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己を責める「花嫁」~異形の子等の限界~
しおりを挟む「腰が痛い」
「自業自得です」
「う!」
ベッドに横になりながら零は疲れた声で言った。
それにフエとマヨイが言い返す。
「ペンダント外すなんて自殺行為したんだからあのお説教は当然です」
「だが……」
「女の子達の件はどうしようも無かった、私達異形の子達だって全部を見ている訳じゃない」
「お前の『夢』なのにか?」
「私の『夢』だからこそよ」
フエは言い切った。
「『夢』だからどんな『夢』になるのか分からない、どんな異形が現れるのか分からない、だから『夢』なのよ」
「……あの異形が居なかったら彼女らは……」
「はいはい、確かに異形の子を身ごもった、私達異形の子等とは違う異形の子を。異形を身ごもった、だからマヨイの手で異形を殺して記憶も消して無かったことにした」
「う」
「それが精一杯だった、それが限度だった」
「……万能ではないんだな」
零は疲れたように言った。
「どこで、いつ、なにがおこるか全部把握できてるなら私は対応できるわよ。でもそれができないから万能じゃないの」
「今回の事件を持ち込んできたのはニルスだったな……」
「あの野郎、私と違って全部把握してるのに教えないから腹立つのよ、私が主人だっつーのに、あの異形」
フエは忌々しげに吐き捨てた。
「ニルスを一度締めるか……」
「それはやった」
「やったのか?」
「そしたらなんて言ったと思う?」
「?」
フエは忌々しそうな顔をした。
「『彼女等は、自分の体を売っていた、だから目をつけられたのだよ』って体売らなきゃ生きてけない少女達に責任転嫁しやがった!」
「……」
「少女達はみんな孤児院に保護して大学出るまでそういうのもうしなくていいってなったら泣いてたよ。もっと早くに此処に来たかったって」
「だろうな……」
良い家庭環境にある子ほど異形は目をつけない。
劣悪な環境にある子ほど異形は目をつける。
居なくなっても誰も気にしないからだ。
だから劣悪な地域で異形達は我が物顔をしたがるが──
異形の子等がそうはさせない。
だから、異形達は身を潜めて、機会をうかがっているのだ。
「劣悪な環境、自分以外が贔屓される環境、良くない環境があるか切り、異形達は人間につけいっていくだろう」
「……」
零は疲れた声のまま、嘆くように言った。
フエは黙って聞いている。
「まさに人間の業だな」
「そんなことないよ!」
「いや、人間は罪深い存在だ、誰も彼もが無意識に罪を犯している」
「……」
「私だってそうだ、彼女達を守ることができたかもしれないのにできなかった。これを罪と言わずなんといえばいい」
「罪なんかじゃないよ」
フエは泣きそうな声で言う。
「確かに人間は罪深いかもしれない、でも零さんは自分の身を削ってまで人々を助けようとしている。だからこれ以上無理しないで私達を頼って」
「頼っているさ」
「もっと、もっと頼って!」
「う!」
「……」
フエとマヨイの言葉に零は無言になった。
「ニルスだって、使いようによっては上手く使えるはず、だから零さんは私達を使いこなして、頼って」
「……分かった」
零はそう言って目を閉じた。
しばらくすると静かな寝息が聞こえ始めた。
「零さん、ごめんね。そんなに自分を責めると思わなかったの……」
「うん、零さん、じぶんのこと、せめすぎ」
「だから、これ以上責めないで……」
そう言ってフエは零の額にキスをした──
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