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目覚め~目覚めの発露~
しおりを挟む「漸く本職に戻れたよ」
「お早う、フエ」
「お早う、零さん。夜だけど」
フエは少し欠伸をして言った。
「これで私もお役目一応だがおしまいか」
紅は青い煙をくゆらせながら言った。
「……しかし、零の世話は骨が折れるな」
「でしょう、生活破綻してるから」
「本当だな、朝は栄養ゼリーで済ませようとしたり、昼と夜も抜いて深夜に大食いしようとしたり、適宜捕まえて食事をさせるのには骨が折れた」
「その間、仕事もして、でしょう?」
「ああ、小説家の仕事もしているから堪える」
紅は首をバキバキとならしてから、零をジト目で見た。
零はすっとぼけた顔をしていた。
「いや、すまん。異形退治の方に集中したくて」
「異形退治で自分の体おろそかにしたら意味ないでしょうが! 体壊したらそれこそ異形の思うつぼよ! 『花嫁』だって自覚ある⁈」
「自覚は……ある」
「なんか信用できないなぁ……」
零の言葉濁した発言に、フエは額を抑える。
「零さん、そんなだからレオンは心配するしニルスは隙を突いて何かしようとするんだよ、分かる?」
「まぁ、分かる」
「分かるならもう少ししっかりして!」
「……善処する」
渋い顔で零が言うと、フエは頭をかき乱した。
「もー!」
「そろそろ私も『花嫁』の世話は疲れた、休む」
「わかった、お疲れー」
紅が居なくなり、青い煙が消える。
「さて、零さん、いつものお願い」
「目覚めてすぐは異形性が発露しまくってるんだろう」
「昨晩はなんとか柊さんにごまかしてたけど、もう限界近いからお願い……」
「分かった」
零は衣服を脱ぎ、裸になって、ベッドに座った。
そしてそんな零をフエは押し倒した。
しばらくして、零の濁った声が部屋に響いた。
「あーすっきりした」
住処に戻って来たフエは、体を伸ばしながら通路を歩いていた。
「全く我ながら難儀な体質というか性質と言うか」
「フエ……」
「どうわ⁈」
其処には、柊がいた。
酷く陰鬱な顔をしている。
「やはり私では駄目なのか?」
「駄目、傷つけちゃうから」
「──『花嫁』は傷つかないのか?」
「傷つかないけどめっちゃ疲れるらしい」
「……」
無言になる柊にフエは言う。
「だから、傷つけたくない私は『花嫁』さんにお願いする」
「どうしても?」
「そう、絶対お願いする」
「……浮気者」
「ごめんねー……こんな番いで」
「ずるい……卑怯だ……」
柊はフエに抱きつき、すがりつくように言った。
「大切だから触れない、それが酷く卑怯でずるい……」
「軽蔑した?」
フエが尋ねると柊は首を振った。
「発露は終わったんだろう、なら私を抱いてくれ」
「うん、いいよ。今なら大丈夫」
フエがそう言うと柊は蕩けた笑みを浮かべた──
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