TS転生した恋愛感情が分からないダンピール~ヒロイン不在の乙女ゲームの世界で私は魔王になんてならないしハーレムも逆ハーレムも勘弁して!~

琴葉悠

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家族を失う~それでも支えられて魔王の運命に抗う~

魔王誕生~ヒロイン不在の謎解明と転生者~

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 その後も、結界を強めたはずらしいがヴァイエンは私が一人になると姿を現してきた。
 そのたびにブザーらしきもの……もうブザーでいいや。
 ブザーを鳴らして撃退した。
 同時にレイナさんも現れ、ヴァイエンを殴るなどしていた。
 相当恨みがあるらしい。
 レイナさんも犯されそうになったことが一度や二度ではないそうだ。
 それとファーストキスまで奪われそうになったとか。
 乙女時代を踏みにじられた怒りは強いなと感じてしまった。
 まぁ、私も似たようなものだったなぁと、レイナさんに言うとレイナさんに抱きしめられた。

 レイナさんが加わって少しずつ、味覚も戻ってきている。
 六人のおかげもあるけども。

 ただまぁ──

「アルフォンス殿下達の寵愛を受けているというのは貴方⁈」
 きつい感じの女性が絡んでくるようになった。
「ただの平民のダンピールの分際で、アルフォンス殿下達の寵愛を受けるなんて許せませんわ‼」
 取り巻きもいるので関わりたくない。
 正直逃げたい。
「シルフィーゼ令嬢、私の婚約者に何を言っているのだね?」
「アルフォンス殿下⁈」
 六人が怒り心頭といった表情で令嬢と取り巻きを見る。
「ただの平民とは、私の母上を侮辱しているともとれるのだが?」
「い、いいえそんな事は……‼」
「金輪際私達には、いやアトリアには関わらないで貰おう! それが出来ないなら法廷で会おう」
「っ……‼」
 と、何度脅してもやってくるその鳥頭には哀れみさえ感じます。
「やれやれ、これではコルフォート男爵も可哀想なものだ」
 え。
「殿下、今なんと」
「コルフォート男爵。シルフィーゼ冷蔵の父親だよ」
 まさか、まさか。
「……殿下、お願いがございます」
「何だね?」
「コルフォート男爵に、シルフィという娘が居なかったか調べて欲しいのです」
「不思議な事を言い出すね……でもいいだろう、君のその不思議なところも魅力の一つだ」
「有り難うございます」
 私は胸に嫌な予感を抱えて連絡を待つことにした。


 それから次の休日。
「調査させて貰ったけど、アトリア、君の言う通りシルフィというシルフィーゼの双子の妹が居たそうだよ」
「居た?」
「幼い頃に亡くなっているようだ、シルフィーゼが言うには花をとろうとして崖から落ちたそうだ……賢いシルフィがそんな事をするはずがないと今でも両親は言って居た……」
「殿下」
「何だね」
「崖から落とされた・・・・・ならどうなります」
「……もしそうなら犯人は一人しかいないね」
「つまり──」
「シルフィーゼが双子の妹を殺したのよ」
「でも何のために?」
「もう一度、再調査をしよう。王国の魔法使いを呼んで事件の再調査だ」
「はい」


 それから二週間後、結果は出た。
 シルフィは崖から姉に突き落とされて死亡した事が発覚した。
 それを発覚したことを報告するとコルフォート男爵と夫人は信じられないという顔と、もしやという顔をしていた。
 話を聞くと、シルフィーゼはシルフィに強く当たり、毛嫌いしていたそうだ。
 そんな姉でもシルフィは純粋に慕っていたそうだ。
 もし、普段毛嫌いしている姉が急に優しくしてきたら?
 幼いシルフィがそれに気づくかどうかは分からないが気づかなかったとしたら?

 それなら、事件は起こる。


 学園の法廷部屋にシルフィーゼ・コルフォートは呼び出された。
「何なんですの⁈ 私は何もしていませんわ‼」
「シルフィーゼ・コルフォート、其方を妹シルフィ・コルフォートを殺害した罪で処刑する」
 シルフィーゼの顔が驚愕に変わる。
「い、妹は自分から落ちたのですわ‼」
「国の魔法使いの再現魔法でお前が突き落とすのが映像として残っている」

 映像が表示される。
『おねえさま、やめてやめて!』
『うるさい、アンタがしねばわたしがヒロインになるのよ!』

 その言葉で分かった。
 彼女も転生者だ。
 しかもなんて身勝手な転生者だ。
 そして私はヒロインがいない理由を知る。
 ヒロインは殺されていたのだ、この学園に入学することなく。

「う、うう! そうよ! あの子がいなければ私がヒロインなはずなのに、どうしてアンタがヒロインのように扱われているのよ!」

 そうかだからか。
 だから今度は私の命を狙おうとしてきたのか。
 そのナイフで。

 シルフィーゼはナイフを私に向けてきたがアルフォンス殿下がたたき落とした。
「この者を連れて──」
 言い終わる前にシルフィーゼは逃げ出した。
「待て!」
「待ちなさいシルフィーゼ!」
「待つんだシルフィーゼ!」
 父母が呼んでも足を止めずシルフィーゼは逃げ出した。




 学園から離れ、シルフィーゼは息を整えながら物陰に隠れる。
「どうして、どうしてバレたのよ⁈」

「一体誰が……」

『アトリア・フォン・クロスレインだよ』
「誰⁈」
 魔の者が姿を現す。
「ヴァイエンと申します」
「も、もしかして魔の者⁈」
「ええ」
 シルフィーゼは困惑した。
 魔の者はアトリアに執着しているはずだと。
「貴方アトリアに執着しているんじゃなくって⁈」
「そうなのですが、断られて最近は反撃も覚えられましてね……」
 ヴァイエンはそう言って肩をすくめた。
「貴方の強欲、なかなかの代物だ。魔王にふさわしい」
「だ、誰が魔王になんて──」
「でも、今の貴方は捕まれば処刑、生きる為の道は魔王になるしかないのですよ?」
「……」
 シルフィーゼは考えて、にたりと笑った。
「いいわ、魔王になってあげる」
「感謝いたします」




「魔王が復活しただと⁈」
 アルフォンス殿下の元に王宮から使いが来た。
「魔王は自分を魔王シルフィーゼと名乗っているようで……」
「シルフィーゼ……‼」
「処刑から逃れる為に魔王になったか‼」
「聖ディオン王国は魔王を滅ぼす為に国の騎士達を派遣し壊滅されたとのことです。そして国も……」
「どうしたらいい⁈」
 魔王になったシルフィーゼの力は強大だ。
 このままでは国が滅ぶ。
 ならば──
「殿下私が行きます」
「「「「「「アトリア⁈」」」」」」
 六人が超えをあげる。
「元はと言えば私が魔の者に狙われたのがきっかけですし、シルフィーゼが逃げる原因を作ったのも私にあります」
「アトリア……ならば共に行こう」
「ああ、そうだな」
「無論だ」
「勿論ですわ」
「当然ですわ!」
「ぶっ飛ばして差し上げますわ!」

 私は魔王にならなかったが、別の者が魔王になった。
 ならば、責任は私がとらなくてはならない。
 それに六人を巻き込むのは気が引けるけど……





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