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「花嫁」について~依存と理解~
しおりを挟む「フエの浮気者ぉ!」
「だから違うってば!」
「じゃあどっちが大事なんだ!」
「両方!」
「やっぱり浮気者ぉ!」
「何だアレは」
会議室で康陽は紅茶を飲みながら二人に白い目を向けている蓮に話しかける。
「仕事と恋人どっちが大事だって言ってるようなもんだよアレ」
「俺には二股を責められてる旦那に見えるがな」
「それも正解」
蓮はふぅと息を吐き出す。
「康陽さんには『花嫁』の話はしたでしょう」
「ああ、異形とその血を引く物が本能で求める存在、だったな」
「うん、異形は花嫁を自分の血を引く物の母体として、私達はそれから守る為に『花嫁』に接触して守ってる」
「だけで終われば問題ないが」
「そう、私達は異形性を発露することがある、正しくないけど『発情期』と呼び、その異形性を発露させる時は花嫁でないといけない」
「そうじゃなかったら?」
「見境無く食い尽くしたり、壊しまくったり、殺しまくったり、あまり良いことは起きないわね、あのマヨイでも、暴れるから」
「あのマヨイでもか」
康陽が驚いたように聞くと、蓮は頷いた。
「人畜無害そうな子達でも暴れたりするのよ、だから『花嫁』は欠かせない」
蓮はそう言って紅茶を飲み干した。
飲み干したカップをテーブルの上に置く。
「だから、番いと花嫁どっちが大事と聞かれても、私達は両方としか答えられない。どちらも失ってはならないものだから」
「『花嫁』が生まれる周期は?」
「『花嫁』が死んだらすぐよ」
蓮はそう言ってふぅと息を吐き出す。
「だから何百人もの『花嫁』が死ぬのを見送ってきた」
「止められないのか」
康陽の問いかけに首を振った。
「止められない、私達は花嫁の意思には逆らえない」
「異形はそうじゃないけどな」
紅が話題に入り込んでいた。
「死ぬのは怖いけど生きるのはもっと怖い、異形が怖いと泣く彼らを守れなかった私達ができる事は『花嫁』を殺すことだ」
「『花嫁』を、殺す?」
「そう、自死行為は全て異形が邪魔をする、だから私達が殺すんだ、苦しくないように」
「……」
「今は何事もない零も、そうなるのでは無いのかが私達の不安だ」
紅はそう言った。
康陽はしばし考えて首を振った。
「ないと思うぞ」
「どうして言い切れる?」
「彼奴は頭のネジがどっかおかしい、不老不死に近い感じだったらしいと聞いたら余計必死になって異形探しに乗り出すぞ」
「……確かにそれはあり得る」
「彼奴は異形の所為で人生をめちゃくちゃにされてきた人を多く見てきた、だから異形を一匹でも殺すためになら石にかぶりついてでも生き抜こうとするだろう」
「……康陽さん、零さんの事分かってるように言うね」
「こう見えて元同僚でね、ただ俺は異形案件を知りすぐ転職して対異形機関のでかい場所に入ったからな」
「そこでの任務で蓮に出会って、あっさり止めたがな」
「その通り」
康陽がなんでもないように言うと、蓮は顔を紅くした。
「こんな可愛い異形の子に惚れない訳がない、という訳で番いじゃなかったころの俺の話はストップだ」
「あ、ずるーい! もっと聞きたい」
「また今度な」
蓮と康陽のやりとりと、未だ続くフエと柊のやりとりを交互に見ながら紅はため息をついた。
「フエの番いももう少し理解があってくれればと思わないでもないが、無理だろう。あれは依存だ。全てを理解した上で選んだ康陽とは全くの別物だ」
と、諦めのため息をついた。
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