クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

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眠り姫~「花嫁」の護衛の紅~

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「眠い……」

 フエが眠そうな顔で住処を歩き回っていた。

「何を無理せず起きている」
「紅姉さん……」
「無理に起きていると寝ている時間がより長くなる、だから眠れ」
「でも……」

 中々寝ようとしないフエに紅は言う。

「柊か?」
「うん……私が寝ている間、大丈夫かなって……」
「寝てる間は大丈夫だろう、零の所に行ってる訳じゃ無いんだし……」
「いやそれが……今回は零さんの所で寝ようかなって」
「は?」

 フエの言葉に、素っ頓狂な声を出す紅。

「どうしてだ?」
「寝ている間、零さんが事務所でも異形に襲われるらしいから、私が寝てれば来ないかなーって……」
「……仕方ない、私が行こう」
「え?」
「そんな事したら柊がすねるどころではないのはよく分かってるだろう? だから私が零の護衛に行く」
「ごめん……じゃあ、部屋で寝るね……」

 立ち去るフエを見てから、紅はその場から姿を消した。




「──という訳だから、しばらく居候させてもらう」

 探偵事務所の二階のソファに座って寝起きの零に紅は説明した。

「構わんが食事は大丈夫なのか?」
「適宜マヨイに持ってきて貰うか、宇宙空間の小惑星を喰らうさ」
「そうか……」

 零は納得したような声を出す。
 そして顔を上げる。

「と言うことは、異形が活発化するということか」
「そうだな、フエの異形性の一つだ」
「厄介な異形性だな……」
「まぁ、起きるまでの辛抱だ、それまでは我慢してくれ、フエ以外で異形と戦える連中は総出で対応しているから」
「特に蓮が大変そうだな……」
「その通りだ『この期間嫌いー!』とわめいていたからな」
「……だろうな」
「と言うわけで、しばし行動を共にするのを許して欲しい」
「分かった」

 零はそう言って身なりを整え始めた。

 紅はその間に部屋中に青い煙を蔓延させた。
「煙臭くないが、それでもあまり体によさそうではないな」
「安心しろ、人間には無害だ、異形には有害だが」
「そうか」
「ところで朝食はそれだけか?」

 スムージー一本の食事を指指し、紅は眉をひそめる。

「そうだが……」
「駄目だ、駄目だ、きちんと食べろ、食事をおろそかにすると動くべきとき動けなくなるぞ」

 と言って調理を開始する。
 調理を終え、料理が並ぶ。

 零に取って大量の料理だった。

「食べ切れんぞ?」
「残ったら私が食べる」
「……分かった」
「食費は私持ちだ心配するな、マヨイからの配達もあるしな」
「そうか……」

 零はエンゲル係数を心配しなくて良かったと内心ほっとした。

 これから、フエが目覚めるまで紅と零、そしてレオンにニルスの奇妙な生活が始まった──





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