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フエが眠る日々~居ない弊害~
しおりを挟む「うわ、なんかべとべとするのが上からしたたってきた」
「異形だな、今喰った、不味い」
「喰うんか」
「喰うぞ?」
フエが深い眠りに落ちた日からこのような紅と零のやりとりが続いていた。
結界などを破って「花嫁」である零を狙ってくる異形が増えたからである。
普段はフエが貼っている結界のため、眠っている間はないものに等しく、零は無防備に近い状態だった。
紅も結界に似たものは張れるが、煙管ですっている物体を吐き出した時の青い煙が結界代わりなので、効果がの持続力がない。
なので、お香の形をした物を用意して、夜はそれで結界モドキのものを張っている。
「フエは万能だったんだな」
「まぁ確かに」
「性格を除けば最良なんだが、番いに浮気者言われてるんだろう?」
「言われてるな、だが仕方の無いことだ、異形性の発露は『発情期』はどうしようもできん」
「分かっている、が男の趣味がな……」
「それは言ってやるな、無自覚でもなく、ダメンズが庇護欲をそそるのだろう」
「そのダメンズ庇護してるマヨイも相当だな」
「う?」
「お前に依存しっぱなしの隼斗の事だ、まぁアレは精神病んでるからな」
「男の趣味がいいのは蓮だけか……」
「よんだー……?」
げっそりした表情の蓮が現れた。
マヨイは驚き、零は目を丸くし、紅だけは「あーやっぱり」という顔をしていた。
マヨイは一端潜るように居なくなり、そしてスムージーを持って蓮に渡す。
蓮は勢いよく飲み干した。
「あー……少しだけ疲れとれた」
「どうしたんだ蓮?」
「どうしたもこうしたもないよ本当!」
蓮は嘆くように言った。
「フエ姉さんが眠ってから異形が増加したから事件も増加! 休み無しで毎日異形を退治する日々! 地獄だ!」
「Oh……」
蓮はがるがるとなりながら言う。
それに零はちょっと引いた。
「仕方ないだろう、フエだって、寝たくて寝てるわけじゃないんだから」
「ロナクはこれ幸いと遊びまくってるし、彼奴の頭と股間潰したいー!」
「潰すなら頭だけにしろ、あと休憩は終わりだろう、頑張れ」
「うわーん! 紅姉さんの鬼ー!」
「異形の子なんだが」
「そういうボケはいらないー!」
半泣きになりながら蓮は姿を消した。
「大丈夫か?」
「愚痴れるならまだ大丈夫だろう」
「うー……」
酷使されている蓮の事を心配する零とマヨイ。
一方紅はまだ大丈夫だと思っている。
そしてフエが眠りに落ちてから半年が経過したころ──
「ふぁあ……おはよう」
「お早う、じゃなーい!」
「げふぅ!」
「ふ、フエ!」
「すまんな、柊。フエが眠っている間酷使されてキレてるんだ少し発散させてやってくれ」
寝起きのフエにドロップキックを食らわした蓮。
続けて関節技を決めようとする蓮を止めようとする柊を拘束して、康陽は言う。
康陽も少しやつれていた。
「ギブギブギブ‼」
「この半年間、私は寝る間も無く働かされたんだぞ、どうしてくれる!」
「いや、ごめん、マジごめん! だから間接技ストップ!」
「その上ロナクは遊びやがるしもういやだ!」
「え、ロナク遊んでたの? よし、締めにいこう」
フエがそう言うと蓮は漸く間接技をかけるのを止めて、二人は康陽達に見えないようロナクを取り囲む。
「ふ、フエ……」
「今は行かない方がいいと思うぞ、下手すれば玉ひゅんレベルのものを見る羽目になる」
「……わかった」
「ぎゃあああああああ‼‼ ギエエエエエエエエエエエ‼‼」
「……行かなくて正解だったろう?」
「……うん」
ロナクの悲鳴がここまで届くということはそれほど恐ろしい事が行われているという事だと柊も理解できたらしく、大人しく頷いた。
そんな柊の頭をぽんと、康陽は撫でてやった──
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