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蜘蛛の娘の脱皮事情~番いにも見られたくない場面はあるんです!~
しおりを挟むその日、蓮はげっそりとしていた。
顔色が悪いとも言える。
いつもは、綺麗な紫の目も濁っていた。
「あーあの日か──……」
蓮はげんなりとした表情で自室に戻った。
そして康陽がいないのを確認して風呂場に入り、服と下着を脱ぐ。
べり、べりべりべり
脱皮するが如く皮が向ける 。
「あーくそ、蜘蛛の習性で脱皮する癖あるの、やだなぁ、蜘蛛の時だけあればいいんだけど、この姿でもあるからいやなのよ」
と抜け殻を手に持ち嫌そうな顔をする。
「さて、康陽さんに見つからないようにこれを捨てるだけか」
「誰に見つからないように捨てるって?」
「あびゃぎゃ!」
一番今、遭遇することを恐れている人物の声を聞き、蓮は奇声を上げる。
「聞いたぞ、お前定期的に脱皮しているってな」
「誰から⁈」
「フエ以外に誰がいる?」
「あの姉貴ー‼」
蓮は頭をかきむしった。
「で、その抜け殻はどうするんだ?」
「捨てる」
「そうか」
康陽が即答したので蓮は目を丸くした。
「え、欲しいとか言わないの?」
「言ったらお前が嫌がるだろう」
「そ、そうだよ! よかったぁ、欲しいとか言われたら困る所だった……」
蓮はそう言って生ゴミのゴミ箱の中に抜け殻を投げ捨てた。
小蜘蛛が集まり、抜け殻を食べて抜け殻は無くなった。
「いつも、そうして処分していたのか」
「うん」
蓮がそう言うと、康陽は蓮に抱きついた。
「ちょ、康陽さん⁈」
「良い香りだ、肌の質感もいい」
「変態くさいからやめてよー!」
「おっとすまない」
康陽は蓮から離れた。
「だが、事実だったんだ」
「もう……」
蓮は顔を紅くして、むくれる。
そんな蓮を見て、康陽は愛おしそうに頬を撫でる。
「蓮」
「な、なぁに」
「愛している」
「!」
「お前は?」
「勿論──」
「愛してる!」
そう言って蓮は康陽に抱きつき、そのままぼふんとベッドに二人仲良くダイブした。
「押し倒されたな」
「ご、ごめん、嬉しくて……」
「お前に押し倒されるならいつでも歓迎だ」
「もう、康陽さんったら……」
「後、頼みたいんだが」
「何?」
蓮は首をかしげる。
「今度脱皮するときは俺に見せてくれないか?」
「絶対嫌!」
「そうか……」
「見られたくないものだってあるのー!」
「なら仕方ない」
康陽は諦めたように言った。
蓮は内心諦めてないのでは無いかとヒヤヒヤしていた──
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