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平坂探偵事務所の日々~一般から異形案件まで受け付けてます~

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「……」
 零は目を覚ました。
 昨晩マヨイの相手をしたから裸のままだった。
 なので下着を履き、顔を洗い、歯を磨いて、着替える。
 紺色のスーツに身を包む。
 そして食事を取る。
 マヨイが置いていった果物と野菜で作ったサラダ、そしてパンを食べる。
 果物とサラダは食べると疲れが吹き飛ぶような感覚になった。
「ふぅ」
 水を飲み、息を吐く。
「さて、今日はどうするか」
 そう言って一階に下りていく。


「浮気調査ですか……」
「はい、お願いします」
「分かりました」
 一般の依頼もくるので、雇い主がいなくなると零は部下を呼ぶ。
「伊賀、高嶺」
「聞いていましたよ、浮気調査ですね」
「この男だ」
「分かりましたわ」
「頼んだぞ」
 そう言って二人の部下が出て行くのを見送る。

「私たちはなにもしなくても?」
「レオンは相手が尻尾を出さなかった時の最終手段だ、ニルスは余計状況を悪くするだろう」
「そんなことはないですとも」
 ニルスは笑って言うが、零はジト目で睨み付ける。


 それから数日後──
「尻尾つかみましたよ、黒ッス!」
「ええ、黒でしたわ!」
「よくやってくれた、依頼人がちょうどくるから報告しよう」
 そう言って依頼人が来ると、浮気をしていたことと証拠写真を見せる。
 女性はショックを受けて涙を流したが、吹っ切れた顔をした。
「夫とはもうやっていけません、弁護士に相談をして──」
「離婚相談に強い弁護士ならこちらに」
「有り難うございます」
 弁護士の名刺を渡し、依頼人からお金を支払って貰い、出て行くのを見送る。
「どうか貴方の次の道に幸おおからん事を」
 そう言って頭を下げる。



「父が行方不明なんです」
「警察には?」
「もう言いました、ですが父が行方不明になった場所を調査した途端打ち切りに……」
 青年が不安そうに言うと、零は手を組んで口を開いた。
「お父様は生きていないかもしれません、それでも依頼なされますか?」
「それでもです! 生きてるかもしれないですし、父が死んでいるなら遺体を見つけたいのです」
「見つからない可能性もあります」
「っ……それでもお願いします」
 ショックを受けた表情をしたが、それでも青年は懇願するように言った。
「分かりました、依頼を受けましょう」
「ニルス、レオン、行くぞ」
「はい」
「畏まり」
 そう言って二人を連れて出て行く。

 依頼人から貰った情報を元に、現場に行くと立ち入り禁止のテープが貼られ、見張りがいた。
「平坂探偵事務所の者だが」
「‼ どうぞ、お通りください」
 警察官は零の証明書を見ると、通る許可を出した。
 現場に入ると、ねちょりとした感触が靴から伝わった。
 何かが上からしたたってくる。

 零は直ぐさまその場から離れると、巨大なワームのような異形が現れた。
「マヨイのではないな」
 そう呟いて銃を取り出し、異形に打ち込む。
 すると異形はもがき苦しむようなおぞましい声を上げてぐったりとして何かを吐き出した。
 複数の人間が膜に包まれて吐き出された。

「……これは」
「私に任せてください」
「レオン、頼む」
 レオンは何かが刻まれたナイフを手に持ち膜を破る。
「っは⁈ こ、ここはどこ⁈ 私、何かにされて……」
「落ち着いてください、私たちは貴方を救助に来ました」
「ほ、本当⁈」
 レオンが女性をなだめる。
「こ、ここ最近の行方不明者です、間違いないです」
「では、後は警察と施設に任せましょう」
「そうするか」
 レオンは膜を次々破って救助していき、その間にニルスが異形を人目につかない場所に移動させた。

「今回は異形の子等の力を借りずにすんでますね」
 レオンが言うと零は首を振った。
「え?」
「あの膜はマヨイのものだ、マヨイが捕食するまえに膜を張り消化できないようにしていたのだ、だから彼女がいなければ今回の人たちは全て溶けて証拠がなくなっていた」
「な、なるほど」
「それも分からないとは、まだまだ青いなぁ」
「うるさい、黙れ」
「喧嘩は止めろ」
 ニルスとレオンの喧嘩を止めて、零達は事務所に戻り、依頼人に連絡をし、報告書を書いて、まとめた。

 その後、全員が帰宅し、事務所に零が一人になるとマヨイとフエが現れた。

「ごめんねー、相手が逃げ足速いから膜で覆って消化させないのが精一杯だったのー」
「うー……」
 フエとマヨイは申し訳なさそうにする。
「いや、そうしてくれたおかげでこちらは全員を救助できた」
「本当?」
「本当だ。ところで本体は?」
「本体は漸く見つけてついさっき殺してきたところ、これで同じ事件は起きないわ」
「……それ邪教集団じゃないよな?」
 零が嫌そうに言うと、フエが首を振った。
「今回は違うよー」
「なら、いいんだ」
「それでさー」
「ん?」
「殺しちゃったので本能いま丸出しだから相手して」
「う」
「……仕方ない、二階に行くぞ」
「やったぁ!」
「う!」
 零はコートを脱いで、二階に行き、裸になってベッドに横になった。
 それをマヨイとフエの二人が覆い被さる。
 ちゅっちゅとキスを体に落としていく。

 やがて、濁った零のあえぎ声が部屋に響き始めた──





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