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依存しあう「獣」と王

幸せな時間、寂しい時間

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 マティアスは濁った喘ぎ声を上げ続けながら、シーツを掴み、枕を唾液で汚し、だらだらと雄から精液を吐き出しながら、二つの箇所を責められる快感によがっていた。
 ブレイドとの性行為で快感を感じやすく、敏感になっている二つの箇所を同時に責められることで生まれる快感は普段よりも暴力的で苦しいものだった。
 気持ち良すぎて、苦しいのだ。
 同時に絶頂にのぼらされたり、絶頂した直後に別の方が絶頂したりと、酷く気持ちよくて苦しいのだ。
 けれども――

――ああ、しあわせ、だ――

 マティアスは歪な多幸感を感じていた。
 膣内もブレイドの雄で貫いて、突いてほしいが、ブレイドの雄は一つしかない。
 けれども、ブレイドが選んだ道具で、貫かれて、ブレイドの指示で動くソレに犯されるのは彼に体を好きなようにされている気がして幸せだった。
 それに、ナカに零れる程注いでもらった精液が零れない様に栓の働きをしてくれる、精液で満たされたままなのが嬉しくてたまらなかった。
 そしてもう一つ――後孔を貫いて、腸内を突いて、奥まで刺激を与えてくれて、たくさん精液を腸内に出してくれている。
 精液を出され、腸内に精液が溜まる感触が気持ちいい、心地よい。
 ただ残念なのは、膣内は精液を溜めて置いても問題がないのに、腸内は精液を長く溜めれないと言う事だ、腸内の元からの性質が時間が経つと精液を異物判断して排出したがってしまう。
 膣内は問題はないのだが、新しい種を欲しがるのかしばらくすると排出してしまう。

――両方とも精液を吸収出来たらいいのに……――

 できっこない願望をマティアスは抱いた。
 残念ながらマティアスの体は生殖器が女性の物と男性の物両方ついていて、見た目がほぼ男性なところ以外、人型の種族と変わらないのだ。
 精液を主食とする、もしくは吸収できるのは淫魔や、特定の触手生物、人型の生物に卵を産み付けるような生物くらいだ。
 別に淫魔になりたい訳ではないし、触手生物になりたい訳でもないし、そういう生物になりたいわけではない。
 折角両方のナカにたくさん注いでもらった精液を排出するのが寂しいのだ、何もナカに溜まっていない時間があるのが切なくてたまらないのだ。

 ずるりと雄が抜かれる。
「あ……」
 マティアスにはそれが酷く寂しく、切なく感じられた。
 腹のナカに出された精液がしまうような気がして、ナカが寂しくて、自分の指を腹のナカに挿れる。
「やれやれ、本当に我儘で欲張りな王サマだな、アンタは」
 楽し気に笑うようなブレイドの声にぞくぞくとした。
 手を掴まれ、指を抜かれる。
「ほら、こっちも抜くぞ」
「あ、や、まっ……んぅぅ!!」
 ずるぅと膣内に収まっていた物を抜かれる、どろりと精液が零れだすのが分かった。

――嗚呼、零れてしまう――

 せっかくナカを満たしていた精液が零れていく感覚にマティアスは悲しくなった。

「――それにしても中々孕まねぇな。……まぁ今孕むと騒動じゃすまな……ん?」
 マティアスの下腹部を撫でていたブレイドが、何か違和感を覚えたような表情を浮かべた。
「……ブレイド……?」
「……」
 ブレイドは黙っている、目がいつもよりも赤く、何処か禍々しい光を宿しているように見えた。
「ブレイド……?」
「――あぁ、いや、何でもねぇよ。まぁいい、孕むまで出してやるつもりだし、身ごもっても赤子に影響が出ない様に愛でてやる、産んだら――まぁ、その時だけ女の方はしばらくお預けだな、アンタの体が病気になりかねない。傷つくだろうしな。その分後ろの方でその分たっぷり愛でてやるから」
 下腹部から手を離して、いつもの目に戻ったブレイドはそう言いながらマティアスの頬を撫でてきた。
 それらの言葉と頬を撫でる感触に、マティアスは幸福感を感じつつ、暴力的な快感と絶頂が連続の性行為で体が疲れ切ってしまっているのか、そのまま目を閉じ、眠りに落ちた。




 眠ってしまったマティアスの頬を愛おしそうに撫で、何処か幸せそうな笑みを浮かべている彼を見て、ブレイドはそっと唇に口づけをしてから、毛布をかけてやり、昨日と同じように、下着を「王」の時に着る衣装の上に置いて、マティアスの寝室を後にした。
 自分の部屋に戻ると、ブレイドは椅子に腰を掛け、テーブルを叩いた。
 テーブルを壊してしまう程の力で叩きたかったが、それらをぐっと押さえ込んでいた。
「……」
 ぎりっと唇を噛む。

 ブレイドがマティアスの二つの生殖器官はある加護があった、だがそれは加護というより「呪い」と言った方が正しい物だった。
 どちらも、「子を成す」ことを妨害するようなものだったのだ。
 マティアスが仮に女を抱いたとしても、孕ませることは非常に難しく、またマティアスの女の生殖器官に精液をどれだけ何度注ごうがマティアスが孕むことは非常に難しいのだ。
 だが、どちらもその加護はマティアスが「使命」を果たせば消えるのが分かった。
 マティアスを作った神様がその後マティアスをどうするか、ブレイドは何となく想像できた、そしてその内容に非常に怒りを覚えた。
「――ああ、良いぜ。腐れ神共、呪ってやる化け物と呼ばれた俺がお前らからマティアスを奪ってやる、渡してやるものか、テメェらに地べたを這いつくばらせてやる」

 ブレイドの赤い目が、禍々しい呪いの色に染まる。

「テメェらを産んだ『この世界』がお前ら含めて全員を『呪った』から生まれた俺だ、世界の維持のためにとか好き勝手やってきた報いと、マティアスを都合のいい道具扱いしてることを――後悔させてやる、場合によっては皆殺しだ」

 ブレイドは笑みを浮かべた。

――嗚呼、俺の「呪い」はマシだな、「世界」の「呪い」は残酷だがまだまともだ――
――俺の「呪い」は死ぬまで解けないだろう――
――だが、「世界」は俺に自由を与えている、神々への報復後も「呪い」は解けない、だがそれ以外は自由だ――
――俺が誰かを愛することも、子を身ごもらせることも、俺が安住の地を見つけることも、許されている――
――俺に「呪い」を宿させた「世界」はマティアスを縛り付ける神々みたくなりたくなかったんだろうな!!――

 ブレイドは自分に「呪い」を宿させた「世界」に初めて感謝しながら、鞄を手に取り、鞄の中に手を入れた。
 ただマティアスが「使命」を果たすまで待つのは、神々の手のひらで踊らされている感じがして嫌だった、だから自分なりに今から反抗してやろうと決めたのだ。
 鞄から、先端のない針のようになっており、そこから管が繋がっており、管の先は何か小さな筒のような物と繋がっている魔道具が出てきた。
 女に己の血液を加工して注入する魔道具だ。
 他人に血液を注入する行為は危険とされているただ、これは少し特殊だ、理由の一つは注入する箇所は女性器――針のような部分は子宮迄伸びる、そして子宮に加工し特殊な液体と混ぜた血液で子宮を満たし、一定期間液体が出ないよう時間経過で消える栓を子宮口にして子宮口を液体でいっぱいにするのだ。
 その液体は子の卵を作る器官に卵を作り、それを排出するように促す作用がある。
 他の者の血液では効果はないだろうが神の「加護」を砕くマティアスの「呪い」を含んだ血液なら別だ。
 加工し特殊な液体と混ぜた程度では消えない。
 ただ、すぐに孕ませれるようになるわけではないのも、マティアスは分かっていた。
 だからその間は大人しく「神々」の「望み」である、「世界の滅亡の阻止」を叶えてはやるつもりだ。

 その代償として、彼らからは良い道具として扱われているマティアスを貰う。

 自分の子どもを身ごもらせ、マティアスの事を知らぬ土地へと逃げる、逃げる手段は既に持っている、身ごもって動けなくなるであろう、マティアスを連れて移動する、移動手段を「召喚」することは可能だ。
 誰も追いつけないだろう、アレを使って移動できるのは世界が「呪い」を与えたブレイド位のみの存在だ。

――まぁ、その時「妨害」してくるだろう、見せつけてやる――

 ブレイドは分かり切っていた。
 マティアスは神々の「使命」に従っている、だがその心はもう既に。
 神の物ではなく、ブレイドの物になっているのだ。
 何か言ったところで、「使命」を果たしたマティアスには、届かないだろう。
 ブレイドの物になることに悦び、その幸福を手放せなくなって、依存しているマティアスには、決して。




 マティアスは目を覚ました。
 ブレイドに抱かれて後意識を失うように眠った時起きる時間帯、そうでなかった時と比べると遅い時間帯。
 でも自分の時間はある、着替えようかと思って毛布をどけると、己のナカから出たのであろう精液がまだ湿った状態でシーツに付着していた。

――ああ、勿体ない――

 マティアスまだ湿って残っているそれらを舌で舐めた。
 ふとシーツに残る、ブレイドの香りに気づく。
 その香りに夢中になる。
 昨夜の行為で頭が一杯になる、体が熱を孕む。
 今日は「王」としての職務がある、それが酷く鬱陶しかった。
 そして「神々」からの「使命」もまだ果たしていない、だがその「使命」すらも鬱陶しくなっていた。

 それらが無ければ、自分はブレイドの「物」としてずっと愛でてもらえる。

 けれども、それらを今やらなければ、きっと邪魔をしてくる。
 そんな予想に憂鬱を感じながら、マティアスは名残惜しそうにベッドから離れた。
 そして着替えを見て、笑みを浮かべる。
 昨日同様あの下着が置かれてあったのだ。
 ずっと「命令」に従っている状態に浸れる幸福感に笑みを浮かべながら、その下着を履いた。
 腸内と膣内に、男根を模したものが入り、収まる。
 両方のナカがきゅんきゅんと疼く。
 下腹部を愛おし気に撫でてから、「王」の衣装と装飾品を身にまとい、魔力で角をつける。
 そして部屋を出て行った。

「――国の行動が目に余る、兵を出し、陥落させよ」
 マティアスは「王」としての言葉を言いながら、心の中で酷い寂しさを感じていた。
 快楽に浸りきってて忘れていたのだ、今日は兵達を「滅びを招いている国」に侵攻させる――つまりその間ブレイドは城からいなくなることに。

――怖い、寂しい、切ない、一人の夜は嫌だ――

 必死にそれらを隠して命令の言葉を口にし続ける。
 配下の物は皆従うように頭を垂れるなか、闇色の甲冑で顔の見えないブレイドが少しだけ顔を上げたのがマティアスの目に入った。
 顔は、見えないはず、なのにはっきりと見えていた、笑っているブレイドの顔が。

『安心しろ、見えてるのはお前だけだ、聞こえているのも』

 ブレイドの声に、心臓が高鳴る、下腹部が疼く。

『一週間で終わらせてやる、それまでイイコにしてな? たっぷり愛してやるから』

 顔は見えなくなり、声も聞こえなくなった。
 自分以外の者が退出すると、マティアスは熱っぽい息を吐き顔を覆った。
「ああ、いい子に、しているから、早く帰ってきてくれ。私はお前がいない時が苦しくて、寂しくて、切なくて、不安で、仕方ないのだ――」
 自分の傍にいない事への心情を吐き出す、その言葉を聞く者は誰もいなかった。





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