TS転生した恋愛感情が分からないダンピール~ヒロイン不在の乙女ゲームの世界で私は魔王になんてならないしハーレムも逆ハーレムも勘弁して!~

琴葉悠

文字の大きさ
上 下
46 / 49
子作りと子育てと巣立ちそして……~私、幸せです~

健やかに育つ~幸せを願う~

しおりを挟む



「カムイ」
「ロゼリア」
「イリアス」
 呼んだ順にカーラのダンピールの男児、フレアのダンピールの女児、最後がミスティの吸血鬼の男児の名前だ。
「いいこね」
「みんなぐっすり」
「というか寝てばかりよね……」
「そうそう、おっぱいあげたらすぐみんな眠ってしまうわ」
「アトリアの時は大変そうだったのに……」
「子どもにも差はありますから……」
 私はそう言って苦笑した。
 どうやら彼女達の子は手がかからない子達らしい。
「まま」
「まま」
「マルス、マリーロゼ」
 自分の名を呼ぶ我が子に近づき抱きかかえる。
「いい子だね」
 子ども達は私にぎゅっとしがみつく。
「よしよし」
「アトリア、子ども達は?」
「アルフォンス殿下」
「ぱぱ」
「ぱぱ」
 子ども達は私にしがみつきながらアルフォンス殿下を見る。
「そうだよ、パパですよ」
 アルフォンス殿下は近づき、子ども達の頬を撫でる。
 しばらくすると、国王陛下と王妃殿下が部屋を訪れた。
「アルフォンス、アトリア。私達の孫は元気かね?」
「はい、健やかです」
「はい、父上、義母上元気そうです」
 しかし、国王陛下が顔を見ようとすると、双子は顔を隠してしまった。
 めったに来ない国王陛下に人見知りを発動してしまったらしい。
「も、申し訳ございません、この子達人見知りが激しくて」
「貴方、仕事が忙しいのは分かるけど、もう少し顔を出した方がいいですよ」
 王妃様がそう言って、双子の顔を撫でると、双子は顔を見せきゃっきゃと笑った。
「ううむ、そうした方がいいな」
 国王陛下は困ったように笑った。
 私はそれにほっとする。
「アルフォンスとフェルミアが生まれた時も忙しくて顔をあまり見せなかったから二人に父と認識されるのに相当苦労したのを思い出す」
「なら、顔をだしましょうね」
「うむ」

 国王陛下や、王妃殿下、アルフォンス殿下は双子の遊び相手をしてくださった。

 その間、私は他の我が子達の様子に集中できた。
 他の我が子達はすやすや夢の中。
 三人はそのまま起こさないように部屋から出て行った。

 そして国王陛下と王妃殿下が居なくなり、アルフォンス殿下とセバスさんと双子の空間になる。
「おねむだね、やすもうね」
 遊び疲れて夢の中に入った双子をベッドに寝かせて、私は椅子に腰掛けるとアルフォンス殿下が近づいてきた。
「アルフォンス殿下、どうしたんです」
「うーん、中々言い出せなかったのだが、もう夫婦になって数年経つし子どももできたのだから、そろそろ私の事をアルフォンス『殿下』と呼ぶのを辞めてくれないでしょうか?」
「えっとそれはつまり……」
「アルフォンス、それだけでいいんです」
 長い間染みついた言葉だったものでうまく呼べるか不安だった。
「あ、アルフォンス……」
「有り難うございます、アトリア。何か私だけ殿下呼びだから線を引かれているように感じて……」
「大丈夫ですよ、アルフォンス殿下」
 セバスさんが微笑む。
「アトリア様がアルフォンス殿下と呼ぶのは横着みたいなものですからね、それで呼び慣れてしまって取るのがなんかできなかったそんな感じです」
「なるほど」
「ははは……」


 それからしばらくが達、子ども達が立って歩けるようになったころ。
「よぉ、アトリア!」
「義父さん」
「元気にしていた、アトリア」
「義母さん」
 義父と義母が遊びに来てくれた。
 この二人はしょっちゅう遊びに来てくれる。
「義兄さん達は?」
「相手を見つけないなら、領地を治める勉強をし直せ。と言ってさせている」
「義兄さん達……」
「あの子達まだ結婚相手見つけてないのよ、ダンピールとか吸血鬼だからいいものの、人間だったら養子を貰わねばならないじゃない」
「ははは……」
「あの馬鹿共『アトリアの子が生まれたならその子と結婚したい』とかも抜かすのだ、拳骨を喰らわせたが効果は無かった」
「オゥイエ」
 ガロウズ義兄さん達そんな事いってたの?
 もしそれ本気ならあと18年近くは時間がかかるよ⁇

 あ、吸血鬼とかダンピールには18年なんてあっという間か。

 人間ならともかく。

「じぃじ、ばぁば」
「じぃじ! ばぁば!」
 控えめなマリーロゼに対し、元気なマルス。
「おうおう、元気だなぁ、マルスは!」
「マリーロゼも可愛いこと」
 抱きかかえられ、嬉しそうにする双子。
 その姿は対照的だ。

 マルスはきゃっきゃとはしゃぎ。
 マリーロゼは控えめに笑ってしがみつく。

 この心地よい幸せを噛みしめてしまう。


 私は幸せになってもいいんだと思えるようになって以来、今の生活が楽しくなってきた。



「母様」
「母様」
「マルス、マリーロゼ」
 そして双子は六歳になった。
 私の母が体を壊した年。

 私が働き始めるようになった年。

「二人は幸せにおなりなさい」
 そう言って私は二人を抱きしめる。
「母様は幸せじゃないのですか?」
「ううん、幸せですよ」
「じゃあ、どうして……」
「お呪いのような言葉です、王族の子として生まれた貴方達は普通の子達と違う道を歩むこともあるでしょう、それでも、幸せにおなりなさい」
「はい、母様」
「はい、母様」
 二人は私に抱きつく。
「今日からはしばらく父様が一緒に寝てくれるそうですよ」
「珍しい、父様が」
「父様とかぁ、それってもしかしてこの間話してた僕たちに血のつながった妹か弟かできる話と関係ありますか?」
「マルス、聞いてたの?」
「やっぱり! でもその子は王族にはなれないって……」
「うん、レオン父様との子だからね」
「レオン父様は不器用だけど優しいよね」
「うん」
「僕楽しみ!」
「私も楽しみ!」
 二人はきゃっきゃとはしゃぎ出す。

 それを私は少しだけ複雑な気持ちで見つめていた。

──確執とかが起きないと良いのだけれども──

 そう願うしか私にはできなかた。

 その日の夜から私はレオンの寝室で過ごすことになった。
 二ヶ月後──

「妊娠しております」
「ありがとう、アトリア」
 レオンは珍しく微笑んでいった。
「いえ……」
 私ははにかんで否定した。
「……」
「アトリア」
「これから私から生まれてくる子が、不幸になるのではないかと不安なのです」
「安心しろ、それにだけはさせないと保証する」
「私もです、アトリア」
「アルフォンス……」
「俺もだアトリア」
「グレン……」
 励まされ、私の不安感はすっと消えていった。
『だいじょうぶ、あとりあおにいちゃんとそのこたちはしあわせになるの!』
 シルフィの元気な声が耳に響いた──





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

処理中です...