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第六章:こんなハーレムいいですか?
契約の証と爆弾発言
しおりを挟む「……」
やってきてしまった。
召喚基礎の講義の日が。
おかげで朝から憂鬱だった。
夢で――
『明日あえるんだね! 楽しみにしているよ!』
『くれぐれもヘマをするなよ』
とか、散々好き勝手に騒がれたのだ。
夢見が悪いとはまさにこの事だ。
私はため息をついてから、ベッドから下りて着替え食堂へと向かう。
少し顔色が悪いのを皆に心配されたが、別に無理しているわけじゃないと正直に夢見が悪かったことを話した。
内容はさておき。
それで納得してくれたので、今日の講義は召喚基礎だけで終わりにして残りは明日以降にしようということになった。
はい、いました。
ベネデットが。
相変わらず向上心と対抗心の塊でどうしようもねぇなと思いながら今回はどうなるんだろうと想像する。
「はい、本日の召喚基礎は自分と最も相性の良い、精霊界、妖精界に行って契約をしてこよう、というものです! 呼び出す前にこちら側から挨拶をしに行くのが大切です、皆さんに事前に配布した物で、自分の力量にあった場所にしか行くことはできないし、三十分もすれば自動で戻ってくる代物です。それまでに契約を仮でもいいので行ってください!!」
「では始め!!」
エリアはフィレンツォが補助し、クレメンテはブリジッタさんが補助する。
アルバートとカルミネは互いに補助し合うので問題はない。
私は今回は一人で行うことにした。
そうしなければならないから。
「どうか、導きたまえ、開かれたまえ。我が名はダンテ・インヴェルノ。貴方達のあるべき場所に招きたまえ――」
目の前が真っ白になった。
光が消えて景色が開かれると、私は目を疑った。
「ちょ、これ狭間の世界じゃないか?! どういう事だ?!」
宇宙空間のような景色に、地面は花畑というアンバランスな空間に声を上げる。
「ようやく来たね!! 待っていたよ!! サロモネ王の後継者」
「流石だな」
「え……」
目の前にいたのは、王様の様な恰好をした妖精と、六対の翼に黒い服の男性ような存在――
「妖精王オーベロン様と、精霊王オリジーネ様?!?!」
本に書かれていたのと少し誤差はあるが、間違いないと思わず声を出してしまった。
「お、気づいてくれたかい?」
「あ、あのですね。これ、学校の召喚基礎の……」
思わずしどろもどろになる。
ただでさえ一学期に散々やらかしてきたのだ、二学期も早々にやらかすのは避けたい。
「言っておくが、契約しないというのはなしだぞ」
「それと、僕等からの贈り物をもらわないのも無しね」
「……はい」
私に選択肢はなかったようだ。
――ちくしょうめ!!――
「さぁ、契約をしよう」
「契約の詞を」
心の中でげんなりしつつも、私は誓うしかないので口にする。
「――我が名はダンテ・インヴェルノ。インヴェルノの女神の加護を受けし者、汝らと今ここに契約を結ばん」
右手を伸ばしそう言えば、右手の甲が光った。
「……」
それを見てげんなりする。
どう見ても、妖精王オーベロンと、精霊王オリジーネとの契約の証だからだ。
見る人が見れば一目瞭然だ。
――授業終わったら隠しとこ――
心からそう決めた。
「ところで、私に渡すものとは?」
「ああ、これだ」
精霊王オリジーネは私に雫型の両手で抱える程の宝石を渡した。
「わわ! 何ですかこれ?!」
「主神アンノの涙――と呼ばれる結晶石だ。これは隠しておけ」
「は、はい」
言われるままに、魔術でバッグを取り寄せ、その中に隠す。
「いずれ来る時に必要となる」
「ちなみにそれはメーゼで使うことになるよ」
「あの、どういう事でしょうか?」
「端的に言えば、サロモネ王の封印が、オディオ達の封印が解ける」
「はい?!」
爆弾発言に耳を疑う。
「あ、あの、もしかして……」
「そう、お前がサロモネ王が封印しかできなかったオディオをどうにかするのだ」
「はいぃいいいいいい?!?!?」
――無理無理無理ー!!――
「私なんかができるわけが……」
「できるから託すのだ」
「そうそう、サロモネの夢を見たんだろ? なら君ならきっとできる」
「近いうちサロモネの最後の本が届くだろう」
「それを読めばいい、それだけだよ」
情報過多なのにフリーズしなかった私を誰か褒めてくれ。
「それとお前の伴侶達にも伝えておいた方がいい、伴侶達の力も必要になるからな」
「え゛?!」
「いいか、ちゃんというんだよ」
「では、時間だな」
「ちょっと待ってくだ――!!」
再び光に包まれ、私は教室内に戻された。
教室に戻り陰鬱なため息を吐く。
「だ、ダンテ様? どうかなさいましたか?」
「とんでもない事態になってしまったよ……エリア」
「ダンテがとんでもない事態にならなかったことなんてないだろう?」
「クレメンテ……今までとは違うんですよ……」
明らかに異常な私に皆が不安を抱いている。
「ダンテ殿下、契約の証を」
「……これです」
私は教授に右手を見せる。
教授の表情が一瞬固まり、そして好奇心の色に染まった。
私の右手をわしっと掴んだ。
「こ、これは精霊王オリジーネ様と妖精王オーベロン様の契約の証!! まさか同時契約?! つまり狭間の世界へといったのですね!!」
「ははは……そう、そうみたいです」
私は引きつった笑いを浮かべるしかできない。
教授のその言葉に、皆が反応して私の手の契約の証を見にやってきた。
私は明後日の方向を見て、黄昏るだけだった。
――神様、もう少し、平穏な青春はなかったんですかね……?――
『そんなもんあるわけないだろう、お前が望んだ道に行くためなのだから』
――ははは……デスヨネー……――
神様に言われて、私はより現実逃避したくなった。
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