45 / 238
いじめの報復~異形化の代償~
しおりを挟む「分かりました、ではそちらに伺います」
零は電話を切ると出かける準備をした。
「レオン、ニルス、異形案件の可能性が高い奴だ、着いてこい」
「分かりました」
「仰せの通りに」
つば広の帽子を被り、コートを羽織り零はレオン達を連れて出かけた。
着いたのは一軒家。
「失礼します」
「ああ、申し訳ございません」
母親らしき女性が出て来た。
「事情の説明をお願いします」
零は異様な気配が漂っている二階の一室をチラ見してからそう言った。
「分かりました」
息子と娘がいるという。
そのうちの息子がいじめに遭っていたという。
休ませようとする母に対し、父はいじめの証拠を取って警察に連絡だ。
と言うことで、息子のいじめを撮影し警察に届けたが、もみ消されてしまったらしい。
その数日後息子はこういった。
「もう大丈夫、連中は地獄を見るから」
と。
最初は意味は分からなかったが、いじめをしていた子ども等は次々と不慮の事故にあった。
野球選手を目指していた少年は腕が二度と使い物にならなくなり。
サッカー選手を目指していた少年は足が二度と使い物にならなくなった。
そしてもみ消した親は、不祥事が警察で明らかになり首になると同時に事故にあって意識不明の重体に。
「神様が力をくれたんだよ、僕をいじめる奴はみんなこうなるんだ!」
と、いじめを見て見ぬふりをしてきた子ども達も被害が出始めた。
母親は何か恐ろしくなり、息子を休むように言って無理矢理休ませている。
「……では、私が息子さんに会ってみましょう」
「ですが」
「その間、家からは出て下さい、大きな音がしても入っては駄目です」
「は、はい……」
母親を家に出すと、二階へと向かう。
其処には蹲っている少年がいた。
「お姉さん達も僕のこといじめに来たの?」
顔を上げずに少年はそういう。
「……自分の顔を見たな?」
零は答えず問いかけると少年はびくっと震えた。
「私達はそれを治療しにきたんだ」
「治りっこないよ」
「こんな顔‼」
少年が顔をあげると、顔の半分が灰色になり、無数の目がうじゃうじゃと着いており、口は裂けていた。
「マヨイ」
「う!」
「え、なに、そのこ」
突如現れた真宵に、少年は戸惑っているようだった。
「マヨイ、治せるか」
「う!」
こくりと頷くと、マヨイの使い魔が少年を包み込んだ。
「~~‼」
同時に、灰色の目が無数にある異形が姿を見せる。
「弾丸一発で大丈夫かと」
「そうか」
レオンの言葉に、零は銃を取り出し、異形に向けて撃った。
異形は大きな穴を開けて消滅していった。
「消滅したか」
「いえまだ──」
「う!」
マヨイの使い魔が何かを喰らった。
「……マヨイの使い魔が残りを全部喰らいましたね」
「さて、要件はすんだ。マヨイ」
「う!」
マヨイの使い魔が少年を吐き出した。
「ほら、これが今のお前の顔だ」
少しべたついている少年に、鏡を見せる。
少年は驚いて鑑を見て自分の顔を触る。
「僕の、顔、だ!」
「力はもうなくなったが、顔は戻った。あのまま使い続ければお前は化け物になっていただろう」
「そんな……力がなくなったらまたいじめられちゃう……」
「いじめられたら両親が助けてくれるだろう」
「でも……」
「なんならうちに相談に来い、一発で通していじめっ子達の人生を終わらせてやる」
「う、うん……」
「さて、気が進まんがマヨイ」
「う?」
「異形の力の行使で怪我をした子ども達の治らない箇所を治してやってくれ」
「う!」
マヨイは親指をたててうなづき、そのまま姿を消した。
翌日の新聞で、治らないとされた子ども達、意識不明者が皆治っていた不可思議な事件が起きたと小さく記載されていた。
「お姉ちゃん!」
「どうした、いじめられたのか?」
母親と父親と一緒に来た少年に零は尋ねる。
「ううん、お礼ちゃんと言えてなかったから、ありがとう!」
「どういたしまして」
「息子が化け物になる手前で助けていただきありがとうございます、これは報酬です」
「貰って起きましょう。次いじめにあって、似た力を使えるようになっても使うんじゃないぞ」
「うん! お姉ちゃんに助けて貰う!」
「それでいい」
零は少年の頭を撫でて、家族を見送った。
零は二階の自室に戻り、紅茶を入れる。
「マヨイ、よくやってくれた」
「う!」
マヨイがずるりと現れ、笑う。
「良かったら菓子でも一緒に喰わんか?」
「う!」
マヨイは頷き、菓子を口にし嬉しそうに食べた。
零はそれを微笑ましげに眺めた──
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。



転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
トリエステ王国の第三王女によるお転婆物語
ノン・タロー
ファンタジー
あたし、「ステラ・ムーン・トリエステ」はトリエステ王国の第三王女にして四人兄妹の末っ子として産まれた。
そんなあたしは、食事やダンスの作法や練習よりも騎士たちに混じって剣の稽古をするのが好きな自他ともに認めるお転婆姫だった。
そのためか、上の二人の姉のように隣国へ政略結婚に出される訳でもなく、この国の跡取りも兄がいるため、生まれてからこの18年、あたしは割と自由奔放にお城で過ごしていた。
しかし、不自由は無いけど、逆に無さすぎで退屈な日々……。城から外を見ると、仲間と街を楽しそうに話しながら歩いている冒険者の人々が見えた。
そうだ!あたしも冒険者になろうっ!
しかし、仮にも一国の王女が、しかも冒険者をしていると言うのがバレるのは流石にマズイ。
そうだ!変装をしようっ!
名案とばかりに思いついたあたしは変装をし、「ルーナ・ランカスター」と偽名まで使い、街へと繰り出そうとする。
しかし、運悪く、あたしの幼馴染でお目付け役である騎士の「クロト・ローランド」とその妹で専属メイドの「アリア・ローランド」に見つかってしまう。
そうだ、こうなったら二人も連れて行こう!あたしはクロト達を巻き込むと城下街である「トリスタ」へと繰り出す!
こうしてあたし、「ルーナ」と「クロト」、「アリア」との物語が幕を開くのであったっ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる