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ロナクは不満に思う~「花嫁」の護衛について~
しおりを挟む「慎次の奴、ずりぃ」
『何がずるいの?』
手にある口でストローでアイスティーを飲んでいるロナが、不服そうな顔をしているロナクにたずねる。
「だって彼奴暴走したことあるのに『花嫁』の警護させてもらってるんだぜ」
『大丈夫よ「花嫁」が居れば暴走はしないわ』
「でもよぉ……」
何か不満げなロナクにロナが言った。
『どうして自分じゃないんだって思ってるでしょう?』
「ねーちゃんなんで分かんの⁈」
『わかるわよ、それくらい』
驚くロナクにロナはくすくすと笑い声を上げた。
「どうして俺は駄目なんだろう」
『貴方あのニルスと喧嘩しないで、トラブルも起こさないって約束できる?』
「う」
『できないでしょう?』
「や、やってみたら案外できるかもしれねーじゃん」
「できねーから除外してるんだってわかんないの?」
天井からぶらんとフエが頭を下にしてぶら下がって現れた。
「げぇ! フエ!」
「げぇ、じゃないわよ。失礼な」
フエはくるっと回転し、床に着地する。
「ロナク、アンタ以前ニルスと会った時、即座にバトルしたでしょう」
「だだって、ねーちゃんの事悪く言うから……」
「彼奴はそう言う奴なの、私達や人を煽るのよ、人に関しては破滅させようとする」
フエは生真面目な表情で続けた。
「その上殺しても中々死なないし、以前現主人の私が殺したのに一ヶ月で復活しやがったのよ? あの糞親父ろくでもないもの作りやがって」
フエは忌々しげに言う。
「それに、異形としての力の質だとニルスの方がアンタより若干だけど上よ」
「れ、レオンはどうなんだよ」
「レオンは特質性が高いからニルスも手を出したがらない、だから口だけ。そういう理由でレオンを零さんの護衛に真っ先に配置した」
「……」
フエの言葉にロナクは不満そうだった。
『ロナク、フエ姉さんの言う通りよ、貴方には零さんの護衛は無理だわ』
「えー‼」
「ていうかさ、ロナク。アンタが居なくなったらジンが騒ぐよ。悪意のある人間の肉を欲する奴の──いや、エルの食事の為の肉の補充の手伝い、誰がすんの」
「ぐむ……」
フエに指摘されてロナクは黙り込んだ。
そう、ロナクはジンという男に頼られている。
エルの執事のような事をやっている人間に頼られている。
エルの番いかどうかも分からない人間に頼られている。
全てはエルの貯めと言ってのけるそのジンという男は、エルの食料を常に求めている。
悪人の肉を。
エルは「悪人」の肉を喰らうことから「悪食のエル」と呼ばれていた。
今もそう呼ばれている。
その肉を補充する為に、ジンはロナクに頼み込むのだ。
「アンタを必要としてる人がいるんだから、そっちでやりなさい」
『そうよ』
「……分かったよ」
「ならいい」
『分かってくれてよかったわ』
安堵した表情の二人にロナクは聞いた。
「なぁ、もし仮に慎次の能力が暴走したらどうするんだ?」
「それは──」
「相手によるかな?」
と、フエは答えに濁した──
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