上 下
83 / 238

異形の「花嫁」~花嫁の意味~

しおりを挟む



「胸くそ悪い事件になりかけたな」

 零は忌々しげに棒付きキャンディをかじった。

「ええ、少女らをさらって異形に犯させて世界をめちゃくちゃにしようとするなんて」
「マヨイが居なかったら少女らは全員死亡していたしな」

 キャンディの部分が無くなったのか、噛まれた棒の部分を捨てて新しい棒付きキャンディをかじりだした。

「さらにフエも居なかったら、あの子等は心に傷を負ったままだった、記憶消し能力が強すぎるのは救いだな」
「何かをきっかけで思い出すこともありませんしね、フエの記憶消しの場合」
「その分、自分が何もできなかった事が歯がゆい」

 零は再度忌々しげにそう呟いた。

「所長、貴方は自分が成すべき事をなしたまでです」
「果たしてそうかな?」
「何が言いたいニルス」
「所長殿は、この事件が起きる前に自分が『花嫁』であることを連中に明らかにすれば、少女達の犠牲は無かったとお思いだ、それは事実になりうる」

 ニルスがにやにやと笑って言うと、レオンは怒鳴った。

「何処がだ! 『花嫁』でもあの異形の子を産んだら、所長にも負担がかかる! それに他の異形達もこぞって所長を狙うだろう!」
「それだよ、そうすれば異形同士が同士討ちをして今回の事件が起きなかった可能性がある、そうでしょう『花嫁』殿」
「……確かにそうだ」
「所長!」

 ニルスの言葉に、零は重い表情になった。

「私が『花嫁』である事を隠すのを止めれば、私を狙い他の子を狙う事は異形共は無くなるだろう」

 零はそう言って赤い石ついたのペンダントを握る。

「駄目です、所長」
「……」
「それこそ、奴らの思うつぼです」
「だが……」
「ニルス、貴様も余計な事を言うな。所長に何かあったらフエがお前を直々に屠るだろう」
「おお、怖い怖い」

 レオンはニルスを睨み付けていった。

「所長、自分の体を大切にしてください、それが私達の望みです」
「……分かった」

 零はどこかくらい表情で頷いた。




 その夜、零はペンダントを外して眠っていた。
 ずるずると、無数の触手と目玉を持つ異形が這いずってベッドで寝ている零に近づいていた。

「はい、其処まで」

 フエが現れ、触手の前に立ち、黒い肉壁を作り、それで一口で異形を捕食する。

「全くもう」

 フエは寝ている零にペンダントをつけた。

 当たりの空気が晴れる。

「これで異形はこれないわね、結界張り直したし。レオンもう少し結界貼るの上手だといいんだけど」

 フエが盛大にため息をつく。

「ん……」
「……寝てるな良し」

 フエはそう言って零の額にキスをした。

「明日起きたらお説教だからね、覚悟しておいてよ零さん」

 そう言ってフエは居なくなった。
 翌日、フエから肉体でも説教をくらい、腰を痛めて動けなくなり安静にさせられ、フエとマヨイに見張られる零がいた──





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、pixivにも投稿中。 ※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。 ※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

処理中です...