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ただいま脱皮中につき~見られたくないんです!~

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「康陽さんの馬鹿あああああ‼」

 珍しく蓮が康陽への言葉を泣き叫びながら逃亡していた。
 康陽は追うが異形の子と人間では話にならない。

「どうしたのだ」

 紅がぜぇぜぇと呼吸をする康陽に話しかける。
 康陽は息をなんとか整え話し始めた。

「朝起きたら蓮がいなかったんだ」
「ほう」
「使い魔に聞いても知らないとしか言わず途方に暮れてた所ロナクがにやつきながら『蓮ならマヨイの畑にいるぜ』と言い出したんだ」
「……」

 紅はオチが読めた顔をした。

「なので行ってみたらそしたら蓮が異形の姿で脱皮してた」
「ロナクが戦犯で、蓮がぽかしたな。とりあえずお前は部屋で待っていろ」
「わかった、すまない」

 康陽が部屋に戻るのを確認すると紅は蓮がいるであろう会議室へと向かった。

「ギブギブギブー‼」
『ロナク、どうしてそんなことをしたの』

 そこにはフエにキャラメルクラッチをかけられているロナクと、それを見て泣いている雰囲気を出すロナがいた。
 フエは満面の笑みでしかし青筋を立てていた。
 部屋の片隅では蓮がめそめそと泣いており、マヨイが頭を撫でていた。
 何となくカオスな空間だなと紅は思いつつもそれには一切触れず、フエの折檻を受けているロナクにまず近づいた。

「ロナク、お前蓮が蜘蛛の姿で脱皮してるのは分かってただろう、それを康陽に見せたくないのも」
「いででででで!」
「フエ、一端力を弱めてくれ。これでは話ができん」
「ラジャー」

 フエが手を離すとロナクはフエに乗っかられたまましゃべり出した。

「だってよぉ、あの二人無自覚にのろけるんだぜ、みててなんかこう癪に障るからちょっとアレしてやろうかと」
「よし、断罪だ、フエやれ」
「オッケー!」
「ギャー!」
『もう、ロナク……本当に貴方は……』
「大好きな姉を泣かせてるぞお前」

 しくしくと顔がないが泣いているロナを指摘して紅が言う。

「ごめーん、姉ちゃん!」
『謝る相手が違うでしょう!』

 今度はロナがロナクを叱った。

「と言うわけでこのまま続行ー♩」
「いででででで!」

 再度キャラメルクラッチが続けられた。

「さて、次は……」

 部屋の隅でめそめそ泣いている蓮の所へ行く。

「蓮おねーちゃん、泣かないで」
「蓮、康陽も悪意があって見たわけではないのは分かるだろう、ロナクに畑にいるから様子を見に行ったらお前が脱皮してるのを見ただけだ」
「ううう……いつもなら寝ている間に終わるのに今日手間取ったのが敗因だぁ……うわあああん!」
「過信しすぎだな、もしもの事を考えて今後脱皮する際は必ず書き置きで『脱皮している最中なので探さないで下さい』なり何か書けばいいだろう」

 紅が呆れて言うと、蓮が顔をあげた。

「うん、そうする……」

 漸く涙を拭った蓮を見て、紅は安堵の息を吐いた。

「で、戦犯のロナクはどうする?」

 紅はロナクを指指して言った。

「私が締めたいけど、フエ姉さんが当分締めてるからいいや」
「そうか」
「それより、康陽さんに言わなきゃ、次は見ないようにしてって」
「それも大事だな」

 紅は会議室を出て行く蓮を見送った。




「康陽さん!」
「蓮、戻って来てくれたか、今日一日は戻らないかと思ったぞ」

 蓮が部屋に戻ってくると康陽が出迎えた。
 二人は部屋の中に入る。

「──と言う訳で、今後書き置き残しておくから脱皮時は探さないで下さい。場所も書くので、終わったらちゃんと戻ってくるから」
「わかった」
「後、ロナクの言うことだけは聞かないで下さい、彼奴愉快犯だから」
「承知した」

 蓮の言葉に康陽は頷いた。

「聞くなら紅姉さんかフエ姉さんに聞いて、もしくはロナに」
「分かった……マヨイ達は?」
「マヨイ達もいいけど、あの子連れてこようとするからあんまり聞かないで」
「わかった」

 そこまで話すと、康陽はふぅと息を吐いた。

「やれやれ、見た時は『あ、脱皮か』と思ったら猛スピードで脱皮し終えて『康陽さんの馬鹿ああああ!』と叫んで逃げられるとは思わなかったぞ」
「う」
「まぁ、お前が脱皮見られるの嫌がってるのは知ってたからな俺のミスだ」
「康陽さんのミスじゃないよ、私がちゃんと伝えなかったのが悪いし、あとロナクも脱皮してるっての隠してたのが悪い」
「ところでロナクは?」
「フエ姉さんに締められている」
「……俺がここに来てまだまだ長くないが、ロナクの奴フエに締められすぎじゃないか?」
「あいつ悪意の異形の子だから悪知恵ばっか働くのよ……」
「そうか……」
「双子のロナは受け継いでないのが凄いわ、本当」
「彼女か、確かにな。さて、それはともかく」
「?」

 康陽は立ち上がり、キッチンから料理を運び並べた。

「朝食、まだだろう? 一緒に食べよう」
「──うん!」

 康陽の言葉に蓮は満面の笑みを浮かべた──





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