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異形の子等は『花嫁』を語る~もう一人のフエ~
しおりを挟む「何で俺は零の事にノータッチさせられなきゃいけない訳⁈」
ロナクが大声で会議室でわめく。
「お前が零と性交渉すれば零の体に傷がつくからだ」
パソコンに何かをカタカタと打ち込みながら紅がそっけなく言う。
「ねーちゃんはどう思うよ⁈」
首から上がない女性にロナクは声をかける。
女性は手のひらの口から声を発した。
『私も紅姉さんと同じ意見よ、貴方は暴力的だもの』
「そんなぁねーちゃんまで!」
「ロナが言うようにお前は暴力的すぎるのだ」
首から上がない女性──ロナの言葉に紅は同意する。
「じゃあ、フエはどうなんだよ! こいつ番いいるのに零とヤってるんだぜ!」
「んあ?」
フエは聞いていなかったかのような反応をしめした。
「フエ姉さん、ロナクがフエ姉さんは番いいるのに零さんと性交渉してるのはどうなんだって文句つけてるけど?」
蓮が若干呆れたようにフエにささやく。
「あー私、私は番い大事だけど、本能強いから零さんとしたくなっちゃうのはしょうがないの」
「創造の異形を食らったからなフエは、自分の親を。その結果本能が強いのだ、子どもを作らないだけまだマシだと思え」
「何だよ、俺だと子どもつくるって言いたいのか」
「そうだ」
「ちぇ、異形少女組はずるいよなぁ、番いもってるし、零と自由にできるし、羨ましい」
「異形少女、か」
紅がふぅと息を吐く。
「異形少女組はそれ以上成長をしない、私のように大人の姿になることはない、それが幸せかどうかはわからんが」
「……だよなぁ、エルは異形少女組じゃなかったのに、飢餓状態になって悪人食い殺しまくった結果、幼児化して異形少女組になっちまったもんなぁ」
「あの子の飢えは酷かった、どうすることもできなかった、だから今が最善と諦めるしかないのだあの子の場合」
「でもさぁ、番いのヤンデレ兄ちゃん怖すぎねぇ? 俺に人間の悪意増幅させて悪人を増やさせることはできるかとか聞いてきたんだぜ」
「後で説教だな、よく報告してくれた」
「よっしゃ」
ロナクはガッツポーズを取る。
「フエは親を喰らった性で異形少女に、蓮はその特異体質から異形少女に、エルは飢餓から逃れようとした結果異形少女に、幸せなのはマヨイかもしれん、あの子は親の愛も知っている、そして人の善意も知っている、その上で成長ができない異形少女なのだから」
「……」
「そしてライラック──りら、だな。あの子は異形性を発露した結果異形少女になってしまった。人の悪意が原因で」
「あー人形みたいなにーちゃんといっつも人形遊びしてるもんなぁ」
「異形少女だけど、私自分が不幸だとか思ったことないからね」
フエが反論するように言う。
「クロード見てみなよ、零さんに惚れてるのに体内に取り込みたい欲求が出るから距離置いてるじゃん」
「頼むから黙っててくれ」
金髪碧眼の青年が頭を抱えてため息をついた。
「まぁ、そういう例もあるな」
「結局私らが不幸とか幸せとかまだわかんないんだよ、いつまで続くか分からないし」
「何が?」
「零さんのこと、零さんがいつまでも生きられるか不明なんだよ。以前一回首落としたことあるし」
「あー……」
「異形と関わり続けるっていうのはそういう事、今までの『花嫁』は皆それを苦に自殺しちゃったけど零さんは違うから心配なのよ」
「だからレオンを派遣してるんだろう?」
「でも側に『黒き愉快犯』『黒き蹂躙者』であるニルスの野郎がいるから安心できない」
「その主人だった創造の異形食ったお前が今は主人なんだからどうにかしろよ」
「食ったけど主人としての扱いが微妙だから言ってるの!」
「──今し方レオンから連絡が来たぞ」
「何?」
部屋の空気が硬直する。
「ニルスが寝込んでいる零を襲おうとしたとな」
部屋の温度が一気に下がった。
「よし、乗り込んでくる」
ドスのきいた声でフエは言うと姿を消した。
十数分後、フエが服を不気味な色の体液で染めて戻ってきた。
「どうだった?」
「絞めてきた」
「そうか」
「殺そうと思ったら逃げられた、あの野郎逃げ足速い」
フエが忌々しげに呟く。
「なぁ、俺が『花嫁』貰っちゃ駄目?」
「駄目」
しつこいロナクに紅が立ち上がりげんこつを喰らわす。
「いっで!」
「げんこつですんで良かったと思え、今のフエがやっていたらお前はバラバラだぞ」
「うへぇ」
「うん、バラバラにしようと思った」
「こっわ! ねーちゃん助けて!」
ロナクは隣にいる姉のロナに抱きつく。
『ごめんなさい、私も助けてあげられないわ』
「そんなぁ」
「レオンもクロードも欲しくてたまらないのに我慢してるの。一番安全なレオンが我慢してるんだからお前が我慢しなくてどうするのさ」
フエが椅子にどかっと腰をかけて不満そうに言う。
「いいじゃんかーちょっと位」
「駄目」
『ロナク、あまりフエ姉さんにそう言っては駄目よ、フエ姉さんが怒ったらどうなるかわかってるでしょう?』
「ちぇー分かってるよ」
「あー今日はイライラするからちょっとあそこに行ってくる」
「あそこ?」
「ああ、あそこか」
「うん、じゃあね」
紅だけが納得している様子で、他の者はきょとんとしていた。
フエはその場から姿を消す。
「あそこってどこだよ」
「言葉で説明できない場所だ」
「はぁ?」
ロナクは首をかしげ、他の異形の子等も首をかしげていた。
「はぁい、私。そっちはどう?」
『やぁ、私、こっちは決行大変』
真っ暗な空間に、透明な仕切り、板、よく分からない壁で区切られた場所でフエと、フエ瓜二つの少女がいた。
その少女をフエは私と呼んだ。
「どんな風に?」
『ロボットとかいっぱいいるし、宇宙規模だから大変、宇宙にまで行かなきゃならないのめんどくさいー』
「とかいいつつ、楽しそうじゃない」
『わかる』
「わかるよ、だって貴方は私なんだもの!」
『そうよね!』
「時代が違うだけで、出会いも他も全部一緒って面白いわね」
『うん、面白いよ』
「そっちの零さんは無理してる」
『めっちゃ無理する』
「やっぱりねー」
フエは「フエ」の言葉に納得した。
「じゃあ、貴方の方で起きたこと、聞かせて?」
『いいよじゃあ』
『大量の異形を作る為に人を誘拐した話をしようか』
そう言って「フエ」はにっこりと笑った──
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