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カゴノトリ

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 ヴァインは一度自身の雄を、メルの後孔から抜いて、足の拘束具を外してベッドに寝る体勢にする。
 手は逃げられないのは分かっているが、念のためそのままにして置いた。

 体勢を変えた理由は単純だった、あの体勢ではメルの体全てを愛でられないからだ。

 まだ開いたままのメルの後孔に満足せず勃起したままの自身の雄をゆっくりと挿れる。
「あぅあ……」
 まだ絶頂の余韻から戻ってこれないのか、メルは口から喘ぎ声を上げて体を僅かに震わせるだけだった。
 半分まで入れてから、奥まで一気に突いた。
「ひぁ?!」
 強い快感に、メルは声を上げて視線をさ迷わせている。
 何が起こっているか分からないようだ。
「メル様、気持ち良くなれたようで何よりです、ああでもまだ物足りないようですね」
「ひっ?!」
 びくびくと震え、蠢き、絡みついてくる腸壁を刺激するように、腰を動かすとメルは引きつった声を上げる。
 控え目な二つの膨らみを触る。
 先端はつんと立っており軽く、指の腹で撫でる。
「っあ……!!」
 明らかに快感を感じている声を零していた。


 幼い頃から、メルの体は酷く敏感だった、少しくすぐるだけで笑いだして身をよじって逃げ出そうとする。
 くすぐり過ぎると、むくれてすねるので、機嫌をとるのには苦労した。
 だから、体に変に触られるのはだけは「我慢しなかった」という、だから自分だけには触らせてくれるのは嬉しかった。
 女性として成熟してきた体はその敏感に別の要素も加え始めているのが分かった。


 先ほど、メルが無理に能力を使おうとしてペナルティで呼吸困難に陥った為それを解除するために重ねるだけの口づけをしたが、それとは違い、貪るように唇を奪った。
 歯列をなぞり、逃れようとする舌を逃すまいと絡めて捕まえ、口内を貪る。
 雄をしゃぶる様に蠢く腸内を突きあげると、排泄器官から、敏感な「性器」に堕ちたそこは締め付けてきて、雄を悦ばせようと蠢くし、ぎゅうと締め付けてメルが絶頂したのを知らせる。

 メルの五回目の絶頂、締め付ける感触、他の連中のような性拷問、調教行為ではなく、この世で最も愛する存在とのセックスだと感覚が違うのか、我慢ができないのかヴァインは奥で精液を吐き出した。
 再度ぎゅうと締め付ける感触を愛おしく感じながら、もう抵抗することをしなくなった口を開放し、ずるっと後孔から雄を引き抜く。
「……」
 意識を失っていた。
 閉じられている目は涙で濡れていた。
 涙を拭い頬を撫でる。


 ヴァインとの「記憶」がないメルにとっては「よく分からない事を言う男に強姦」された行為。
 ヴァインの「記憶」を戻した場合、彼女にとっては「信頼し兄のように慕い、甘やかしてくれた人からの強姦かつ裏切り行為」になる。
 それならば、ヴァインにとっては前者が良かった。
 裏切りは程酷い傷はない、それが「家族や友達よりも信頼していた相手」からの裏切りならなおさら酷い傷になるのがヴァインは分かっていた。
 それにメルは気づいていないが「JUDGEMENT」自体がメルを、各国を裏切っているのだ。
 正確に言えばメルの存在が「JUDGEMENT」が各国に行う――能力を持たぬ者達へ行う裏切り行為であり、侵略行為の鍵。
 それを知ったら、メルは逃げるという手段として最悪の場合「自殺」するだろう――責任感が強いから、何も知らぬ人々が自分の所為で苦しむなど耐えられないから。
 あの犯罪組織もメルの本当の能力を知っていたら「捕獲」を命じてただろう、だからそうならないようにしたうえでメル――忌々しいエレメントを「殺した」と言う事を伝えた。
 二度とあの組織には連絡はこちらからは取らない、駒達からの連絡は聞くが。
 もしJUDGEMENTがCHAOSに連絡を取ったところで後の祭り状態だ、ヒーローエレメント基メルは公では「死亡」したことになっているだろう。

 此処から、メルが出る事はない、出る事は出来ない。
 ヴァインが永遠に保護し続けるのだ、愛し続けるのだ。

――私を救ってくれた貴方様を裏切り、傷つける私を許さなくても構いません、それを私は選びました、貴方様を、救うために、私は何だった致しましょう、貴方様の心を踏みにじって心を壊すことになろうとも――

 ヴァインはメルの腕の手錠を外すと、彼女を抱きかかえて部屋を後にした。




「――成る程、エレメントが死亡――で上層部が今までにない反応、ねぇ」
 人気のない倉庫の中で、私服姿のヒーロー達が話していた。
「ウィドウ、何かおかしくないか? エレメントより実力者だったイレイザーが死亡した時は『イレイザーの死は痛手だ、だからこそ、彼の死を忘れるな、戦え』みたいなことで謹慎とかそういうのは無かった。だが、エレメントが死んだ……んだろうな多分、それに上層部は激怒してる、明らかにおかしい」
「そうね、確かにおかしいわ。私の方でもね、ちょっと前から気になって調べていた事があったのよパワード」
 露出の高い服を着た女性――ウィドウは、体格がよく体が大きい男――パワードに端末を見せる。
「……なんだこりゃ……男……? 能力者と優秀な才能を持つ人物……だなぁ、データ見る限り……待て、俺らがとっつ構えた犯罪者も交じってるぞ??」
「JUDGEMENTの厳重なセキリティ突破して見つけた『Evolution』って資料の一つ、どうやら分割されてるみたい」
「……分割? Evolution……進化? どういう事だ?」
「分からないから、また何かあったら連絡するわ、じゃあね」
「おう」
 ウィドウは、パワードから端末を返してもらうと、その場を後にした。
「……何かキナ臭いなやっぱり……」

「――はい、はい……ええ、少しずつ提供します」
 倉庫から離れた路地裏でウィドウは誰かと連絡を取っていた。
『ならいい』
「エレメントは死んだのですか」
『死んだ、だから奴らの計画は頓挫――だが同じ能力を持つ者を探すかもしれないし、逆の能力を持つ者を探す可能性もある、監視を続けろ』
「畏まりました」
『レディ、君は私の良い駒だ、忠実で、賢い、来週にでも「ご褒美」を上げよう』
「ああ、ありがとうございます――」
『では』
 ウィドウは通話を終えると、恍惚的な表情を浮かべた。
「ああ、あの御方じゃないとダメ……他の男では満足できない、ああ、ああ……」
 その場でしばらくぼんやりとして建物の壁に背中を預けていた。




「……ん」
 メルはゆっくりと目を開けた。
 毛布をかけられてベッドの上で眠っていることが分かった。
 場所は――あの部屋、外は夜。
 時計はない。
 手の拘束はないが、下半身が酷くだるくて感覚が鈍く感じた。
 起き上がるとぞわりと甘い感覚が尻から発生して、メルは毛布をはいで体を見る。
 相変わらず透けていてこれは下着かと問いかけたくなるランジェリー姿だった。

 尻の穴を犯された時に張り付いてた黒い物体は前に張り付いていない。

 メルは恐る恐る尻の方からショーツに手を入れて、穴のある場所を触った。
 異物が食い込んでいる。
「この、ふざ……んひぃ?!」
 メルは尻の穴の異物を取ろうとしたが、喰いこんでいるそれを引っ張ろうとした途端動き出し、腹の中を刺激した。
 そのおぞましいのに強く甘い快感に耐えきれずメルはベッドに前のめりに倒れこんだ。
「っふ……う゛ぁ゛……」
 腹の奥が疼く、熱を欲しがって疼いて仕方がなかった。
 苦しくてたまらなかった。

 しばらくして蠢くのが止まる、が絶頂に至らない快感の所為でメルの体は苛まれていた。

――また、引っこ抜こうとすれば、動き、だす?――

 ふっとそんな考えが浮かぶが、メルは頭を振ってその考えを拒否する。
 そんな事をしたら自分をこんなよく分からない場所に閉じ込めているあの男の思うつぼだと。
 必死に気にしないようにしながら起き上がり、逃げようと思ったら足の枷が目についた。
 鎖と枷の部分を外そうとするがびくともしない。

 何度も繰り返し、ただ体力を消費するだけで終わった。

 メルははぁ、とため息をついた。
 自分の公式の扱いはどうなってるのか、家族は友人は学校は、と色々と思考する。
 想像としては、先行のヒーローチームが全滅してるのだ、通信できない、場所も特定できない場所に居る自分の扱いは――行方不明、もしくは死亡、だろう、と。
 行方不明なら助けをまだ救助を待つという希望を持てるが、死亡扱いだったら救助隊は来ないことになる、つまり詰む。

 そんな事を考えていると、ガチャリと扉が開いた。

 メルが扉の方をみると、あの男――ヴァインが部屋に入って来た。
「メル様、お目覚めでしたか」
 笑顔が憎たらしい、ぶん殴りたかった。
 丁寧に扉に鍵をかけている、窓は有るが、多分こちらも鍵がかかっているだろうとメルは推測して、ヴァインを見る。
「何か御質問等ございますなら、お答えします」
「……ヒーロー『エレメント』は公でどうなっている?」
 メルは遠回しに、自分の事を尋ねた。
 ヴァインは静かにほほ笑んだまま口を開いた。
「ヒーロー『エレメント』、メル様は公式上『死亡』の扱いになっています、ご家族にもそのように報告されています」
「……」
 メルは悪い方の予想が当たっていた事を理解し、きゅっと唇を閉じた。
 つまり、助けを待つということができないのだ。
 自力で脱出しなければならないのだ。

 能力も使えず、抵抗も反抗も許されない、謎の場所から自力で脱出。
 その困難さから、八方塞がりであることをメルは嫌でも理解した。
 それでも必死に考えた、逃げないといけない、この男の考えは理解できない。

 ヴァインが言った記憶を「奪った」発言が真実で、メルとヴァインが過去に面識があったとしてもどのような関係かヴァインの発言だけでは理解できない。
 もしくはヴァインが自分のストーカーだとか、そういう可能性も否定できない。

 どっちにしろ、メルにとってこんな趣味の悪い恰好をさせて、外せない枷で逃げ出さないようにして、仮にも処女にあんな酷い行いをしたのだ、ロクでもない奴だとメルは認識している。

 微笑んで自分を見つめるヴァインを警戒しながら、メルは何とかここから逃げ出す方法をもう一度模索し始めた――




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