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シアワセに縋る
しおりを挟むサフィールは全身を愛でられる感触とニエンテからの「甘い」口づけ、優しく蕩かすような声に、自身の心にへばりついてる重苦しい物がこの時だけ消えてなくなったかのように楽になった。
怯えなくていい、顔色を気にしなくていい、我慢しなくていい、望んでもいい。
押さえ付けられてた反動か、サフィールはニエンテにねだり続けた。
「ああ……そこ、もっとさわって、くだ、さい……」
赤く熟れた両胸の先端を軽く摘まむと、サフィールは体を震わせ、勃起している雄からぴゅっと弱い勢いで射精をした。
此処迄性感帯にしたのはニエンテだが、あまり敏感にしすぎると、服を着るのに支障が出る、まだそこまでサフィールの心にへばりついている物を取れていないのに、敏感にしすぎて平常時に戻った時、サフィールの自身への抑圧が悪化する恐れがあった。
それに、この状態でも我慢をしないとは言い切れない。
ニエンテが初めてサフィールの女性器に生殖器を入れた時、サフィールは痛みを感じていたはずなのに、嘘をついたからだ。
試しに痛みを感じるように両胸の先端を爪を立てて抓った、酷いとは思うが少し血が流れる程抓った。
「っひぎぃ゛!!」
甘い声ではなく、明らかに痛そうな声を上げている。
「ああ、痛かったかい?」
ニエンテが柔らかな声で問いかけると悪い予想通り、サフィールは首を横に振った。
「――サフィール」
優しい声、名前を呼ぶと、サフィールはニエンテの方を少し怯えた顔で見つめてきた。
ニエンテは全身の愛撫を一度止め、両手でサフィールの顔を包み込んで、穏やかな表情で諭すように言う、サフィールが変な方向に「我慢」を覚えないよう気を付けて。
「痛かったら痛い、苦しかったら苦しい、と言っていいんだよ。怪我をしたら治療しないと下手をすると傷跡が残るだけじゃすまないのは分かるだろう? 二度と触らない訳じゃない、治ったら次は傷をつけないよう気を付ける、それだけだよ。もう一度聞くよ、サフィール、痛かったかい?」
サフィールは暫くして、小さく頷いた。
ニエンテは黒い異形状態の下半身に手を突っ込むと塗り薬と、医療テープを取り出し、傷つけた両胸の先端に塗り付け、テープを張った。
塗り薬は高い治療効果を持ち、同時に今も行われる同意無き調教行為――などから何とか開放されたものの、その行為の所為で服が擦れる感触でも快感を感じて服などが着れない等、そう言う状態になった者の体を調教前に戻す作用を持つものだ。
多少かなり希釈した状態の淫魔の体液を使ったが、サフィールの体が快楽に敏感すぎるのはニエンテは分かっているので、それを使う事にした。
「明日には良くなっているから……また、ちゃんと触れるとも……次は傷つけないよう……優しく」
そう言ってニエンテは再び、サフィールの薄紅の口にキスをして、胸以外の箇所を柔らかく愛撫し始めた。
今ニエンテから口づけは「甘く」はないが、それでも何処か甘い口づけをねだりながらサフィールは昨夜貫かれた、二つの箇所が疼くのを感じた。
「ああ……たりな、いぃ……!!」
まだほとんどねだる言葉を知らないサフィールは、昨夜のようにそうねだる言葉を口にするしかできなかった。
「っあ……!」
ぬるりとした物が、女性器の穴と後孔をつつく感触ようなもどかしい感触に声を上げてしまう。
「サフィール、欲しいのは――」
膣内にぬるりとした何かが入り込み、ナカをつつく。
「ひぁ!!」
「こっち? それとも――」
膣内からぬるりとした物が抜かれ、腸内に入ってきて、ぞりぞりと腸壁をこする。
「んぅ――!!」
「こっち? それとも――」
再度膣内にぬるりとした物が入ってきて、ナカをつつく。
「両方? 教えてくれないかい?」
入って来た物が与える快感に、両方の熱と疼きがより悪化していき、体が愛撫の強さは変わっていないのに、より強い快感を感じているように頭が感じてしまっていた。
膣内と腸内は、それらを締め付け、快感を得ようとしているのが分かる。
「りょ、うほう、くだ、さ、い……ぁ……ぁあああ!!」
答えると、入って膣内と腸内に快感を与えていた物が抜けると同時に、一気に剛直な物――雄に二つの箇所を貫かれサフィールはそれだけで絶頂した。
どろりと熱い液体が両方に注がれる。
「あぁ……♡」
これで何度目なのだろうかと、思い出したくても、頭がうまく働かずサフィールは分からなかった。
ニエンテに縋り付くように抱き着きながら、体を愛撫され、膣内と腸内を突かれ、精液を注がれ、数えることができない程頭を蕩かされて快感と絶頂に浸る。
それが心地よかった。
望んで、与えられて、触れてもらえて、愛の言葉をもらえて、快感を与えられ、絶頂させてもらえる。
――ああ、このまま死ねたら、幸せだろう――
甘い幸せと今までの苦しさから、サフィールは希死念慮を抱く。
――今は不安なんか一つもない、でも明日目覚めた時……これが夢で、私は愛なんて与えられてないんだとしたら――
――ああ、なら今いっそ死にたい、夢なら醒めたくない、明日目覚めて違う扱いになってしまったら怖い、だから今死にたい――
「サフィール」
甘く蕩かすような声――なのに、何処か悲しそうな声で囁かれる。
「これは夢じゃない、現実だよ。大丈夫、明日目覚めても、これから幾度月日が――どれ程の年月が経とうとも、私は君を――」
「愛し続けるよ、私の可愛い妻、サフィール」
優しく髪を撫でられる感触に、サフィールは目を閉じた。
――ああ、幸せだ――
そしてそのまま、ニエンテの腕の中で眠りに落ちた。
ニエンテは温かく濡れたタオルで眠っているサフィールの体を拭き終わると、寝衣を着せてベッドに寝かせ、毛布をかけてからそっと頬を撫でる。
「……」
サフィールの幸せそうな、穏やかな寝顔、なのに酷く痛々しい物に見えた。
「――ニエンテ様」
「……何だ、俺は若干気分がわりぃ」
「申し訳ございません、『仕事』の依頼が――」
「はぁ?」
メイドはサフィールが起きないよう、静かに近づいてきてニエンテの耳元でその内容を告げると、ニエンテは酷く不機嫌な顔をした。
「――どうなさいますか? 急ぎ、とのことです」
「……朝までには帰る、お前等は此処の事を頼む、いつもより念入りにな」
「畏まりました」
ニエンテは姿を変えた、最初にサフィールに会った時の目や鼻、口などがない黒い人型の異形の姿になり、真っ黒なスーツで身を包み、革靴を履いた恰好になると同時に姿を消した。
「――で、それだけ?」
ニエンテは地面にはいつくばってる人狼の頭を革靴で踏みつけながら問いかける。
空き倉庫らしきその空間は――まるで巨大な獣に食い散らかされたかのように、肉体の一部が転がっており、空気も酷い血の臭いに染まっていた。
「ほ、本当だ!! お、俺らは頼まれただけなんだよ!!」
「あっそ、じゃご苦労さん」
ニエンテは人狼の頭をためらいなく、踏んで破壊した。
頭蓋骨の砕ける音等が響く。
ニエンテがぐりぐりと地面に靴底をこすりつけるような仕草をしながら手を伸ばすと黒い鳥が出現した。
「イグニスのアホに依頼完了伝えてくれ」
鳥は一声鳴くと、ニエンテの手から離れて飛び、開いてる扉をくぐって見えなくなった。
「さて、少しだけお掃除するか」
ニエンテがそう言って、人狼の死体から離れると、ニエンテの足元から黒い何かが広がり死体や肉体の一部や血等を取り込んだ。
ニエンテはポケットから空気洗浄剤のスプレーを取り出して、一回だけ押した。
それだけで、空き倉庫の空気は清浄され、血の臭いは消えて失せた。
「さて、帰るとするか」
ニエンテはそう言って足を一歩踏み出した瞬間その場から跡形もなく姿を消した。
誰かが頭を優しく撫でてるのを感じ、サフィールはゆっくりと目を開いた。
「おはよう、サフィール」
穏やかにほほ笑んでいるニエンテの顔が視界に入った。
「あ……おはよう、ござい、ます……」
甘やかすような優しい声色に、体に熱が宿り、きゅぅと切なく疼きだすのを感じてサフィールは視線を少しそらした。
すると、どろりと何かが垂れてくる感触を感じた。
「?!」
不快感とぞわりとする快感にサフィールは目を白黒させる。
「――ああ、そうか。しまった、すまないサフィール。昨夜は処理をし忘れた。すぐ浴場に行こう」
ニエンテは起き上がると、サフィールを抱きかかえた。
――しょ、り?――
――一体、何、を??――
浴場に入ると、ニエンテの寝衣は黒くなり、消えた。
「?!」
――もしかして、ニエンテの服は、ニエンテの体の、一部だったのか?――
サフィールがそんなことを考えている間に、サフィールの寝衣は脱がされ、下着だけの状態になっていた。
ニエンテがサフィールの下着に手をかけたので、サフィールは慌てた。
「あ……そ、その、自分で、脱げ、ます」
サフィールがそういうと、ニエンテは微笑んだまま下着から手を離したので、サフィールは少しほっとしながら、下着を脱いだ。
「こ、れ、は……?」
白くて、どろりとした液体が下着に付着していた。
サフィールは女性器を撫で、指に付着しているそれを見て顔を青ざめさせる、何か体が壊れたのかと。
「ああ、サフィール、これは君の体液じゃない。私の体液――精液だ」
「え……?」
サフィールが訳が分からずニエンテを見ると、ニエンテは苦笑した。
「いや、一昨日は君が寝ている間に処理したんだが、昨夜はちょっと処理するのを忘れたんだ、女性器からは自然に排出されるけど――」
後孔を指でなぞられる感触に、より、熱と疼きが悪化する。
「こちらは女性器みたいな排出はされないからね、淫魔なら別に問題ないけど、君はそうじゃないからね、処理しないとまぁ、人的に言えば腹を下す、ことになる」
「え……」
――ああ、嫌だ、勿体ない、せっかく、注いで、満たしてもらったのに――
ニエンテから知らされる内容に、サフィールは自分の体の中に注がれた「シアワセの種」が消えてしまうように感じ、心が暗く沈んでいった。
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