2 / 22
狂気に堕ちた王
禁忌
しおりを挟む母の体を抱き上げる、血が止まらない。
自分では血を止められぬ凶器で傷つけられたのか、母の体の傷がふさがらない、止まらない。
『母上!!』
『……ルミエール……』
『母上しっかりしてください!!』
『わた、しは、もう、だめ、……おね、がい、ルミエール……あの人に……ラースに……』
母はルミエールに何かを囁いた、囁き終わると、柔らかな微笑みを浮かべてそのまま息を引き取った。
ルミエールは母の亡骸を抱きしめた。
母の亡骸を抱きながら人目を避けて移動していると、父の使い魔が現れルミエールから母の亡骸を奪うように持って行ってしまった。
慌てて城に帰ると門は固く閉ざされ、門の前には大量の死体が転がっていた。
ルミエールは足音に気づき、出かける際に持ってきていたローブを身にまとい、姿を隠した。
門の前に来た者達は自分の父を殺しにきた輩だった、どうやら父が各地に魔物や配下をけしかけ人を襲わせているとのことだ。
母の死ぬ間際の言葉の意味を理解し、ルミエールはどうするべきか悩んだ。
父に従うべきか、それとも――
母の言葉が耳に残っていた、ルミエールは父――ラースを止めるべく行動することにした。
父の命を狙う者達の多くが通る道に身をひそめ、その中で特に強い「神の加護」を力を持つ者達を待った。
日に日に、道を通る者は少なくなって行った、諦めかけた時、ラースから本で教えてもらった「神の遺産」とも呼べる武器や装飾品を持つ者達が現れた。
ルミエールはおそらくこの者達の次はないと感じ取り、正体を隠してその者達の仲間に加わることに成功した。
自分が通れなかった門を無事に通り、明らかに強いはずの配下を倒して、ラースのいる玉座にたどりついた。
ルミエールは、ラースを止められる、そう思った。
だが、戦いはあまりにも悲惨だった。
怒りに、憎悪に満ちたラースに、「神の残した力」は、何一つ通じず、一人、また一人と体をバラバラにされ、臓物と血と肉片を床にぶちまけた。
残った二人が撤退をと叫んだ時、ラースの魔力の刃が自分を裂いた。
ルミエールはラースを止められなかった、このまま自分も死ぬのかと思いながら倒れた。
ルミエールは目を覚ました。
夢を見ていたのだ。
目を覚ますと酷く苦しい、体の中を熱が暴れているようだ。
少し前の事を思い出し、自分の四肢を見る。
黒く魔の輝きを放つ物体に包まれている先からが無くなっているままだ。
相変わらず力は封じられていて、姿を変えて逃げる事も術を使って戒めを解除することも、何もできない。
体の中を熱が暴れているが、特に下腹部が酷い、意識を失う前触手達がした何かが原因なのは想像できたが、分からない事がある。
触手達は自分の体に何を「作ったか」だ。
ルミエールは現状今自分がいる部屋を見る、先ほどの触手がいた部屋ではなかった、柔らかなベッドの上だ。
そこから見える部屋の構造や家具に、見覚えがあった。
――父上の部屋だ――
ラースの部屋に入れる配下はほとんど倒した、城には残っていない、そうなると消去法で自分をここに連れてきたのはラースということになる。
――父上は、私を生かした、私と気づいていた?――
――先ほどの触手の部屋の意味は?――
――力を封じているのは逆らわない為、四肢を封じているのもおそらく――
――だが、此処に居る意味は?――
ルミエールの頭の中に僅かに予想がつくこと以上に疑問が沸き上がる。
ルミエールが必死に疑問への解を求めていると、部屋の扉が音もなく開いた。
ぞわりとする闇、敵としてラースと対峙した時に感じた闇とよく似ていたが、少しだけ違った、憎悪や怒りではなく、別の本能が恐ろしいと感じる何かを抱く闇だった。
「――ああ、目を覚ましたか我が息子よ」
近づいてきたラースは酷く優しいのに、恐ろしいと、早く逃げろと本能が訴えるような声で言い、笑みを浮かべて、ルミエールの長い銀色の髪をすくって口づけをした。
まるで、母に――最愛の人にするかのような仕草だった。
「父、上」
何とか声を絞り出す、殺される恐怖ではない、もっと別の恐ろしさから、うまく声が出なくなっていた。
その恐ろしさの正体がまだルミエールには分らなかった。
真っ白な手、人ならざる白い手が、自分の体をなぞる。
「傷は塞がり消えたようだな。すまぬ、お前とは気づいたのだが、正体を隠しているようだったから、ああするしかなかったのだ」
闇色の優しい眼差し、何度も見てきた目、だけれども、恐ろしい何かも含んでいる。
手が這うように動き、するりと、股の間に入り込む。
「っ?!」
触手が「作った」場所をなぞられ、そしてその中に指が入り込む。
ぐずぐずと注入された液体で熱を宿し、疼く其処は指をまるでくわえ込むように締め付けているのを感じる、指を入れられたことで生まれた弱い快感に恐怖を覚える。
「ああ、混乱しているのだな、無理もない」
泣きじゃくる幼子をあやすかのように優しく言い、指を抜き、もう片方の手で優しく髪を撫でながら、下腹部を撫でる。
「お前の体に、孕む為の臓器を作ったのだ。女の生殖器官と言えば分かりやすいだろう」
ルミエールはラースの言葉に耳を疑った。
――女性の、生殖、器官?――
「父、上、な、何故……」
触手が作ったものが何かが判明したが、何故をそれを作らせたのか、男の自分に女性の生殖器官を付与した目的、意味が分からない故に、ルミエールは恐ろしさを感じたが問わずにはいられなかった。
ラースはその問いかけに歪にほほ笑んだ。
「私の子を孕む為だ」
ラースの言葉に、ルミエールは耳を疑い、目を見開いた。
唇が震える、言葉が紡げない。
――それは、それはやってはいけない、親と子で子を成すのはやってはならない事――
ルミエールは首を振り、何とか逃れようとするが四肢を封じられている体は望むように動いてはくれなかった。
「ち、父上、それだけは、それだけはやめてください」
「ああ、抱かれるのが怖いのだな。大丈夫、まだ作られたばかりだからあまり快感を享受できぬだろうし、孕むのにも時間はかかるだろうが、大丈夫だとも」
ラースがベッドの上に乗り、ルミエールを押し倒すような、否、性的な交わりをするような体勢を取った。
柔らかなベッドの所為で体がうまく起こせない、見えない恐怖の中、指を入れられた其処――女性の生殖器に、秘所に熱を持たない、何かが押し当てられる。
ルミエールの血の気が引く、それが何なのか理解できてしまったからだ。
「お願いです!! 父上、お止め下さい!! やめてください!! 誰か、誰か!!」
「怯える必要はない、さぁ」
唇を冷たい唇で塞がれる、温もりのない舌が口の中にぬるりと入ってくる。
同時に、熱を持たぬ物に貫かれる痛みが体に走った。
「――!!」
疼きをもっていた膣内だが、指とは異なり太さや長さ大きさも遥かにある「男」を受け入れるには早すぎたのか、拒否反応を示していた。
膣肉は雄を追い出すような反応を示している、強い締め付けで、自分のナカに入ってきた雄の形が嫌でもわかった。
口を開放される。
「っう……あ……ぐ……」
「やはりまだ未成熟か、媚毒漬けでも痛むか、だがアレの触手にお前の純血を散らさせる気は起きぬのだよ」
痛みに震えるルミエールの頬を、愛おし気にラースは撫でてきた。
ルミエールは犯される痛みに苦しんでいるが、ラースの言葉を何とか聞いていた。
――触手?――
――何を、これから何を、父上は私に、何を――
「しょ、く、しゅ?」
「お前の胎、女性器はまだ孕める状態ではない」
ラースは自身の雄で、ルミエールの膣内を貫いたままそっとルミエールの下腹部――子宮があるであろう箇所を撫でた。
「だから明日からお前の女性器の成熟させ、快楽を享受し、孕みやすくなるようにさせる触手にお前の体を貫かせる、知らぬ者が見たら犯されているようにも見えるが――安心せよ、昔から孕みづらいと悩んでいた娘たちの悩みを解決していた方法だ、害はない」
ラースの諭すような、何も知らぬ子どもに教えるような物言いに、ルミエールは恐怖するしかなかった。
今のラースの、己の父の言動や行動等は異常だった。
ルミエールの体に女性の生殖器を作り、孕ませる、つまり実の息子との子どもを産ませようとする意味が理解できない。
ルミエールは上手く動かぬ口を必死に動かして、言葉を発した。
「私に、子ども、を産ませて、父上は、何、を、しようと、いう、のです」
「何を? 何もせぬよ、お前の産む子は可愛いだろう、子育ては苦労が多いが実りがある、実に良いものだ」
ラースの言葉は、ルミエールにとってある意味最悪だった。
反逆の罰として子どもを産ませ、その子どもを己の配下とするという理由ならば、それならばまだマシだった。
ラースが憎悪と怒りで狂気に陥っていると嘆くことができた、悲しめることができた。
だが、そうではなかった。
まるで、「愛し合う夫婦が子どもを望み、産み、育てる」行為を要求しているのだ、実の息子である自分に。
明らかに異常だ、男である己の体に孕む器官を作らせて、その上今犯しているのだ、だがラース本人は犯しているという認識がないのが嫌でもわかった、夫婦がするようなまぐわいをしている認識になっている。
「あ、あ、嫌だ、やめ、いっ――!!」
膣内で動いていなかった雄が、快楽をうまく感じ取れる状態でない其処の奥まで突き始めるのに、ルミエールは引きつった声を上げた。
「濡れ始めているから、少しずつ楽になる」
ラースが優しい声色で言うが、感じて濡れているのではなく、異物の痛みを必死に和らげようと生理現象で愛液を分泌しているだけだった。
ルミエールは逃れようを身をよじるも腰を掴まれて、深く突かれる。
「っぐ――あ゛う゛!!」
ルミエールは苦鳴を上げて、のけ反り、体を痛みに震わせる。
ラースの異常行動と異常な思考、自分の体の状態、色んなことで頭がぐちゃぐちゃになる、そして頭の中にルミエールにとって恐ろしい事が思い浮かんだ。
――このまま性行為が続いたらどうなる?――
「ち、父上、ナカ、は、嫌だ、やめ」
「ああ、孕むのが怖いのだな。大丈夫まだ孕まぬ。だがじきに孕むのを望むようになるとも、お前は良い子だから」
「嫌だ!! あ、あ、あ、あ――!!」
どろりと、少しだけ熱のある液体が吐き出されるのを感じた。
ルミエールは、自分を犯し愛おしそうに微笑むラースを見て、絶望の涙を青い目からこぼした。
8
お気に入りに追加
192
あなたにおすすめの小説
次男は村を出る
恩陀ドラック
BL
農村の少年トゥーエと都会から来た商人ピウニ。お互い一目惚れだった二人はセックスを通じて愛を確信していく。二人が手を取り合って村を出て行くまでの物語。
血の繋がった家族間の同性愛が当たり前で、性に対して非常に開けっぴろげな世界でのお話です。
全話に性描写があります。
母は数年前に他界。長男は女性と婚約中。女性の描写は一切なく、登場人物は男性のみです。
冒頭で次男×三男
主カプはピウニ(28)× 次男トゥーエ(14)
『後日譚』で父フォーダー(38)× 三男ダルネ(13)
『隣人』でフォーダー家のお隣に住む双子(18)× 親戚のお兄さん(24)
『団欒』でピウニ×トゥーエ、フォーダー×ダルネ。
この作品はフィクションです。登場する人物・団体・出来事等はすべて架空のものであり、現実とは一切関係ありません。©恩陀ドラック
裏の権力者達は表の権力者達の性奴隷にされ調教されてます
匿名希望ショタ
BL
ある日裏世界の主要人物が集まる会議をしていた時、王宮の衛兵が入ってきて捕らえられた。話を聞くと国王がうちの者に一目惚れしたからだった。そこで全員が表世界の主要人物に各々気に入られ脅されて無理矢理、性奴隷の契約をすることになる。
他の作品と並行してやるため文字数少なめ&投稿頻度不定期です。あらすじ書くの苦手です
メス落ち♡からの創世再始動
ひづき
BL
赤い蔓状の触手に捕まり、幼少期から知り合いの神父に空中で犯される青年アリスタ。
地上には無数の死体があるのに、それどころじゃないのに、きもちいい♡らめぇ♡
人外攻め/強姦/空中浮遊/野外露出/触手/流血/小スカ匂わせ/嘔吐イキ/攻めフェラ(ノドコキ)/メス落ち/男体妊娠匂わせ/惨殺/転生/公開プレイ(観客は死体オンリー)/精神破壊/洗脳………などなど順不同
以上を詰め込んだ頭の悪いお話です。
なるべくグロくならないよう、さらっと、しれっと略したら全体的に短くなりました!
ひとつでもダメだと思った方は読まずに引き返して下さい。
宜しくお願い致します。
魔族に捕らえられた剣士、淫らに拘束され弄ばれる
たつしろ虎見
BL
魔族ブラッドに捕らえられた剣士エヴァンは、大罪人として拘束され様々な辱めを受ける。性器をリボンで戒められる、卑猥な動きや衣装を強制される……いくら辱められ、その身体を操られても、心を壊す事すら許されないまま魔法で快楽を押し付けられるエヴァン。更にブラッドにはある思惑があり……。
表紙:湯弐さん(https://www.pixiv.net/users/3989101)
傭兵団の性奴隷
彩月野生
BL
エッカルは気弱な青年で、童顔で可愛らしい顔つきのせいで、昔からいじめられていたので、なるべく髪で顔を隠して過ごしている。以前ホルガングに拾われて恩を感じているが同時に彼を恐れている。正義感から人質を逃がし、罰として傭兵達の性奴隷にさせられてしまう。
(誤字脱字報告不要)
先生を誰が先に孕ませるかゲーム
及川雨音
BL
複数ショタ×おっぱい有りマッチョ両性具有先生総受け
おっぱいとおしりがデカいむちむちエロボディー!
強姦凌辱調教洗脳脅迫誘導だけど愛があるから大丈夫!
ヤンデレ気味なショタたちに毎日日替わりで犯されます!
【書いていくうちに注意事項変わりますので、確認してからお読みいただくよう、お願い致します】
*先生の肉体は淫乱なのですぐ従順になります。
*淫語強要されます。
*複数プレイ多め、基本は一対一です。ギャラリーがいるのはプレイの一環です。ある意味チームプレイです。
*詳しい女性器・生理描写が有ります。
*ゴミを漁る、トイレ盗撮、ハッキングなど犯罪とストーカー行為をナチュラルにしています。
*相手により小スカ、飲尿、おもらし、強制放尿有ります。
*相手により赤ちゃんプレイ、授乳プレイ有ります。
*パイズリ有り。
*オモチャ、拘束器具、クスコ、尿道カテーテル、緊縛、口枷、吸引機、貞操帯もどき使います。
*相手によりフィストファック有ります。
*集団ぶっかけ有り。
*ごく一般的な行動でも攻めにとってはNTRだと感じるシーン有ります。
*二穴責め有り
*金玉舐め有り
*潮吹き有り
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる