79 / 238
眠り姫~「花嫁」の護衛の紅~
しおりを挟む「眠い……」
フエが眠そうな顔で住処を歩き回っていた。
「何を無理せず起きている」
「紅姉さん……」
「無理に起きていると寝ている時間がより長くなる、だから眠れ」
「でも……」
中々寝ようとしないフエに紅は言う。
「柊か?」
「うん……私が寝ている間、大丈夫かなって……」
「寝てる間は大丈夫だろう、零の所に行ってる訳じゃ無いんだし……」
「いやそれが……今回は零さんの所で寝ようかなって」
「は?」
フエの言葉に、素っ頓狂な声を出す紅。
「どうしてだ?」
「寝ている間、零さんが事務所でも異形に襲われるらしいから、私が寝てれば来ないかなーって……」
「……仕方ない、私が行こう」
「え?」
「そんな事したら柊がすねるどころではないのはよく分かってるだろう? だから私が零の護衛に行く」
「ごめん……じゃあ、部屋で寝るね……」
立ち去るフエを見てから、紅はその場から姿を消した。
「──という訳だから、しばらく居候させてもらう」
探偵事務所の二階のソファに座って寝起きの零に紅は説明した。
「構わんが食事は大丈夫なのか?」
「適宜マヨイに持ってきて貰うか、宇宙空間の小惑星を喰らうさ」
「そうか……」
零は納得したような声を出す。
そして顔を上げる。
「と言うことは、異形が活発化するということか」
「そうだな、フエの異形性の一つだ」
「厄介な異形性だな……」
「まぁ、起きるまでの辛抱だ、それまでは我慢してくれ、フエ以外で異形と戦える連中は総出で対応しているから」
「特に蓮が大変そうだな……」
「その通りだ『この期間嫌いー!』とわめいていたからな」
「……だろうな」
「と言うわけで、しばし行動を共にするのを許して欲しい」
「分かった」
零はそう言って身なりを整え始めた。
紅はその間に部屋中に青い煙を蔓延させた。
「煙臭くないが、それでもあまり体によさそうではないな」
「安心しろ、人間には無害だ、異形には有害だが」
「そうか」
「ところで朝食はそれだけか?」
スムージー一本の食事を指指し、紅は眉をひそめる。
「そうだが……」
「駄目だ、駄目だ、きちんと食べろ、食事をおろそかにすると動くべきとき動けなくなるぞ」
と言って調理を開始する。
調理を終え、料理が並ぶ。
零に取って大量の料理だった。
「食べ切れんぞ?」
「残ったら私が食べる」
「……分かった」
「食費は私持ちだ心配するな、マヨイからの配達もあるしな」
「そうか……」
零はエンゲル係数を心配しなくて良かったと内心ほっとした。
これから、フエが目覚めるまで紅と零、そしてレオンにニルスの奇妙な生活が始まった──
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

異端の紅赤マギ
みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】
---------------------------------------------
その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。
いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。
それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。
「ここは異世界だ!!」
退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。
「冒険者なんて職業は存在しない!?」
「俺には魔力が無い!?」
これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・
---------------------------------------------------------------------------
「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。
また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・
★次章執筆大幅に遅れています。
★なんやかんやありまして...
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
【完結】過保護な竜王による未来の魔王の育て方
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
魔族の幼子ルンは、突然両親と引き離されてしまった。掴まった先で暴行され、殺されかけたところを救われる。圧倒的な強さを持つが、見た目の恐ろしい竜王は保護した子の両親を探す。その先にある不幸な現実を受け入れ、幼子は竜王の養子となった。が、子育て経験のない竜王は混乱しまくり。日常が騒動続きで、配下を含めて大騒ぎが始まる。幼子は魔族としか分からなかったが、実は将来の魔王で?!
異種族同士の親子が紡ぐ絆の物語――ハッピーエンド確定。
#日常系、ほのぼの、ハッピーエンド
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/08/13……完結
2024/07/02……エブリスタ、ファンタジー1位
2024/07/02……アルファポリス、女性向けHOT 63位
2024/07/01……連載開始
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

ダンジョンの戦闘配信? いやいや魔獣達のための癒しスローライフ配信です!!
ありぽん
ファンタジー
はぁ、一体この能力は何なんだ。
こんな役に立たないんじゃ、そりゃあパーティーから追放されるよな。
ん? 何だお前、自ら寄ってくるなんて、変わった魔獣だな。
って、おいお前! ずいぶん疲れてるじゃないか!?
だけど俺の能力じゃ……。
え? 何だ!? まさか!?
そうか、俺のこの力はそういうことだったのか。これなら!!
ダンジョンでは戦闘の配信ばかり。別に悪いことじゃいけけれど、だけど戦闘後の魔獣達は?
魔獣達だって人同様疲れるんだ。
だから俺は、授かったこの力を使って戦闘後の魔獣達を。いやいや共に暮らしている魔獣達が、まったりゆっくり暮らせるように、魔獣専用もふもふスローライフ配信を始めよう!!

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる