようで、怖かったんだ……」
「ごめんねー仕事が立て込んでて、そっち優先にしないと善良な人が死にまくる事態に陥ったりする案件があったから」
「うん、分かってる。そういう事をしているのは」
「ありがとう」

 柊の言葉にフエは笑った。

「それはそれとして、だ」
「何?」
「『花嫁』の世話に手を焼いていたんじゃないか?」
「残念、慎次が全部やってくれてるから私は最低限の事しかしてないよー! 異形関係とか!」
「慎次?」

 明らかに男の名前であることにぴくりと柊が反応する。

「ああ、封印されてた異形の子でね、もう封印してるとかいってらんねー! って状態だから封印解除して『花嫁』さんの護衛を任せてるの」
「……大丈夫なのか、封印されていたと言うことは問題があったということだろう?」
「おやまぁ『花嫁』さんの心配をするとは珍しい」

 柊の言葉にフエは目を丸くする。

「『花嫁』に何かあったら君は傷つく……」
「柊さんに何かあってもよ、だからここから出るときは一緒でしょう?」
「ああ……」
「ごめんね、どちらかを選べなくて」
「……浮気者」

 柊は不服そうにぽつりと呟いた。
 それを聞いたフエは苦笑いを浮かべた。




「慎次──零さんはどうしてる?」

 深夜、住処に戻って来た慎次にフエは問いかける。

「眠った、連日の異形事件の所為でぐっすりだ」
「じゃあ私ちょっと様子みてくるね」
「起こすなよ」
「分かってるって」

 そう言って慎次に言うと、フエはその場から姿を消した。
 慎次は深いため息をつく。
 そして手を見て握りしめる。

「……暴走はしてねぇな」
『あら、慎次さん』
「ロナか……」
『深夜までお疲れ様です』
「お前こそ、深夜まで起きてるなんて珍しいな」

 慎次がそういうと、ロナから困ったような息を吐き出す音が聞こえた。

「……ロナクか」
『ええ、あの子また異形集団と悪人がいるからってジンさんと乗り込んで無断でやらかしたからフエ姉さんの助言もあって、ジンさんはしばらく外出禁止、ロナクは封印ということになったの』


『ねーちゃん、ごめなさーい! だから出してー!』


 遠くからロナクの悲痛な叫び声が聞こえている。

「ロナクの野郎、マシになったかと思えば変わらないな」
『ええ……慎次さんは変わりましたね』
「なに?」
『こう雰囲気が柔らかくなったように思えるんです、これも「花嫁」のおかげですかね?』
「さぁな、というか彼奴は『花嫁』の自覚があるのか? 危ない事にばかり首を突っ込んで……」
『自覚があるから突っ込むらしいですよ、フエ姉さんいわく』
「厄介な奴だ……」
『ふふ、そう言ってるわりには穏やかな表情ですよ、慎次さん』
「……ふん、言ってろ」

 慎次はそう言って自分の部屋に戻った。
 用意していた食事を温めて、口にし、そしてシャワーを浴びて、体を拭き髪を乾かし、寝間着に着替えてベッドに横になる。

「……本当、変わった『花嫁』だよ、お前は……」

 そう言って眠りに落ちた──





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