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とある異形の娘~悪意の異形から生まれた悪意の力持たぬ子~
しおりを挟む私の父は悪意を増大させ、そしてその悪意を増大させた上で人間じゃ無くさせる異形。
気まぐれなのか、悪意が増大しない母に種を植え付け、そして死なせた。
その際生まれてきたのが、私とロナク。
父の姿の異形性を強く受け継いだ私と、異形性がねじ曲がったロナク。
成長したロナクがしたことは父を殺すこと。
父を殺したロナクは笑っていた。
「母さんを気まぐれで死なせたんだから、俺が気まぐれでお前を殺してもいいだろうなぁ!」
異形の子らが生まれる病院で生まれた私とロナク。
ロナクは包帯をしたり、少し体を変化させれば人間に紛れてくらせた。
でも、私は違う。
生まれてから頭部を持たない私は、これ以上変化することはできない。
だから直ぐさま異形の子等の──フエ姉さんの迎えが来た。
ロナクは駄々をこね嫌がった、するとフエ姉さんは──
「じゃあ、いっしょに行きましょう」
とロナクの手をとって異形の子等の本拠地へと連れて行った。
異形の子は少ない、けれども生まれてくることはある。
生まれてきて生きている異形の子は、親を、異形を殺したがる。
只、例外があるとしった。
クラルさんと、マヨイの両親は異形と人間だが、異形である父は人間を庇護する存在だった、その巫女である母と結ばれ、番いとなり母たる女性はクラルさんとマヨイを産み落とした。
だからその二人は恵まれている。
他の異形の子らは親を殺している。
私は殺すような力はなかった、ロナクは持っていた。
ロナクは、私の言うことを聞く。
私に零さん以外の番いができることを許さない位私を愛している。
だからあの子は私に嫌われるのを恐れている。
幼い頃人混みに紛れることすらできなかった私だが、長く生きて紛れることができるようになった。
その姿が、亡き母に似ているからなのだろうか?
分からない、問うことはない。
私は、番いを持つ気はない。
弟が番いを持つ気がないように。
弟が番いを害さないように。
弟は、私にどうして其処まで依存するのか分からない。
けれども、弟が私に依存する以上、被害をださないようにするのが第一だ。
ただ、零さんにだけはもうしわけないと思っている。
いつも弟の発情期に、弟が体を傷だらけにしてしまって、もうしわけないと。
こんな不都合な体の私達。
たまに思う。
何故私達は生きているんだろう、と。
死にたいわけでは無い。
ただ、生きていることが罪なのではないかと、思ってしまうのです。
それを聞いたフエ姉さんは笑って言った。
「ロナは真面目ねー、いいのよ私達は生きてて。生きて、善人を救うの、異形を殺すの、それが私達の定めなの、それでいいのよ。簡単簡単」
と。
では、異形もロクに殺せない私は何なのでしょう──?
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