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狂気に堕ちた王

狂気に堕ちた闇の王

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 とある世界、そこには「闇の王」が存在していた。
 闇の王は世界への怒りを吐き出し、神と世界を憎悪し――そして深く嘆いていた。
 何千年もそれは続いていた。
 ある時、王は自分の領地の中で病人達の治療にあたる聖女と呼ばれる女性と出会い、その女性を愛し、妻になってくれるように申し出た。
 聖女はそれを受け入れ、王の妻となった。
 聖女が王の妻になってから、王の怒りは、憎悪は治まり、嘆くこともほぼ無くなった。
 一人息子を授かり、幸せな時間が流れた。

 だが、その幸せは長くは続かなかった。

 様々な地域で病が流行ったのだ。
 神の祈りでは癒せぬ病が広がり、多くの者が倒れた。
 聖女は病で苦しむ人々に心を痛め、彼らの病の治療に当たった。
 聖女の治療で病が治るようになり、聖女の治療を求める者たちが数え切れない程現れた。
 それを、神を信仰している神官たちは呪った、そして「闇の王の妻が信仰を妨害するために病を流行らせたのだろう、あの女を殺せ」と聖女を殺した。
 病は消えることは当然起きなかった。

 聖女が、妻が殺された事は、王の耳にも届いた。
 王は妻を殺した者達、それを放置する神、世界、あらゆるものを憎悪した。
 その憎悪は世界を滅ぼす程のものだった、各地に魔物が現れ、人々を襲い、殺していった。
 神に従う教会の本部は事態を重く見て、神の加護を宿す者達に「闇の王」の討伐を命令した。

 神々の加護のある武器等を受け取り、討伐者たちは「闇の王」の城へと向かった。
 その途中で、彼らは謎の青年と会う、「闇の王」を倒すのに強力したいという強い力を持つ青年を彼らは仲間に加え、「闇の王」が作り出した魔物や、配下達を倒して進んだ。
 そして、ついに彼らは「闇の王」と対峙した、神の加護を信じた彼らを待っていたのは――

 死という敗北だった。
 神の加護などいとも簡単に意味のなさない物になる程に、愛する妻を理不尽に奪われた王の怒りは、嘆きは、憎悪はそれらを粉々に砕いたのだ。
 討伐者たちは一人、また一人と肉塊へと変わり果てた。
 ただ一人、謎の青年を除いて。





「……」
 闇の王ラースは一人、玉座に座りながら愚者たちの躯を眺めていた。
 躯は肉塊となり、床に散らばり、血と臓物と肉片などで王の間を汚していた。
 その中に、一つだけ肉塊になっていない、黒のローブに身を包んで大量の血を流し倒れている者がいた。
 ラースはその者に視線をやると立ち上がり、ゆっくりと近づいていった。
 先ほどまで、憎悪と憤怒の表情で愚者たちを屠っていた表情とは違う、嘆きと慈愛に満ちたまなざしでそのローブに包まれた者を抱き起し、ローブをはいだ。
 銀髪の美しい容姿、破かれ血まみれになった美しい黒衣、そしてラースの首にかけられている物と同じペンダント。
「……ルミエール、我が息子よ。何故お前まで愚者達と共に私に刃を向けたのだ……」
 そっと、白い頬を撫でる。

――妻によく似た顔、妻譲りの美しさ、妻譲りの美しい髪、唇、嗚呼、嗚呼――

 かすかに呼吸のある最愛の息子への視線が、表情が徐々に狂気に染まっていく。

――私の元から離れるなど許さぬ、逆らった事も許しはしない、最愛の我が息子よ、愛しい妻によく似た私の子、ルミエールよ――

 ラースは息子を――ルミエールの白い首に、真っ黒な首輪のような物を付けてから、彼を抱きかかえてその場を後にした。

――二度と私と戦おうとしないようにお前の力を全て封じよう、全て。二度と私の元から離れぬように城に閉じ込めよう。自害せぬよう、それをできぬようにしよう。必要とあらば四肢を封じよう、美しいお前の四肢を切り落とす勇気は私にはない、だから封じよう、そして――

――私はお前を愛している、だから、お前を孕ませよう、孕めない体を孕めるように変えよう。それをお前が拒否するならば、その心ごと変えてしまおう、愛する者を二度と奪われる事のないようにしよう、ルミエール、私の愛しい子――


 ラースは亡き妻と出会ってからは一度も使わせた事も、使った事もない部屋の扉を開ける。
 部屋の中央に部分は長方形型に凹んでおり、その中には無数の触手が蠢いていた。
 この部屋は、かつて幾度もラースの命を狙ってきた者達の内、捕えた男を連れてくる部屋の一つだ。
 同じような部屋が他にもあるが、比較的「痛み」が少なく、傷の治療効果の高い部屋を選んだ。
 此処は殺した魔物達の命を償わせるべく――男達に「孕む器官」を体に作り出す場所だった。

 男達の精液で雌の魔物を妊娠させるのも悪くない。
 だが、女であろうと男であろうと、孕ませた方が堕ちる。
 奴らにとって倒してきた、殺してきた、忌むべき命を、その身に宿させる行為を繰り返させるとあっという間に壊れていく、存外に精神は脆い。

 だが、最愛の息子であるルミエールにはさすがにそれをさせる気はない、否己に忠実な下僕達であったとしても、ルミエールを孕ませることだけは認可できない。

 ルミエールの胎に宿させるのは、自分の子のみ。

 ラースは部屋に備え付けてある簡易ベッドにルミエールを一度寝かせて、黒衣を、体を覆う衣全てを脱がせ、首にかけられていたペンダントを取り、仕舞った。
 露わになった白い引き締まった美しい裸体には、ラースのつけた傷が残っていた。
 まだ血が滲んでいる。
 ラースは舌でその傷を舐める。

 酷く甘美な味がした。

「う……」
 小さなうめき声が美しい薄紅の唇からこぼれた。
 だが、まだ意識が戻る気配はない。
 ラースはルミエールの関節部の少し上に黒光りする幅広の鎖の無い枷のような物を取り付けた。
 ラースが魔力を少しだけ加えると、枷から下、両肘と両膝から下が消えた。
 もし切り落としているなら断面が見えるようになる場所は黒く光沢のある枷と同じ物が蓋をしていた。

 術でルミエールの四肢を一時的に奪ったのだ、首輪で全ての力が奪ったとは言え、念には念を入れてラースはルミエールの自由を奪う。
 そしてルミエールを抱き上げ、触手がひしめき、蠢いている場所に彼の体を置く。
 触手たちはさっそく、意識がまだ戻らないルミエールの体に絡みつき「仕事」を開始する。
 ラースは時間が来るまで、他に邪魔者が入らぬよう配下の再配置の指示を出す為に部屋を出て、鍵をかけた。




――痛い、父に引き裂かれた箇所ではない、別の箇所が痛い。気持ちが悪い、体を何かが触っている、手で払いたくても、できない、嗚呼、私の体に、何が、起きている?――

 ルミエールは銀色のまつ毛を震わせながら目を開けた。
 青い目に映るのは、見たことの無い部屋の天井と――気色の悪い触手だった。
「な……?!」
 ルミエールは目を見開き、視線を動かす。
 自分の体に触手がまとわりついている。
 下腹部に痛みと熱がある、そして気持ちが悪い。
「この……?!」
 ルミエールは目を疑った、自分の両腕の肘から下が無いのだ。
 何とか体を少し起こしてみれば、両脚の膝から下が無くなっていた、両腕と同じように。
 その上魔術も、体を変化させる術も、何一つ使えない。
 人外じみた腕力も、なくなっている、今の自分は何もできない、抵抗する術も逃亡する術も全て失っていた。
 触手が少しだけ起こした体をいとも簡単に倒して、絡みついて動かない様にする。
「や、め、う、ぐ、ぎ、あ」
 痛みが増した。
 痛みに強いはずの肉体は弱くなっているのか、口から苦鳴が漏れる。
 何をされているか分からない、股と、下腹部に酷い痛みが生じている。

 ルミエールは痛みから逃げる様に思考する、自分に何が起きている、ここは何処だ、あの戦いで倒れた後どうなった、等必死に思考して痛みから気を反らそうとし、逃げる方法を思考する。

 それを嘲笑うように、触手が体を刺激始めた。
「ひっ?!」
 排泄器官――後孔と尿道に触手達が入り込んでくる。
 触手達は目的の場所を見つけたかのように、一定の場所に集まり、刺激を与え始めた。
「ん゛う゛――!!」
 強い快感が体を蹂躙する。
 蹂躙している触手達を犯している箇所から抜き取りたくても、四肢はなく、その上更に触手で強く拘束されている。
 一方的に嬲られるだけだった。

 痛みと、快感で、ルミエールの頭の中がぐちゃぐちゃになる。

 何も考えられない、ただ濁った声を上げるしかできなかった。


「あ゛~~!!」
 かなりの時間が経過した。
 痛みが徐々に弱くなっていった、快楽は相変わらず酷い。
 だが、ルミエールは快楽に思考を妨害されている状態でも、体の異変を感じ取っていた。
 男性器と、後孔の間、男性器の少し下あたりに、何かが「作られた」のを感じた。
 後孔と、尿道からようやく触手達がずるずると出ていき、快楽と絶頂の拷問が終わるとルミエールは荒い呼吸を繰り返した。
 それと一緒に、体の中に何かを「作っていた」らしい触手がずるずると出ていくのを感じる。
 相変わらず拘束されたままだが、少しだけ思考する余裕を取り戻した。

 触手達が己の体内に「作った」それの穴を触手達がそれを広げるような動きをしている。
 穴の中に細い触手の先端が入り液体を注ぎ込んでくるのが分かった。
 触手によって「作られた」と思われる箇所に、液体が注がれていく。

――次は何をするつもりだ?――

 ルミエールは触手達がしたことはなんなのか、自分の体がどうなっているのか、自分はこれからどうなるのか、自分は殺された母との約束を果たせるのか、父は今どうしている、何をしようとしているのか等、考えることが山ほどあった。
 恐怖、不安、使命感等が心を掻き乱す。

「……ふ……ぐ……う」
 時間が更に経過し、体が熱を持つ、体が快楽を求めるように疼き始める。
 下腹部の、液体を入れられた、触手に「作られた」箇所の疼きが特にひどい。
 触手は其処を液体で満たして蓋をしていて、液体を排出することは叶わない、其処の疼きが酷くなる一方だった。
 ルミエールは熱っぽい吐息と喘ぎ声を溢しながら、ただ耐えるしかなかった。




 ラースは仕事を終え、部屋に戻り触手だらけの長方形の凹みに寝かせたルミエールの様子を覗き込んだ。
 触手に体を撫でられながらルミエールは意識のないまま体を震わせていた。
 ラースは歪な笑みを浮かべて、ルミエールを抱き上げた。





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