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この壊れた世界で
想定外の行動、正論、苛むもの
しおりを挟む「ひぎぃあ゛あ゛!」
突起のついた玩具で腸内を嬲られる感触に、ルミエールは苦鳴を上げ、シーツを掴んでいた。
顔は恐怖の色に染まり、涙や鼻水や唾液でぐちゃぐちゃになっていた。
体は腸壁に刺激を与える玩具を悦んで締め付けて快楽を得ていたが、「突起物のある物体に犯される」という行為がルミエールに「罰」での事を思い出させて、それが頭がないはずの激痛を感じさせた。
その為ルミエールの雄は完全に縮んでいた。
女性器には触手が張り付いて、そちらも強い快感を生み出しているのだが、頭が存在しない「激痛」を強く感じてそちらの快楽も感じれぬほどだった。
――痛い、痛い、怖い、ゆるし、てくだ、さ、い――
気絶する事も許されず、ルミエールは徐々に突起物が小さい物に変わっていく物体に後孔を貫かれ、腸内を嬲られ続け、声も発せぬ程になっていた。
勃起どころか縮んでしまっている雄からは「体」の反応として精液が零れていたが、快楽はそこにはなかった。
今は突起物はつかずただの「雄を模した物体」で貫かれているのに、ルミエールの頭は「後孔を貫き、腸内を犯す物」で激痛を「感じる」様になるほど悪化していた。
頭が知覚したあるはずのない「激痛」と「苦しさ」に、ルミエールの体は限界を遥かに超えていた。
「……」
ラースはずるっとルミエールの後孔から性玩具を抜く。
喘ぎ声ではなく、苦鳴ばかり上げ、許しを、慈悲を求め、最終的には何も言えなくなった我が子を見る。
ラースの予想とは違う状態になっているルミエールを抱き起こし、ローブを着せる。
意識はかろうじてある、が目の焦点はあっていない。
顔は涙や鼻水、唾液でぐちゃぐちゃになっており、表情もどう見ても快楽による絶頂ではなく、激痛で失神しかけている者のソレと似ていた。
その顔をフードで隠し、ルミエールを抱きかかえて部屋を後にした。
魔の光のみで照らされる空間――あの生き物がいる、一番奥の空間の鉄格子の扉を開けて、ラースが足を踏み入れると同時に、触手が無数に伸びてきてルミエールのフードをはぐと同時にルミエールを抱えてそのまま奥へと連れていき、いつもとは異なる状態で閉じ込めてしまった。
「おい、何のつもり――」
柔らかな触手ではない、明らかにこちらに近づかせないように硬く彼らが苦手とする「炎」にも耐えうる特別な触手で檻を作り、ラースを近づかせない様にしてきた。
その間から細い触手がするりと伸びてきてラースの頬をひっぱたいた。
「⁈」
予想外の行動にラースは混乱する。
今まで、この生き物がこんなことをしてきたことは一度も無かったのだ。
檻に関しては、あまりに愚者への対応の多さに一時期「しばらく休ませろ!!」という意味合いでやったことはあったが、自分を殴るような事はしなかった。
その生き物が、自分を殴ったのだ、その上かなり怒りをあらわにしている。
「一体何だと――……何、この子の事全然考えていないお前のいう事はしばらく聞かない? トラウマをより悪化させるような馬鹿につける薬でも作ってもらえと? おい、貴様どういう――何だと?」
触手の「言葉」にラースは眉をひそめた。
触手の言葉はこうだ。
『お前が前、おそらく棘付きの何かでこの子の腹を酷く傷つく程、人型なら死に至る程犯して劇薬を使用した結果、この子は後ろの方での行為に恐怖心を抱いてしまっている。その状態だから私達はこの子が意識がある時は命令違反なのは承知だが、其処に触れるのを止めて、この子の恐怖心が無くなるまで治療の方を優先してきた。な、の、にお前という奴は、その努力台無しにするような真似した挙句、悪化させるような事までしやがって、ふざけてるのか?! なにが王だ、愚者ならともかく、こんな怯えている子に酷いことばかりするお前がその態度を改めるまで私はこの子は渡さん、しばらく反省しろ、この大馬鹿王が!!』
「~~!!」
触手の「言葉」基、正論にラースは反論することもできず歯を食いしばる。
ルミエールが急に逃げ出そうとしたのに対して「罰」は与えた、人型の物達なら死ぬ、自分の血を引いていなければ死ぬような「罰」を。
その後治療させたが、触手が「治療したけどしばらくそこ使用するな、精神的にかなり傷を負っているから」と忠告していたのを今更ながら思い出す。
この生き物はラースに対して基本従う存在だ、文句や説教や、休みをよこせと言ってくることはあった。
その生き物が、主であり歯向かったら死ぬかもしれないというのに、そんな事に恐怖せず、ルミエールを、その生き物にとって魔の血を引く者ということしか分からぬ存在守ろうとしているのだ。
ラースの頭が痛んだ。
今は亡き最愛の妻の姿が頭を過る。
亡き妻が自分を咎める声が聞こえた。
「ガアアアアアアア!!」
ラースは触手の檻を引きちぎってから、頭を抱えてその場に蹲る。
荒い呼吸を繰り返し、脂汗を額ににじませる。
檻を引きちぎる際に一緒にちぎられた細い触手は地面に落ちて溶け、その代わりに別の細い触手が伸びてきた。
引きちぎられた触手の檻がまた復元されていく。
「……わかった、しばらく、お前に、任せる」
ラースはそう言って額を抑えながら立ち上がり、その場を後にしていった。
触手はそれを見送ると戻っていった。
ルミエールは何かに包まれ、口に何かが入って来て液体が注がれると激痛や苦しみが無くなり、漸く眠りに落ちることができた。
夢を見た、顔の見えない、女性の夢。
傷ついたルミエールを、女性は頭を撫でて抱きしめてくれた。
ルミエールは女性が誰なのか分からない、ただ、優しくて温かい存在なのはわかった。
夢なのは分かってる、そんな女性どこにもいないのだ。
でも、その夢から目覚めたくないといつも以上にルミエールは願いながら、夢の中だからこそ女性に甘えた。
「……わかった、それでよい。下がれ」
配下達と、やり取りとしながらも、ラースは苛立っていた。
「……我らが王、いかがいたしました? 愚者共はもう、貴方様に歯向かうような者を出すことはないはずです」
「……分かっておる、すまぬ。今日もう休ませてもらう」
「あまり無理はしないでくださいませ、貴方様は傷つけられ続けた御方なのですから」
配下の言葉に、ラースの心を鎮めるようなものではなかった。
苛立ちを悪化させるものだった。
だがそのような配下を殺すような愚行をするほどラースの精神は追い込まれていない。
ラースはぐっと堪え、言葉を返すこともなくその場を立ち去った。
あれ三ヶ月が経過したが、あの生き物は未だルミエールを返す気配を見せない。
あの生き物の治療の結果またルミエールが「逃げ出す」ような事をするのではないかという危惧はないわけではない。
だが、それ以上に、ラースはルミエールに触れられぬ現状に耐えがたくなっていた。
ラースは自覚なしに、ルミエールに我が子に依存していたのだ。
様々な事柄が、ラースの心に傷を負わせた結果、ラースの精神はもう戻れないほどに歪に歪み、狂愛と依存で満たされていた。
王の時はそれは表にはでないが、ルミエールに対してはそれは表に出て、ルミエールの心を苛み苦しめて行ったが、ラースは気づかない。
今回の事も、あの生き物の所に連れて行ってなければ、あの生き物が言わなければ気づかない程に。
ラースは部屋に戻り、ベッドに腰を掛けため息をついた。
三ヶ月ならベッドに横になっているであろう、ルミエールの姿がないのだ。
ルミエールを抱きたいと強い欲望がぐるぐるとラースを苛む。
今のラースはルミエール以外の者を抱くことができない、抱く気分になれない為発散できずにそれがラースを苛立たせる。
己の部屋なのに、気持ちが休まらず、ラースは部屋を出て行った。
城の外に出て、自分しか知らぬ場所に向かう。
巨大な結晶の棺があるひらけた花畑。
ラースは結晶の棺に近づき、二度と目覚めることのない妻――アリアドネに近づく。
結晶に手をのばし、撫でる。
アリアドネの顔は穏やかな表情をしている。
使い魔が見つけ、連れてきたとき、アリアドネはもう息絶えていた。
明らかに苦痛を伴うような深い傷跡があったのに、アリアドネは穏やかな表情をしていた、まるで眠るかのように、幸せな夢を見るのが分かっているかのように。
その穏やかな表情がラースを苦しめた、アリアドネが最後に何を見たのかは分からない。
――何故、そんな顔で死ねるのだ、お前は年老いて死んだのでもない、病気でもない、そうお前の事を良く思わぬ愚者共の手によって殺されたというのに、何故だ!!――
それ故、ラースは神を堕とし、世界も屈服させ、自分に歯向かう者達に絶望か死の何れかを与えた。
結果、世界は変わった。
今ではもう、ラースを迫害しようと、殺そうとするものは何処にもいない。
「ああ、もっと、早くこうしていれば良かった……そうすればお前をあのような形で失わずに済んだのに……」
ラースはそう呟くと、目から涙を流しそれは地面に落ちた。
しばらくそうしてからラースはその場を立ち去った。
以前より遥かに良くなったとは言え、長居をすると憎悪と怒りで思考がぐちゃぐちゃになるため、ラースは足早にその場を後にした。
城に戻ると、あの生き物のいる場所へと向かった。
ルミエールの姿を見たい、触れたい、抱きたい、そんな感情を抱きながら。
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