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真祖に嫁入り~どうしてこうなった~
怖い情報過多!! ~俺だけが知ること~
しおりを挟む「……何で私はそんなんなの……」
ルリは嘆くようにうつむいて呟いた。
そんなルリの頭をグリースが撫でる。
「確かに嘆きたくもなるよね、ルリちゃんが俺みたいな力もってる不死人だったらまだしも、ルリちゃんそんな力は見当たらない……まぁ、しいて上げるとすれば身体能力は人間と比べて上がっているけど、使いこなせてないからねぇ……」
「へ?」
グリースの言葉にルリは顔を上げる。
「うん、気づいてないよね。第一普段の身体能力は元々ルリちゃんが持っている程度しか出せないようになってるからね。身体能力が発揮できる状況は基本かなり危機的な状況かルリちゃんの感情が大きく出ている時だ」
「……」
ルリにはそんな力を使った記憶はなかった、そんな力があるなら真祖が暴走していた時引きはがせたはずだ。
「んールリちゃん、さっぱりそんな力使った覚えないよーって顔だねえ、じゃあ少しだけ掘り起こそうか。最初ヴァイスに血を吸われた時、君は何をした?」
「何をしたって、突き飛ばし……へ?」
ルリはグリースの問いかけに答えようとした、そして何かに気づく。
「そう、普通の女性レベルの力だったらヴァイスの事を『突き飛ばす』ことは到底無理なんだ。どんなにヴァイスが力を抜いててもね」
「……あの、グリース。一体どれくらい知ってるの?」
「内緒!!」
ルリは色々と不安にもなり、気にもなったのでグリースに尋ねるが、返事は予想通りの内容だったので疲れたようにため息をつく。
何となくだが、多分ルリがこの城に来てからの事とか全部覗かれている、知っている、ルリはそんな風に予想した。
ルリは平々凡々だった自分が、色んな意味で狙われる羽目になる未来を予想もできるはずもなかった。
だが、今不死人になった時に獲得していた、他の不死人にはない、ルリからしてみれば何だこれはという特異性、だが自分の母国からすると喉から手が出るほど欲しい特異性故母国に戻るのが非常に危険な状況になりかねないということが分かり、ルリは実家に帰って家族と会うという願いをあきらめざる得なかった。
自分の特異性が母国にバレたら、それこそ色々と大変な事態になりそうなのが分かってしまったからだ。
自分が持っている不死人特有の特異性以外の能力と言えば、身体能力が強くなっていること位らしい、さすがに銃撃やら手足を吹っ飛ばされるような事態になったら身体能力どうこうのレベルではない、死なないが痛いのは嫌だし、実験動物のようにされるのも嫌だった。
ルリははぁ、とため息をつく。
「あーあ、何でこんな体になったんだか……」
ルリは疲れたように言った。
死にたかったわけではない、普通の「人生」を歩みたかっただけだ。
ルリの頭をグリースがぽんと撫でた。
「気持ち分からなくもないよ、俺だってできれば不死人にならず、恋人や家族に看取られて普通の人間として終わりたかったよ」
ルリがグリースを見れば、グリースは少し悲しそうな顔をしていた。
「……お前の件はすまなかったと思っている」
グリースに対して真祖が謝罪の言葉を口にする。
「本当な、次戦争とか起きた場合は絶対暴徒とか出すなよ」
真祖の謝罪に対してグリースが、呆れたような表情で忠告する。
言われても困る、今更言われても困る、そんな感じの表情だった。
「……戦争は向こうが仕掛けてこない限りはせぬよ」
真祖の言葉に、ルリは若干不安を覚えた。
グリースの今までの言葉から、自分が今まで暮らしていた国はこの国を滅ぼしたがっている。
しかも、まだルリの特異性に気づいていないものの、ルリを取り戻したがっている。
何をしでかすか分からない、家族が今無事か不安だ。
ルリの頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「……ルリ、お前の住んでいた場所に派遣し、潜ませている配下からの情報だが、お前の家族は現状政府の連中は何かをしている様子はないようだ、普通に暮らしているらしい」
「……良かった」
「お前がいない事に母親が毎日嘆いているらしいが」
「――」
安心した直後に真祖が言った言葉の所為で、ルリは何も言えなくなった。
――会えるものなら私だって会いたいよ!!――
――でも、それをすると危険だって教えたのは二人じゃない!!――
「ヴァイス、お前一言余計」 グリースが真祖の言葉を咎める。
グリースはルリの頭を優しく撫で抱きしめる。
「家族と会えなくてなって不安なルリちゃんにいう事じゃねぇだろう」
「……すまぬ」
「いいよ……ただもう少しだけ考えてから言って欲しかった」
ルリは少し怒り混じりの呆れの言葉を吐き出した。
「……そう言えば、少し前までは電話とかメールとかlime使ってもいいって言ったのに、急にダメっていったのは何で?」
ルリはふっと思い出し、真祖に尋ねた。
ルリは今電話などの通信関係の類のほとんどを自分から行うのを禁止されている。
かろうじてアプリゲームをやり、アルジェントを使いに出して買ってもらった課金カードで課金した際に来るメールや、友人や母親からくるメールを見るだけだ。
電話は禁止されている、メールは送れない、吸血鬼の国でも使えるSNSだけは使用できるが何かをアップする度にアルジェントかヴィオレに確認してもらって問題ないと判断された時だけアップができる。
自分のプライバシーは元から底辺レベルだったが、今は一人になる時間を与えられる以外、全く存在しない。
ルリは気づいてないが、ルリが一人の間も監視はされている、ルリは少しはプライバシーはあるかと思っているが、実際は全くない。
「それか、こちらで対応をどうするか検討中だ、今下手に電話やメールなどをすると向こうの国の連中が情報を盗みかねない」
「は?」
真祖の言葉に、ルリはどういう事かさっぱりわからずぽかんとする。
「つまり、電話やメールで得た情報――発信源や、ルリちゃんの現在の情報を獲得して、だいたいルリちゃんは何処にいて、どの時間護衛が少ないか割り出して――」
「特殊部隊を送ってルリちゃんを拉致しようと企んでいるんだよ、君の母国は」
「はぁ?!」
「ルーターに細工してあるから使っているソシャゲとかのアプリとかは完全にそう言った情報シャットアウトしたりごまかせたりしてアプリゲームをできるようになってるからいいけど、電話とメールはちょっと違うからね、あとlimeは君の国のアプリだ、だから警戒してる」
グリースの説明に、ルリは頭を抱えた。
既に企んでいるという内容に頭が痛くなった。
自分から立場を悪くしてどうするんだ、私の出身国、と言わんばかりにルリは頭が痛くなった。
「私の出身の国の上の人達、馬鹿なの?!」
ルリはグリースに詰め寄り、尋ねる。
「あー残念だけど、君の国の上の連中がバカじゃなかった事はあんまりない、大体どっかで、何かでやらかしてこの国の民から反感を買ってる」
「げぇ」
「ちなみにこの国の民が騒ぐ度にヴァイスがなだめてる」
「……いや、それでいいの?」
「ああ、気にするな。目に余る愚か者は私が直々にこの世から抹消している」
ヴァイスの言葉にルリは遠い目になった。
――嗚呼、そうだ、この真祖そういう奴だった――
「今それを計画してる愚か者連中を洗い出している最中だ、洗い出し終わったら皆殺しにするつもりだからルリ、お前には苦労をかけるが大人しくしていてくれ」
「……いや、なんというかかなりの数の人を殺すと宣言されて私はどうしろと……」
ルリは何とも言えない罪悪感と恐怖を覚えた。
精神構造が違うのだ、真祖は自分の配下は死なない程度に罰すればまぁいいかと思っているようだ、だがヴィオレから聞いた話では罰は吸血鬼にとっては塵に返った方がマシな程辛いとのことなのである意味精神を殺すという意味合いの「殺人」じみたことをこの真祖は平気でやっているのがルリには恐ろしかった。
自分の国の政治などそういう事柄にかかわっていて、この国に害を与えるようなことをした人に関しては容赦なく殺す、この真祖は敵対した者を殺すことに全く躊躇がないのが怖かった。
自分がそういう風にみられるようになったらと考えると、ルリは恐ろしくて仕方なかった。
家族は無事でいられるか。
友人たちは無事でいられるか。
そして私は、どんな目に遭わされるのか。
怖くて仕方なかった。
グリースはルリを見る。
彼女の顔は真っ青で、怯えた表情をしている。
ヴァイスも気づいているようだが、何故怯えた表情をしているか理解ができていないようだった。
グリースは小さくため息をつく。
ルリが怖くて真祖の事を見れなくなっていると、グリースがルリの頭を再び撫でた。
「ヴァイス、ルリちゃんはルリちゃんがお前にとって『殺すべき存在』と見られた時のこと考えて怯えてんだよ、ただでさえルリちゃんの周囲は問題山積みだから」
「……ああ、そうか。ルリ、私はお前を愛している、今お前が私を愛していなくても、私関係なくお前を愛しているだろう? だからそのような心配はするな、お前がそのような存在として認識されることはない」
真祖は優しい声色でルリに言い、頬を指で撫でる。
ルリは少しびくつきながら真祖を見る、真祖は非常に穏やかな優しい表情をしている。
「ルリちゃん、そういう事だから安心していいよ。ヴァイスの奴はルリちゃんと家族とかには危害を加えない」
グリースが付け足すように言った。
「……今日はお話しはこの辺りにしよう、ルリちゃんもういっぱいいっぱいみたいだしね」
「そうか、ではルリ、眠るといい」
「ん……」
真祖がルリの額に口づけをすると、ルリは何故か酷く眠くなった。
今まではなんともなかったのに急に表れた睡魔に抗えず、ルリはそのまま眠りに落ちた。
ルリを彼女の部屋に戻し、ベッドに寝かせ毛布をかけてから、グリースとヴァイスは、ヴァイスの部屋に戻る。
「――で、絞りきれたのか?」
「明日辺りには全部出してやるよ、ただ、これで大人しくなるとは思えないがな」
「なら、何度でも命で贖わせよう、私の愛しい者を二度奪うなど許しはしない」
ヴァイスは忌々しそうにそう言った。
グリースは、未だに「人間のみの世界」などと言うできっこない理想を捨てられずにいる、あの国の者達に対して呆れのため息をついた。
――神に愛されてるならともかく、神に見捨てられたお前らじゃ無理な話だよ――
心の中でそう呟く、グリースしか知らぬ「神の真実」、グリースは誰にも知られぬままそれを隠し続けている。
同じく、「神の寵愛」を受けたルリにも「愛されている」ことを知らせず、隠し続けている。
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