TS転生した恋愛感情が分からないダンピール~ヒロイン不在の乙女ゲームの世界で私は魔王になんてならないしハーレムも逆ハーレムも勘弁して!~

琴葉悠

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魔の者~封印する宿命そして復讐の終わり~

魔の者と天使~神様の願いと王様のぶっとび発言~

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「私の、全ての者への、復讐心?」
『うん、ヴァイエンはあんなかんじだったけど、ほんとうはすべてをほろぼしたいきもちでいっぱいだった、そしてそれをじぶんをうみだしたおにいちゃんにやらせることでじぶんのりょうほうのふくしゅうしんをみたそうとしたの』
「……」
『でも、おにいちゃんはのりこえた、ふくしゅうしたいあいてとたいめんしてしぬのもふせいだ』
「……乗り越えてなんか居ないよ」
『ううん、のりこえてるよ』
「……」
 復讐心を乗り越えたと言われてもピンと来ない。
 ただ、奴に本音をぶちまけただけだ。
『おにいちゃん』
「ん?」
 シルフィが声をかけてきた。
『おにいちゃんは、あいされているからだいじょうぶ、だからしんぱいしないで、しるふぃもまもってあげるし!』
「はは、有り難う」
『えへん!』
 くるりとシルフィは宙を舞う。
『じゃあまたあしたね、おにいちゃん!』
「うん、また明日」
 シルフィは居なくなる。
「しかし、結界を破壊してくる魔の者が現れたってことは相当ヤバいぞ」
 私はベッドに横になる。
「何か対策をとらないと……」
 と考えはするが、私はただの学生。
 対策を考えつくかと言われたら、聖女と魔法使いの方がたにどうにかしてもらうしか思いつかなかった。

 なのでさっさと寝た。

「昨日の結界が破られた件? ああ、魔法使いの数を増やして、聖女も聖女になった人材が増えたから数を増やして対応することになったよ」
 朝起きてアルフォンス殿下に尋ねるとある意味予想通りの答え。
「それと魔の者の文献が王家の書物から発見されてね」
「え?」
「どうやら、負の感情から生まれるらしい。憎しみ、嫉妬、怒り、そう言った物から生まれるようだ」
「……もしかして私の復讐心からも……」
「アトリア、そんなに気にする必要はないよ、君は復讐心を乗り越えたじゃないか」
「え?」
「クリス教授に、本音をぶつけた。君はそれ以降クリス教授に会っても自分の父を殺した先生とは言わなくなったじゃないか」
「……」
 言われてみれば、確かに言わなくなった。
 無関心になったのか、それとも──

 答えは分からない。

「長話もなんだし、食事にしよう」
 そういうことで食事に向かった。
「ジゼル・ローレンスだけど、ご両親もあったそうだよ、魔の者をたやすく浄化する能力の持ち主で、スカウトしたんだけど自分達のやり方があるからって王国への勧誘は断られたみたい」
「娘は学園に入学させたのに?」
「王都で魔の者の気配が頻繁に起こっていたから、念のため娘を王都へ派遣基学園生活をさせてあげたいみたいだよ」
「へー……」
 どんな天使なのやら。

 多分熾天使なんだろうけど。

 しかし、不安じゃ無いのかな。
 俗世にシルフィ基ジゼルが汚染されないとか。

 うーん、神様や天使様の考えてることは分からん!

 もやもやを抱えながら食事をしつつアルフォンス殿下やレオン、グレンと会話をする。


 講義を終えて、ジゼルの姿を探すがどこにもない。
 彼女は講義が終わると天使の姿に戻っているのだろうか?
 そんな事を考えながら、屋敷に戻ろうとすると、前回聞いたバリンと割れる音が響いた。

 また⁈

 衝撃音が聞こえてきた。

 地面には魔の者らしき存在が横たわっている。
 レオンが私をかばうように行動した直後、上からジゼルが降ってきて魔の者を下敷きにした。
 踏んだ。

 耳障りな声に思わず耳を塞いでしまう。
 ジゼルは光り輝く手、魔の者を貫き消滅させた。

「やっぱり集まってきてますね!」
 ジゼルは真顔でそう言った。
「集まってきているというのは……魔の者が⁈」
 レオンの言葉にジゼルは頷く。
「はい、目的確実にアトリアさんだと発覚しました」
「どうしてだ?」
「撃退しながら聞いたんですよ、魔の者は口が軽い者が多いですから」
「それで、なんと」
「二パターンあり、片方はアトリアさんを魔王に、もう片方はアトリアさんを喰らって魔王になる、ですね」
 どちらも御免被る。
「喰われるというのはどういう意味でだ?」
「性的な意味と捕食両方ですね」
 喰われるほうがもっと嫌だ!

「結界が薄くなりやすい天井部に魔の者が集まって結界に穴が空く度に一匹ずつ侵入してきていますね」
「何だと⁈」
「ですので、私はまた魔の者を排除しに戻ります」
 そう言ってジゼルは天井部へと飛び上がっていった。
「どんな身体能力なんだ⁈」
 レオンが驚きの声を発する。

 だって、天使ですもん。

 などとは言えず、私も驚いた顔をするだけだった。
「……とりあえず、アルフォンス殿下と職員の方々に報告に行きましょうか?」
「そうだな、それがいい」
 そのまま屋敷に戻り私はアルフォンス殿下に、レオンは学園に戻り職員の方々に連絡した。
 アルフォンス殿下はすぐに王室に伝え、状況把握したところ、その通りだったと。
 で、びっくりなのは、結界を足場にしてジゼルが戦ってるってのがみんなびっくり案件。

 天使ってなんでもありなのね。

 竜騎兵の精鋭が、ドラゴンに乗って空を飛んで魔の者の対峙に出たが、聞いたところによると、ジゼルの独壇場でほとんど見ているだけだったという。

「ジゼル・ローレンス。其方は本当に人間なのか?」
「人間ではあのような動きはできん、だがダンピールの匂いも吸血鬼の匂いもしない、人間の匂いもな」

 王室に彼女は呼び出された。
 私も何故か呼び出された。
 ジゼルは笑って言った。

「私は天使です。神の遣いです」

 場がざわめく。

「何故神の使いが、我らの国に?」
「魔王を呼び起こす呼び水があるからです」
「それはアトリア・フォン・クロスレインですか」
「はいアトリア・フォン・クロスレイン。彼が魔王になるか、もしくは魔王を生み出すかそのような存在だからです」
「聞きたい事があります、何故聖ディオン王国が滅びるのを眺めていたのです神は」
「神はその時まで何らかの干渉をする力を失っておりました」
「何故ですか」
「聖ディオン王国、かの国が神の教えと願いに背き続けていたからです」
「その神の教えと願いとは……」
「あらゆる種族が共存し、平和に暮らすことです」
「……」
「唯一背いていないのはこの国だけ、故に他国は滅びの一途をたどっております」
 国王陛下は涙を流した。
「私の願いは間違っていなかったのですね」
「その通りです」
 ジゼルは静かに目を閉じた。

「ですが、アトリア・フォン・クロスレインが一時的に魔王化したことによりこの国は危機に瀕しています、その危機から国とアトリア・フォン・クロスレインを守る為に神から使わされました」
「では其方の両親を名乗った二人というのは……」
「熾天使アルフェ、熾天使オルフェの二人です。二人は魔の地へと赴き瘴気の浄化を行っています、あなた方が自分達で片付けられるようにと」
「さすがに全てはしてくれないですか。強欲すぎました、すみませぬ。分かりました、我らは我らの出来ることをしましょう」
 長々とした話が漸く終わりそうだ、私は何で呼び出されたんだ?
 とか思っていると──
「アトリア・フォン・クロスレイン」
「は、はい‼」
「其方の事情は全て息子から聞いている、辛い境遇であったな」
「その、確かにそうでしたが……皆様に大切にされているので、なんとかなってます」
 しどろもどろに答える。
 冷や汗が止まらない。
「余から提案があるのだが」
「えっと、何でしょうか?」
「式を挙げてはどうだろうか」
「はいー⁈」
 王様のぶっ飛んだ発言に私は叫んでしまった。




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