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とある異形の息子~力持つ彼の願い~

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 俺はロナク。
 異形の子って言われる存在の一人。
 俺には血のつながった姉ちゃんがいる。
 ロナっていって、首から上はないけど美人なんだぜ。

 中身が美人なんだよ!

 俺は人間の悪意を増幅させ、最終的に異形にする力を持つ。
 親父譲りの嫌な能力だ。

 周りには笑って使って見せてるけど、本当は使いたくない。
 だって姉ちゃんに嫌われかねない能力だから。

 姉ちゃんは、見かけの異形性が強い反面、力は弱い。
 でも、怒らせるとめっちゃ怖い。
 異形の子って言われる通り俺の頭鷲づかんで砕こうとするんだもん。

 いや、それはフエの奴にもやられるけど、姉ちゃんにやられると精神的に来る。
 フエの場合は肉体的に来る。

 立場上フエの事を姉と呼ばないといけないんだけど、呼ばない。
 俺の姉ちゃんは、ロナ姉ちゃんだけだから。

 他の連中が文句を言ったがフエは──

「いいんじゃね、その代わり姉ちゃん泣かすなよ!」

 って笑って言った。
 フエは信頼できるけど、怒らせると姉ちゃん同様怖い。
 この間マヨイに色々教えたら〆られた。

 頭部破壊されて、体もボロボロ、思わず姉ちゃんを泣いて呼んだ。
 姉ちゃん、俺の体叩いて、泣き声で、

「申し訳ございません、申し訳ございません」

 と謝るのに俺は罪悪感マックス。
 マヨイとか、リラとか、エルとか、そこらあたりのお子ちゃま組には変な事教えないことを心がけることにした。


 ただ……エルの奴。
 彼奴は俺とよく組んでいた。
 悪意を増大させた人間を彼奴は捕食していた。
 それでもお腹がすいたとわめく彼奴をフエがたしなめていた。

 色々あって幼子の姿になっちまったが、お腹がすいたと言うことも無くなった。
 それにはちょっと安心してる。
 飢え続ける苦しみは俺には分からないから。


 生まれた時、俺の母親は死んでいた。
 すぐに成長した俺と姉ちゃん。
 姉ちゃんは俺の母親代わりになってくれた。
 俺は悪意を増大させるから耐性がない相手以外は相手にできなかったから。
 食事も食べさせてくれて、遊んでくれて、姉ちゃんが居れば何もいらないと思うようになっていた。


 でもある日、俺が能力を制御できるようになったと分かると、姉ちゃんは異形の子達の本拠地に連れて行かれることになった。
 姉ちゃんはどうみても人間じゃないから。
 俺は駄々をこねた。
 すると姉ちゃんを連れて行こうとして来たフエが、

「じゃあ一緒に行きましょう」

 と、何でも無いように言って俺も連れて行ってくれた。
 そして俺が異形を殺すデビュー戦は親父だった。

 人間を異形にしようとしているのを見かけて殺した。
 まさか人間の血を引く異形の子に、しかも我が子に殺されるとは思わなかっただろう。


 じたばたもがく姿は滑稽だった。


 ざまぁみろ!
 母さん、仇とったよ。
 姉ちゃん、もう苦しまなくていいんだよ。

 そういう感情が俺の心を占めた。

 でも、姉ちゃんはいつも憂鬱そう。

 まるで、自分が生まれてきたことが罪みたいに。

 俺が言っても、フエが言っても変わらない。

 姉ちゃんに番いが居れば、変わるのかな?
 なぁ、誰か姉ちゃんの苦しさを取り除いてくれよ。
 俺じゃ、無理なんだ。


 なぁ、誰か──





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