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壊れゆく貴公子

予想せぬ事態

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 魔の光がともる、牢屋のような場所で、ルミエールは触手に再び体を嬲られていた。
 人型の女なら子を宿せるようになった証でもある「血の祝い」の期間が一旦終わったからだ。
 嬲り方も以前と変わっていた。

「っう゛~~!!」
 両胸、男性器、腸内、陰核、腹側からの子宮への責めは変わらなかったが、女性器のナカへの責めがより激しくなっていた。
 最初は子宮口を情交などでは決してできない責め方で、しつこく、責められるのだ。
 押しつぶすという行為ではない、まるでしゃぶりつき、広げ、柔らかくしようとするかの如く責める。
 今までの嬲りで敏感になった子宮口はそれで酷い快感と絶頂に襲われる。
「~~~~!!」
 開放された両腕も、触手に拘束されている為、どうすることもできずルミエールは喘ぐ。

 触手が体を拘束してなかったら冷たい床に倒れ込んでいる程の絶頂だった。

 その絶頂に合わせて、陰核は舐るようにしゃぶられ、擦られ、潰され、両胸は強く吸われ、腸内は前立腺と、腸壁越しに子宮へ刺激を与えられ、感じられるようになった箇所まで貫かれ、そして抜かれるのと同時に腸壁を刺激され、度の過ぎる快感と絶頂の繰り返しに発狂しそうだった。

 けれど、それは決して起きない。

 ルミエールは予想ができた、触手がルミエールに飲ませる体液、これがルミエールの発狂を防いでいるのだと、救いでもあったが苦痛でもあった。
 苦しいとしか言えない程の快感と絶頂に、意識が飛ばないというのはその分苦痛を味わうことであった。
 触手による嬲りの時は早く意識を飛ぶことをルミエールは祈ってしまう。

「っぐ~~~~!!」
 目を固く閉じ、やってきた更に奥――子宮への直の責めにルミエールはガタガタと震えた。
 子の「ゆりかご」である胎に相当する部分、本来なら快楽など感じない可能性が高いと思われる場所なのに、酷い快感を感じていた。
 それどころか子宮よりもっと深い場所も何か刺激を与えられ酷い快感により苦しさを覚える。
 触手は決して痛みは与えないが、明らかに限度を超えている快感と絶頂による苦痛を与えてくる。


 だが、これは本来女性器を持たない物のみが受ける状態なのを「血の祝い」の期間中にラースが楽し気に言っているのを思い出した。
 ただ、実の息子だから、発狂を防ぐ体液のみで、意識を覚醒状態にさせる体液は飲ませない様にしていると言うのを聞いた。
 かつて――母と出会う前の父に――ラースに歯向かった人型の男達は皆女性器を触手に作らされ、発狂も意識も途絶えさせることもなく、触手達があまり手をださない「血の祝い」が訪れるようになってもこの触手と同類の存在に、子を孕めるようになるまで嬲られ続けていたそうだ。

 それに比べれば、確かに自分はまだマシであるのが分かる。
 けれども、このままではその者達の末路とほぼ似た者が自分に待っている。

 彼らは魔の者や、闇の者や、魔獣などの子を孕まされて産み落とすのを繰り返されることによる精神の崩壊。

 ルミエールには――
 実の父の子を孕まされ、産み落とすということ。

 もしそれが起きたら、きっとルミエールは「母の言葉を伝える」という一度自身の精神をなんとか戻したそれであっても己を保つことができない予感が付きまとう。

『いっそお前も、狂って、壊れて、父の「壊れて歪んだ愛」に溺れてしまえば楽になる』

 そんな囁きがルミエールの心を苛む。
 きっとルミエールの父は――ラースはそれを望むだろう、壊れて、その歪な愛情を享受して、快楽に溺れて、精液で満たされることに悦んで、孕み、子を喜んで育てるようになることを求めているのはラースの今までの言動からルミエールは理解できた。

 そうなるのが、ルミエールには恐ろしくてたまらなかった。

 何もかもが壊される、自分を作り、支えてきたもの全てが壊される。

――怖い、怖い、恐ろしい、恐ろしい、私が壊れていくのを感じる、父上に壊されていくのが分かる、ああ、誰か、誰か……――




 ラースは魔の光がともる通路を歩いていた。
 一番奥の領域に着くと、鉄格子の扉を開けて、中に入る。
 細い触手が伸びてくる。
「今日は時間通り――何? やっぱり何かおかしいから止めないか、だと? 何もおかしくない、何も、な」
 ぐねぐねと蠢く触手に、ラースは笑みを浮かべて返すと、触手に包まれているルミエールに近づく。
 ラースが屈み、手を伸ばせば触手達はルミエールから離れ、支えを無くしたルミエールはラースの腕の中に倒れこんだ。
 ルミエールはいつものように意識を失っているのか微動だにしない。
 ラースはルミエールに黒いローブを着せて顔をフードで隠すと、抱きかかえた。
「では、また明日も頼むぞ、私は早くこの子との子が欲しいのだ」
 ラースはそう言ってその場を後にした。




 触手が何かもの言いたげに蠢いているのに、ラースは気づかなかった。




 浴室でルミエールの体の汚れを傀儡に落とさせ、体を拭き、髪を乾かし終えると、白いローブでルミエールの体を包み、浴室を後にする。
 自室に戻ると、ベッドに寝かせローブを脱がせて代わりにシャツを着せてやる。
 相変わらずルミエールは目を覚まさない。
 待望の「血の祝い」後、ルミエールをあの生き物に任せると、ルミエールは中々目を覚まさなくなった。
 あの生き物に聞いてみたが「何もしてない」の一点張り、自分に歯向かうことはしないだろうし、命令に違反するような事はしないので、ルミエールの体力が落ちてるのかと考えることにした。
 いくら自分の血を引いているとは言え、ルミエールはほとんど体を動かすような事をしていない。
 ラースは少し考えるしぐさをしてルミエールの封じている脚の部分を撫でた。
 封じられなくなっていた脚がそこにはあった。
 ラースはもう片方も同じように開放してやる。
 根本的な力は封じている、そして反抗するような気配はあまり見られない、だがもしもの為に魔具はつけたままにしておいた、反抗時すぐ対処できるように。
「……」
 ラースはそっとルミエールの髪を撫でる。

――さて、シャツのみ、というのも何か――
――ああ、これから「母」となるのだからそれ相応の服を身にまとわせればいい――

 ラースは口元に笑みを浮かべると、傀儡たちを呼び出し命令を出した。
 命令を聞いた傀儡たちは頭を下げ部屋を出て行った。


――足の、感覚が、ある……後、何か……着せられた……?――

 ルミエールは銀色のまつ毛を震わせながら、目を開いた。
 体の状態を確認しようと手を見た途端、目は驚愕の色に染まる。
「⁈」
 動くのが辛い体に鞭を打って上半身を起こした。
 無くなっていた両脚も戻り、身動きを取れるようになった――それは分かる、だが身にまとわされている服に酷い恐怖を覚えた。
 どう見ても、女性――そう子を身に宿した母体たる者が身に着けるような服だったのだ。

 体を抱きしめ、震える。

 確実に、自分を実の子であるルミエールを孕ませようとしているラースに考えが嫌でも伝わってきた。
 実の子として愛している――その上で自分との子を産んでもらう者としても「愛し」そう認識していることがルミエールを苦しめた。

――ああ、これが私に相応しい末路なのか?――
――最愛の母を救えず、母の言葉を父に伝える事もできず、父を止めようと刃を向けた、私への罰なのですか?――

 ルミエールは気分が酷く悪くなった。
 精神の不調が体に反映されやすくなっているのか、それとも触手との行為の副作用なのか、頭が痛み、吐き気もし、体も熱い、腹も痛んだ。
 ルミエールはベッドに体を横たえる。

 逃げようと考えがないわけではない、だがそれを実行した途端自分は四肢を再び奪われるのが想像できた。
 何より、今のルミエールでは自分を監視しているであろう傀儡たちをどうにかする程の力もない。

 全てが、悪い夢であったのならどれ程幸せだっただろう、ルミエールはそう思いながら眠りに落ちた。




 ラースは職務を終え、足早に自室に戻り、扉を開ける。
「ルミエール」
 酷く狼狽えた声で、ベッドに近づき、顔を赤く染め、体を汗ばませ、苦しみまじりの吐息をこぼして眠っている我が子の頬を触る。
 酷く熱い、人型ならば下手をすると死にかねない程の体温だ。
 ラースは傀儡たちにルミエールの看病をするよう命じると部屋から姿を消した。

 向かった先は、魔の光のみが明かりとなっているあの空間、その一番奥の鉄格子の扉を開けると、触手が伸びてきた。
「ルミエールが苦しんでいる、貴様、何をした?」
 触手がまるで呆れるような動きをしてからぐねぐねと蠢いた。
「……なに、以前使ったあの薬副作用だと? 何故今更そんなものが――なんだと? 私の血と人の血を引いているからの副作用だと、詳しく答えよ」


 触手の蠢き、「言葉」はこうだった。
 以前ルミエールにラースの配下の者達がなんとか作った女を「身ごもらせる薬」あれは基本「人型」用であり、闇の者や魔の者が使うと下手すると「猛毒」になりうる劇薬であると。
 だが「猛毒」が発現する条件は「血の祝い」来てその期間でないこと、魔の者や闇の者には「血の祝い」は訪れない、故に発現しない。
 だが両方の血を引いているルミエールにはその「猛毒」が発現する恐れがあった、触手はできるだけ解毒を続けたが「猛毒」の効果は「身ごもらせる」効果よりも遥かに強く、10分もすれば全身にいきわたり残り続ける。
 この生き物は何とかラースの命令もこなしつつ、まともに食事を取らずに弱まっているルミエールの体を何とか維持させようとしつつ、そんな多忙状態で解毒もしていた、が多忙すぎて解毒がうまく進まなかった。


「……」
 触手の「言葉」にラースはぐうの音もでなかった。
 触手の能力を過信というのではない、触手に負担をかけすぎていたことと、自分が把握しようとしないことに自分を殴りたくなった。
 自分の愚かさ故に愛しの我が子を「妻」となり、己の子を産む「母」になる子を苦しめる羽目になっているのだ。
「……私はどうすれば良いのだ?」
 触手がぐねぐねと蠢く。
「何、隣の部屋の者は『解毒』と『治療』が得意だから一旦開発を止めて治療に専念しろ? 分かったそうしよう」
 ラースはその場を後にした。




 触手は呆れているような蠢きをしてから、ぐねぐねと蠢き、そしてまた元の位置に戻った。




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