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異形性の発露について~番い達は語り、そして「花嫁」は疲労する~

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 康陽は会議室の扉が開いているのでのぞき見していた。
 そこには番い組の自分と銀を除く男性陣が集まっていた。
「どうしたんだ、お前達」
「フエが、異形性発露してるからって零の、零のところに」
「マヨイが、マヨイが、同じ理由で……」
「エル様も同じ理由で……」
 二人は半泣きになっており、ジンだけは渋い顔をしていた。
「仕方ないだろう、俺達では相手にできないんだから」
「お前は割り切れるのか⁈」
 隼斗が康陽につかみかかる。
 康陽はその手を払いのけて、呆れたように言う。
「それで苦しいのは本人達だ、割り切るしかあるまい」
「自分ではどうして駄目かと思わないのか⁈」
「思った、だがあの様を見ると、俺を傷つけるのが分かってしまっているから、しょうがなく零に頼むのだ」
 康陽は淡々と述べた。
「それに一回ヤってしまえば発露は収まる。寧ろ零に感謝すべきだろう」
「感謝⁈ フエがヤってるんだぞ⁈」
 今度は半泣きのまま柊が康陽につかみかかる。
 康陽は疲れたような息を吐き出し言う。
「異形の血は『花嫁』を求める、俺達は運良く番いになっただけで『花嫁』ではない。例え番いが居たとしても、花嫁を求める本能だけは彼女達もあらがえないのだ。フエも、マヨイも、エルも、自分の好きな相手とだけ抱き合うことができれば幸せだろうが、そうはいかない。彼女達は異形の子なのだから」
 康陽は淡々と説明する。
「お前達は依存しすぎだ、依存はいつか相手にとって負担になりかねんぞ」
 と、言うと三人はうろたえた。
「わ、私はエル様を思って……」
「エルの見た目は幼女だがあれでも立派な異形の子だ、分かっているだろう」
「フエ、フエは私を見捨てたりなんか、しない、しない……」
「しないだろうが、負担が増えると言っている」
「俺はマヨイに負担を……」
「かけているのが分かってるなら抑えろ」

「あーただいま」
「ただいまー」
「ただいまー」
「た、ただいま……」
 声が響いた。

「フエ!」
「マヨイ!」
「エル様!」
「やっぱり蓮、お前も行ってたんだな」

 明るそうな三人とは違い、罰わるそうな蓮が居た。
「俺は気にしてないといっただろう?」
「でも、康陽さんに悪いなって……」
「まぁ、悪いと思うならずいぶん遅くなったな位だな」
「今日四人そろって発情期というか異形性の発露が起きて、零さんの所いったんだけど誰からやるってなった時、みんな『どーぞどーぞ』状態になって、そっからくじ引きになって……あと、異形性の発露の具合が酷かったからかなり零さんに無理させた……」
「そうか、後で菓子折でももっていくか」
「うん」
「そういえば、葛アイスって美味しいアイス売ってるお店見つけたよ? 行こっか」
「葛アイスか、アレは美味いからな、いいだろう」

「フエ!」
「ど、どうしたの柊さん」
「私は負担か? 負担になっているのか?」
「どうしたの急に」
 いきなり聞いてきた柊に、フエは目を丸くする。
「康陽に依存は負担になると言われ……」
「あー……まぁ、負担にならないと言えば嘘になる」
「!」
 その言葉に柊はショックを受けた。
「でもそんなところが可愛らしくて愛おしいからいいの」
「フエ……!」
 柊はフエに抱きついた。

「マヨイ……俺は負担か?」
「うーふたんというより、しんぱい」
「心配?」
「いつもむちゃする、きずつける、だからしんぱい」
「マヨイ、すまない、すまない……!」
 隼斗はマヨイにすがりついた。

「エル様、大丈夫ですか……?」
「うん、すっきり! でもれいさんにむちゃさせちゃった」
「分かりました、菓子折でもおくりましょう」
「おねえちゃんたちがいってたくずあいすたべてみたい!」
「わかりました取り寄せましょう」
 ジンはエルを抱きかかえてその場を後にした。




「「──と、言うわけで菓子折謝罪です、今回もすみませんでした」」
 げほげほと咳き込む零に、フエ達は謝罪した。
「……冷凍冷蔵ものなら入れてくれ……げほ!」
「本当、ごめんなさいね、いつも以上に辛い思いをさせて」
「本当、ごめんなさい」
「すまないな、零」
「すみませんでした、零さん」
「いいさ……異形の依頼の時手伝って貰ってる身だ……これ位……ごほごほ!」
「あーあー無理しないで、レオン居るんでしょう?」
「はい」
「今日は看病お願い、私達は今日も異形見つけたから狩りに行く必要が出てて」
「分かりました」
「げほ……あまり、派手にするなよ」
「善処します」
「善処、できたらいいな」
「あまり期待するな」
「期待はしないでください」
 フエ、蓮、康陽、ジンの四人に言われて、零はため息をついた。
「全く、困ったものだ……」
 と──





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