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『花嫁』を労る~迷惑をかけてるから~

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「……」
 ベッドに横になりながら零は新聞を見ていた。
「零さん、新聞を見ているのはいいですが、休んで下さい。異形の子等の相手をしていたのでしょう?」
「レオン、これを見ろ」
 レオンを呼びつけ、零は新聞を見た。
「何々……『新興宗教が誘拐事件を起こしていた! 教祖は変死! 信徒は行方不明と変死が多数! 生存者は誘拐された人達だけ!』……間違いなくフエさんのことですよね」
「派手にやるなと言ったのに……」
 零は疲れたように額に手を当てた。
「ま、まぁなるようにしかならなかったのでしょう? フエさん達が買ってきた葛アイスというものを食べてみますか?」
「ああ、それか、食べてみたいな」
「ラムネに桃に、オレンジ……」
「ラムネがいい」
「分かりました」
 空色の棒アイスらしき、アイスを持っていき袋から取り出して零に渡した。
「ふむ、しゃりしゃりもちもちで美味いな」
「それは良かった」
「お前も食べるか?」
「いえ、大丈夫です」
「そうか……」
 零は少し残念そうにいいながら、アイスを口にした。
 そして残った棒をゴミ箱に捨てた。

「零ちゃん大丈夫ー?」

 ぶらんと天井からぶら下がるようにフエが現れた。
「フエか、また派手にやらかしてくれたな」
「だって、エルの料理の分も確保しないといけなかったし──」
「エルか、彼女は『悪食』だからな」
「そうそう」
 そう言って、くるっと回転して着地する。
 そのまま零に近づき、ベッドに腰をかける。
「体の調子はどう?」
「良くないな、あの後ロナクとロナも来たからな……特にロナク」
「ロナク……彼奴め」
 そう言ってフエは方向を変えて、寝間着のボタンに手をかける。
 はだけさせると、其処には噛み傷、切り傷が大量にあった。
「マヨイ!」
「う!」
 ずるんと天井からマヨイが落ちてきた。
「零さん、パジャマ脱いで」
「分かった」
 零はため息をつくと、寝間着を脱いだ。
 すると、筒状の触手のようなマヨイの使い魔が零を飲み込む。
 しばらく、もごもごと動いて開放されると、零の体にあった傷はすっかり治っていた、跡形もなく。
「すまないな」
「いいからシャワーか、お風呂!」
「ああ」
 零はそう言ってシャワーを浴びに言った。

 そして戻ってくるとタオルでからだを拭いていた。
 裸の零をフエはベッドに座らせ、長い髪を乾かしてあげていた。
「すまんな」
「ううん、いいのよ」
 フエは子供じみた声ではなく、大人びた声で、優しく零に言った。

「柊さんのお世話とは違うけど、零さんのお世話をするのも好きよ、私」

 フエはそう言って、髪を乾かし整え終えた。
「それは柊には言うなよ」
「言わないわよ~! 嫉妬されちゃうし、マヨイも告げ口禁止ね」
「う」
 フエは大人びた様子から、見た目相応の仕草をして言い、マヨイの口元に指を一本持って行った。
 マヨイはこくりとうなづいた。

「さて、じゃあ、私は帰るけど、まだ安静にしててね」
「ああ」
 零は下着姿から寝間着に着替え、ベッドに横になった。

「じゃあ、お休み、零さん」
「う、おやすみ、れいさん」

 そう言って二人は零の額にキスをして姿を消した。
 零は静かに目を閉じ、眠りに落ちた──





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