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幸せにおなりなさい~その言葉を受け止められず~
病気で寝込む~ほのかな温もり~
しおりを挟むその後、次期国王の伴侶によって王宮の抜本的改革が成されたという噂が流れた結果──
「アトリア殿下、お願いがあるのです。実は夫が──」
「アトリア殿下、お話が実は妻が──」
「私は相談役ではございませんー‼」
依頼が舞い込んできた。
今の私にソレを調べる能力も何もない。
が、レオンが。
「ちょうどいい、俺が調べよう」
「そうだね、レオンに任せよう」
乗り気なアルフォンス殿下がレオンにそう言うと彼は調査に乗り出した。
結果、修羅場が展開されまくった。
子どもが自分の子どもじゃなかったとか。
浮気相手と子どもを作ってたとかまぁ、色々ありすぎて語りきれない。
こんな泥沼を見せられたら私は幸せになれる気がより薄まっていた。
「アトリア、貴方幸せになれないって顔をしてるわよ」
カーラが私に言う。
「そうね、貴方最近色々大変な事態に巻き込まれてるから幸せになれる気がしないって顔をしてるわよ」
フレアも言う。
「言っておきますが、私達は皆で貴方を共有するという約定を結んでおります、ですから貴方が他の人に目移りしないようにするだけです」
ミスティが釘をさすように言ってきた。
「目移りというか、魅了されないかですかね。私、恋愛感情がわからないので」
「そうね、貴方が魅了されないか心配だわ」
「私達も気をつけなくてはね」
ミスティ達は魅了される事が多そうだ。
私は──まず無いだろう。
「アトリア殿下」
「はい?」
見知らぬ女学生に声をかけられる。
「この後一緒にお茶でもいかがですか?」
何か背筋にぞっと寒気がしたので私は。
「いいえ、結構です」
「そんなことおっしゃらずに……」
手を握ってきてしつこい! と思ってしまった。
「アトリアに何をしているのだね?」
「アルフォンス殿下」
「あ、アルフォンス殿下……」
「君、今魅了を使ったね?」
え?
魅了使ったの?
誰に?
「アトリアに」
嘘だぁ。
「ど、どうしてそのダンピールには効かないの⁈」
お、ぼろを出したぞ、さてはこの吸血鬼……
「吸血鬼至上主義の輩がまだいたか、君の家を捜索させてもらうよ」
アルフォンス殿下が指を鳴らすとレオンや他の暗部の方が女吸血鬼を連れて出て行ってしまった。
「アトリア大丈夫かい?」
アルフォンス殿下が私を抱きしめる。
「だ、大丈夫です、寒気がした程度ですので」
「何だって、急ぎ治療室へ!」
「?」
「ダンピール風邪ですね。魅了の悪影響ではないようです」
「そういえばなんか咳が出るなぁと……」
「ダンピール風邪⁈ 休みたまえ、セバスに面倒を見るように頼むから!」
「は、はぁ……」
そう言って咳をしながら屋敷に行くと慌てた様子のセバスさんが私に駆け寄ってきた。
私を抱きかかえ、寝室へ向かいベッドに寝かせる。
「あの、ダンピール風邪って……」
「ダンピールが引く風邪です。体な頑丈なダンピールが罹り熱を出すような風邪なので稀に死者が出ることもあるんです!」
「わぉ」
「このセバス、アトリア様の体が万全に治るまで誠心誠意看病させていただきます」
「あ、有り難うございます」
そして夜。
「う゛う゛~~づらい」
熱を出してうなっていた。
「アトリア様、こちらをお飲みください」
「有り難うございます……」
少し甘塩っぱい水だった。
「甘塩っぱい……」
「補水液と言って、体の不調の時飲むと良いとされる飲み物です」
「ありがとう……」
飲み終え、コップを置くと、セバスさんは私の体を拭いてから、新しいタオルを額に乗せてくれた。
そして横になる。
夜中、こふこふと、咳混んでいるとセバスさんがやってきた。
点滴のような器具に赤い液体が入っている。
「セバスさ……げぼっ……」
血を吐き出した。
セバスさんは私の腕に素早く針を複数本つなぎ、赤い液体──人間の血を注ぎ込んだ。
「ダンピール風邪がかなり悪化してますね、こんなに早く悪化するなんて何かあるはずです」
「そう、いえば、しらない女子学生が……」
「それです! ダンピール風邪の元は魔力感染と血液感染、魅了はただの囮、本当は貴方をダンピール風邪を感染させるため!」
へーダンピール風邪ってそういう感染なんだと思いながら、私はぼんやりしていた。
時折血を吐き出しながら、結構しんどい。
一週間ほど隔離され寝込むことになった、ファッキン。
「やっと治ったー!」
完治した時は泣きそうになった、それくらいしんどかったからだ。
血も何度も輸血を繰り返して、元の世界なら二度と献血にいけないだろうと思われる事態になった。
で、話として私にダンピール風邪を感染させた女子学生は依頼されて行ったらしい。
家に借金ができ、それをどうにかするべく奔放していたところ、私をダンピール風邪にして亡き者にするというのが出た。
最初は断ったが、金額に目がくらみ実行してしまったとのこと。
で、依頼主は吸血鬼至上主義者の貴族だった。
至上主義ってロクなのねぇなぁと思った。
財産没収と爵位返上、取り潰しの三コンボ決まったらしい。
女子学生は退学ということになった。
まぁそこは温情かなと思ったが、この学校を退学になるというのはよほどのことをしないとないらしく、就職や結婚にも影響があるからある意味詰んだことになる。
哀れ。
だが苦しみ抜いたのを考えると、ざまぁみろと思う。
そもそも借金の理由が兄のギャンブルというのが悲惨だが。
私は生涯ギャンブルはしないぞと心に誓った。
「ようやく、アトリアに触れられるなんて最高だよ」
「ちょっとアルフォンス殿下! 抜け駆けはなしですわ!」
アルフォンス殿下がベッドから起き上がった私を抱きしめると、代わる代わる皆私を抱きしめてくれた。
なんか心がほわっと温かくなるのを感じた。
「講義に一週間も出られませんでした……」
「大丈夫ですよ、アトリア。私達が教えますので」
「そうですわアトリア、私達が教えますわ」
という事で、教えて貰うことになった。
講義に復帰したところ指されることは無かった。
私がダンピール風邪で苦しんでいるというのは学校にも伝えられており、そこを考慮してくれたのだろう。
講義も復習の講義になっていた。
なんか二度手間かけさせちゃったみたいで申し訳ない。
「何か申し訳ないなぁ」
「どうしてだ?」
レオンの問いかけに私は答える。
「なんか私の所為でみんなに迷惑かけてるみたいで」
「そんなことはないぞ、お前以外にも体調不良の奴がいたらそいつの為に復習講義するしな」
「そ、そうなんだ」
「だから、深く悩むな」
ぽんと頭を撫でられる。
よく分からないけども、それがとても心地よかった──
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