TS転生した恋愛感情が分からないダンピール~ヒロイン不在の乙女ゲームの世界で私は魔王になんてならないしハーレムも逆ハーレムも勘弁して!~

琴葉悠

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魔の者~封印する宿命そして復讐の終わり~

魔の地を目指して出発!~色々不安が盛りだくさん~

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「では、出発しましょう」
「移動は?」
「徒歩です」
 ジゼルの言葉に全員引きつる。
「馬に乗って移動すると襲撃されたとき馬が逃げてしまいます、もしくは餌食に、なので徒歩で行きましょう」
 足吊りそうだなと思いながらそれに従う事に。

 王都を出て北へと向かう。
 鬱蒼と生い茂る森の中を歩く。
 徒歩での遠距離移動はきついなぁと思いながら歩いていると先行しているジゼルがストップをかけた。
 何事かと思い皆立ち止まる。

 ギャオオオン‼

 真っ黒な獣のような生き物がよだれを垂らしながらこちらに突撃してきた。
 体からは黒い煙のようなものを吹き出しながら。
「何ですの?」
「下がってください!」
 ジゼルに言われて下がる。
 するとジゼルは拳一撃をぶち当てた。

 じゅうううと音が鳴り、黒い色は無くなりよく見たら猪になっていた。

「さあ、行きなさい」

 ふごふごいいながら猪は別方向へと逃げていった。

「ジゼルさん、今のは一体」
「魔族の瘴気に浸食された動物ですね、浄化すればもどります」
「でも、その浄化は貴方達しかできないんでしょう?」
「そうなりますね」
 ジゼルはカーラに指摘されて、困ったように笑った。
「幸い私は飲食も、眠りも必要としませんから、皆さんの護衛をつきっきりでやらせて貰います」
「え、それ大丈夫ですか?」
 私は思わずジゼルに聞いてしまった。
「はい」
 ジゼルは何でもなさそうに言う。
「本当に?」
「本当です」
 しかし不安は残る。
「無理はしないで下さいね」
「勿論です」
 ジゼルはにこっと笑った。

 森で一泊し、そこからさらに進むと、黒い大地があった。
 気分が悪くなった。
結界オビジェ
 ジゼルがそう言うと、私達の周囲に半透明の膜が貼られた。
 足下の黒い部分も緑──草に変化していた。
「ここからは浄化しながら進んでいきます、私に遅れないように着いてきてください、遅れそうになったらすぐ言ってください」
 皆その言葉に頷き、ジゼルの後ろを着いて歩いて行った。

 しばらく歩き、夕暮れ時になると、広い草原地帯に出くわした。
「あ、居ました」
「?」
「アルフェ様──‼ オルフェ様──‼」
 二人の男女がいた。
 柔和に微笑む、金髪に青い目の女性。
 厳しい顔をした赤い髪に、赤い目の男性。
「ジゼル、よくここまで連れてきてくれましたね」
「はい、アルフェ様」
「予定外の事はあったが、ここで休憩してから明日向かうぞ」
「はい、オルフェ様」
 ガチガチに硬直する。
「魔王の運命に抗えし者よ」
「私、ですか?」
「その通りだ」
 オルフェ様の言葉に緊張する、だって熾天使だぜ⁈
「其方が決着をつけねばならぬ。そう言う運命さだめになってしまった事を謝罪する」
「いえ……」
 私は言葉を濁らせる。
 思い出せばヴァイエンが私を魔王にしようと犯してきた時からもうそうなる運命だったのだろう。
 魔王にならなかったが、魔王を生み出さない為のとどめを刺す人材として。

 ふと、シルフィが生きていたならどうなってただろうかと思った。
 シルフィが生きていたらきっと私は皆とこうならず、一人で姿を消して居ただろう。
 もしくは、魔王に成り果ててたかもしれない。

 シルフィが死んでからこの世界の物語は狂いだしたのかもしれない。

 そうなると私は──

『魔に抗えし者よ』
 頭に声が響く。

──は、はい!──
『ジゼルから事の次第は聞いた、其方はシルフィ・コルフォートが生きていたらの事をしっている事を』
──は、はいぃ──
『おそらく其方はシルフィ・コルフォートが死ぬ運命あるからこそアトリア・フォン・クロスレインになったのだろう、悲劇の連鎖を食い止める為に』
──悲劇の、連鎖──
『シルフィーゼ・コルフォートが悲劇を生み出すと予測した「何者」かが其方をアトリア・フォン・クロスレインにした、だから──』

『其方にはこの魔の悲劇に終わりをもたらして貰いたい』
──……はい──

 シルフィーゼ・コルフォートも私を同じ転生者だった。
 だから、ヒロインになるために、妹であるシルフィ・コルフォートを殺した。
 しかし、そうはならなかった。
 何故か、その「ヒロイン」のポジションに私が入ってしまったからである。
 彼女からしたら寝耳に水だったろう。
 だから奪おうとした、でも出来なかった。
 それどころか自分の悪事を暴かれる事態に、だから魔に唆されて魔王になって私達に敗れ、死んだ。

 私は魔王にされそうになったが、自力でそれにあらがい、ヴァイエンを殺して魔王化を防いだ。
 それで終わればよかったのだが。
 そうはならず、今回の事態に発展していた。

 私には責任がある。
 だからなんとしてでも果たさなければ。
 命に代えてでも。

「「「「「「アトリア」」」」」」
「ふぁい⁈」
 思わず声が出た。
 アルフォンス殿下にグレン、レオン、カーラ、フレア、ミスティ、六人全員が怒っている。
「アトリア、どうせ自分の命に代えてでも。なんて考えてらっしゃったでしょう!」
 カーラが怒鳴る。
「えっとそれは……」
 げ、見透かされてた。
「アトリア、私達は皆で帰るんです。その為に皆で来たのですから」
 アルフォンス殿下が私の頬を包み込む。
「でもですね」
「でももヴァンピレラもないですわ! 貴方は私達の愛する花婿にして花嫁、だから皆で帰ってお祝いするのですわ!」
 ミスティがぷんすこと怒りながら言う。
 でももへちまもないって言葉の代わりがでももヴァンピレラもない、なのか。
 とか思考をよそへやっていると──
「アトリア、お前は自己犠牲の癖が強すぎる、もう少し他人を、俺達を頼れ」
「グレン……」
「すまんが、そろそろ休んでくれないか? ここからが本番なのだから」
「は、はい!」
「了解しました」
 皆、食事を取り、毛布にくるまって目を閉じた──




「この者を殺せば済む話ではないというのが難しいな」
「オルフェ、そういう無慈悲な話は止めましょう、このこの今までの生は過酷だったのよ、それなのに魔王にならないと抗った、それを素晴らしいことだと評価しましょう」
 皆が寝静まった頃、物騒な事を言うオルフェにアルフェが苦言を呈する。
「オルフェ様、アトリアさんを、殺すんですか?」
 ジゼルが不安げにオルフェに尋ねる。
「殺しはせぬよ、ただ、上手くいくかが不安だ」
「それは私も同じよ、封印の剣を刺した時──」

「彼は強烈な殺意を憎悪と戦う羽目になるのだから──」

 アルフェは不安そうにアトリアを見つめた──





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