クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

文字の大きさ
上 下
27 / 238

零の憂鬱な一日

しおりを挟む




 零は朝目を覚ますと──
「やあ『花嫁』さん、ご機嫌麗しゅう」
 と言いながら寝間着を脱がせようとするニルスが目の前に居た。
「──レオン」
 と呟くと、十秒もしないうちにレオンが扉をバンを開けて、ニルスにドロップキックをかました。
 顔面に。

「ごはっ⁈」

「貴様はことある毎に所長を襲おうとして! 何を考えている⁈」
「何を『花嫁』を求めるのが我らの性、そうだろう、君も」
「私は貴様と違って分別がつく、我慢もできる!」
「我慢せず、ほら」

 半裸の零をニルスは指指す。
 レオンは目を見開いたが、ぶんぶんと首を振り。

「アレはお前が無理矢理脱がせたんだろう!」
「本当に我慢強いな、では今回は逃げるとするか!」
「まて貴様!」
 ニルスが逃げるのを追い、レオンは部屋を出た。

 零は疲れたようにベッドに再度横になり、布団にくるまった。

「所長、依頼の方が……所長⁈」
 二階に上がってきた瑞樹が慌てた表情で零に駆け寄る。
「気分がすぐれない、悪いがレオンを呼び出して対処させてくれ……」
「わ、わかりました!」
 瑞穂がいなくなる。

「……」
 誰も居なくなると、再び零はため息をついた。
「辛い」
切ない・・・の間違いじゃなくて?」
 フエが現れる。
「フエ、か……」
「発情期だもんねー、私がどうにかして……」

「フエ!」

「柊さん⁈」
 二階の扉を開け放って柊が現れた、後ろには紅がいる。
「お前が最近自分をないがしろにしてるんじゃ無いかと泣きわめくから連れてきたぞ」
「バッドタイミングー! なんで今連れてきたし」
「フエ、私ではだめなのか? だめなのか?」
「ああん、そうじゃなくてもー!」
 フエは柊を連れてその場から姿を消した。

「全く、番いがいるのに花嫁の仕事を手伝いすぎなのだ彼奴は」
「……それは、すまない」
「我らが花嫁が謝る事ではないよ、零」
「……」
「私達にとってお前は特別だ、自死もせず、運命にあらがおうとする花嫁よ」
「運命に、あらがって等いないさ」
 紅の言葉に、フエは疲れたように言った。
「ただ、何も知らずに死にたくないだけだ……」
「そうか……」
 紅が零の頬をなでて、そっと口づけをする。
「どうか、良い夢を」
 そう言ってその場を離れようとすると──

「よー! 花嫁さん、発情期なんだってー⁈ 俺が相手しちゃっていいー?」
「……ロナク」
「げ」
 ロナクが現れた時、紅は非常に渋い表情をしてみせた。

「ロナク、貴様の性質はよぉく理解している、故に発情期の零の相手などさせられるものか」
「いでででで! 頭が、頭が割れる」
「ここで割るのもなんだ、外で割ってやる」
「ギャー!」

 紅はロナクの頭を鷲掴んだまま、その場を後にした。

 それから次々と異形の子が現れ、騒いでいっては嵐のように去って行った。

「……しんどい」
「あーやっと柊さん寝てくれた、意識飛ぶまでヤるのはなんかアレだけどしょうがない」
 フエが再び部屋に戻ってきた。
「一回ヤれば終わるから、いいでしょう?」
「勝手にしろ……」
「わーい!」
 フエはそう言って零に手を伸ばした。

 しばらくして、濁った零の声が部屋中に響きだした。


 翌日──
「所長、もう大丈夫なんですか⁈」
 瑞樹が声をかける。
「ああ、大丈夫だ……って何があった、この部屋の散らかりようは」
「それが夫婦共に不倫をしていたそうで、お前が悪い、アンタが悪いと言い争いになり、仕方ないので伊賀さんと、高嶺さんが追い出しました」
「……そうか、なら今日は部屋を片付けようか」
「はい!」


 憂鬱な一日は終わり、こうしてまた零の探偵としての一日が始まる──





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

医魔のアスクレピオス ~不遇職【薬剤師】はS級パーティを追放されても薬の力で成り上がります~

山外大河
ファンタジー
 薬剤師レイン・クロウリーは薬剤師の役割が賢者の下位互換だとパーティリーダーのジーンに判断され、新任の賢者と入れ替わる形でSランクの冒険者パーティを追放される。  そうして途方に暮れるレインの前に現れたのは、治癒魔術を司る賢者ですら解毒できない不治の毒に苦しむ冒険者の少女。  だが、レインの薬学には彼女を救う答えがあった。  そしてレインは自分を慕ってパーティから抜けて来た弓使いの少女、アヤと共に彼女を救うために行動を開始する。  一方、レインを追放したジーンは、転落していく事になる。  レインの薬剤師としての力が、賢者の魔術の下位互換ではないという現実を突きつけられながら。  カクヨム・小説家になろうでも掲載しています。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。 亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。 さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。 南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。 ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

【完結】過保護な竜王による未来の魔王の育て方

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
魔族の幼子ルンは、突然両親と引き離されてしまった。掴まった先で暴行され、殺されかけたところを救われる。圧倒的な強さを持つが、見た目の恐ろしい竜王は保護した子の両親を探す。その先にある不幸な現実を受け入れ、幼子は竜王の養子となった。が、子育て経験のない竜王は混乱しまくり。日常が騒動続きで、配下を含めて大騒ぎが始まる。幼子は魔族としか分からなかったが、実は将来の魔王で?! 異種族同士の親子が紡ぐ絆の物語――ハッピーエンド確定。 #日常系、ほのぼの、ハッピーエンド 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/08/13……完結 2024/07/02……エブリスタ、ファンタジー1位 2024/07/02……アルファポリス、女性向けHOT 63位 2024/07/01……連載開始

異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!

マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です 病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。 ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。 「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」 異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。 「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」 ―――異世界と健康への不安が募りつつ 憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか? 魔法に魔物、お貴族様。 夢と現実の狭間のような日々の中で、 転生者サラが自身の夢を叶えるために 新ニコルとして我が道をつきすすむ! 『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』 ※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。 ※非現実色強めな内容です。 ※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。

処理中です...