クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

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いじめの報復~異形化の代償~

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「分かりました、ではそちらに伺います」
 零は電話を切ると出かける準備をした。
「レオン、ニルス、異形案件の可能性が高い奴だ、着いてこい」
「分かりました」
「仰せの通りに」
 つば広の帽子を被り、コートを羽織り零はレオン達を連れて出かけた。


 着いたのは一軒家。
「失礼します」
「ああ、申し訳ございません」
 母親らしき女性が出て来た。
「事情の説明をお願いします」
 零は異様な気配が漂っている二階の一室をチラ見してからそう言った。
「分かりました」


 息子と娘がいるという。
 そのうちの息子がいじめに遭っていたという。
 休ませようとする母に対し、父はいじめの証拠を取って警察に連絡だ。
 と言うことで、息子のいじめを撮影し警察に届けたが、もみ消されてしまったらしい。
 その数日後息子はこういった。

「もう大丈夫、連中は地獄を見るから」

 と。
 最初は意味は分からなかったが、いじめをしていた子ども等は次々と不慮の事故にあった。
 野球選手を目指していた少年は腕が二度と使い物にならなくなり。
 サッカー選手を目指していた少年は足が二度と使い物にならなくなった。
 そしてもみ消した親は、不祥事が警察で明らかになり首になると同時に事故にあって意識不明の重体に。

「神様が力をくれたんだよ、僕をいじめる奴はみんなこうなるんだ!」

 と、いじめを見て見ぬふりをしてきた子ども達も被害が出始めた。
 母親は何か恐ろしくなり、息子を休むように言って無理矢理休ませている。


「……では、私が息子さんに会ってみましょう」
「ですが」
「その間、家からは出て下さい、大きな音がしても入っては駄目です」
「は、はい……」
 母親を家に出すと、二階へと向かう。

 其処には蹲っている少年がいた。

「お姉さん達も僕のこといじめに来たの?」
 顔を上げずに少年はそういう。
「……自分の顔を見たな?」
 零は答えず問いかけると少年はびくっと震えた。
「私達はそれを治療しにきたんだ」
「治りっこないよ」

「こんな顔‼」

 少年が顔をあげると、顔の半分が灰色になり、無数の目がうじゃうじゃと着いており、口は裂けていた。

「マヨイ」
「う!」
「え、なに、そのこ」

 突如現れた真宵に、少年は戸惑っているようだった。
「マヨイ、治せるか」
「う!」
 こくりと頷くと、マヨイの使い魔が少年を包み込んだ。
「~~‼」
 同時に、灰色の目が無数にある異形が姿を見せる。
「弾丸一発で大丈夫かと」
「そうか」
 レオンの言葉に、零は銃を取り出し、異形に向けて撃った。

 異形は大きな穴を開けて消滅していった。

「消滅したか」
「いえまだ──」
「う!」
 マヨイの使い魔が何かを喰らった。
「……マヨイの使い魔が残りを全部喰らいましたね」
「さて、要件はすんだ。マヨイ」
「う!」
 マヨイの使い魔が少年を吐き出した。
「ほら、これが今のお前の顔だ」
 少しべたついている少年に、鏡を見せる。
 少年は驚いて鑑を見て自分の顔を触る。

「僕の、顔、だ!」
「力はもうなくなったが、顔は戻った。あのまま使い続ければお前は化け物になっていただろう」
「そんな……力がなくなったらまたいじめられちゃう……」
「いじめられたら両親が助けてくれるだろう」
「でも……」
「なんならうちに相談に来い、一発で通していじめっ子達の人生を終わらせてやる」
「う、うん……」




「さて、気が進まんがマヨイ」
「う?」
「異形の力の行使で怪我をした子ども達の治らない箇所を治してやってくれ」
「う!」
 マヨイは親指をたててうなづき、そのまま姿を消した。




 翌日の新聞で、治らないとされた子ども達、意識不明者が皆治っていた不可思議な事件が起きたと小さく記載されていた。




「お姉ちゃん!」
「どうした、いじめられたのか?」
 母親と父親と一緒に来た少年に零は尋ねる。
「ううん、お礼ちゃんと言えてなかったから、ありがとう!」
「どういたしまして」
「息子が化け物になる手前で助けていただきありがとうございます、これは報酬です」
「貰って起きましょう。次いじめにあって、似た力を使えるようになっても使うんじゃないぞ」
「うん! お姉ちゃんに助けて貰う!」
「それでいい」
 零は少年の頭を撫でて、家族を見送った。




 零は二階の自室に戻り、紅茶を入れる。
「マヨイ、よくやってくれた」
「う!」
 マヨイがずるりと現れ、笑う。
「良かったら菓子でも一緒に喰わんか?」
「う!」
 マヨイは頷き、菓子を口にし嬉しそうに食べた。
 零はそれを微笑ましげに眺めた──





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