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第六章:こんなハーレムいいですか?
ここからと、爆弾発言
しおりを挟む「――兄上……いえ、エドガルドを私の『比翼副王』に、エリア、クレメンテ、アルバート、カルミネを私の正式な婚約者として私は彼らにそれを申し出をします」
私の言葉に空気が変わる。
動揺と安堵の入り混じった物に。
「――そのお言葉に偽りはございませんか?」
「ない。主神アンノに誓おう」
私の言葉にフィレンツォは静かに頷いた。
「兄上、いえ、エドガルド。貴方にとって『比翼副王』は貴方を下げる扱いになるかもしれない、それでも、良いですか」
私の言葉に、エドガルドは小さく首をふってから微笑んだ。
「そのような些事気になどしない、私はお前が死ぬその時まで、お前と共にあろう」
エドガルドはそう言って受け入れてくれた。
比翼副王というのは、伴侶とは違う。
だから、王との子を生すことはないが、王の側近の中で一番権力を持ち、そして伴侶同様、王と共に生き、死ぬ存在なのだ。
エドガルドと私が共に生きるのはこれしか道がない。
血を分けた兄弟である私達が共に生き、死ぬのはこれしか道がないのだ。
だが、エドガルドはそれでいいと言ってくれた。
それだけで私はよかった。
「――そうか、お前には見せていなかったな」
エドガルドがそう言って服の襟を開いて右胸を見せた。
私はそれに目を丸くする。
「お前がまだ祖国にいる時についたのだ。見せようか悩んだがやめたのだ、その時は足枷になりかねなかったからな」
右胸には金色のインヴェルノ王家の証――伴侶と、比翼副王にしかつかない証がついていた。
「だから断る事などない」
「エドガルド、そういうのは教えて下さいよ……断られたらどうしようと思ってたのに」
「断るわけがないだろう、私はお前を愛しているのだからな」
きっぱりと言い切るエドガルドがカッコよく見えた。
――ん?――
「……何で私はそれに気づかなかったのでしょうか……?」
「多分ダンテ様の性格が原因かと」
『お前の性格が原因だな、普通なら気づくが性格が邪魔して知覚をさせなかった』
――マジか――
フィレンツォの予想と、神様の正解の言葉に頭が痛い。
「……事実な気がして非常に申し訳ないです……」
自分の性格が原因でそういうのに気づかないとか間抜けすぎるなと思ってしまう。
「気にするな、お前のそういう所は分かっている」
「ありがとう、エドガルド」
穏やかなエドガルドの言葉に救われる。
――まぁ直さないといけないけどね!!――
――直る気全くしないんだけども!!――
心の中で自分の長年どうにもできなかった、あれやこれが思い浮かんでは「自分じゃどうしようもねぇな!」と嫌な開き直りをしてしまう。
けれど、今はそれを棚に上げる。
「――では、エリア、クレメンテ、アルバート、カルミネ。私は貴方達に婚約を申し込みます、受け入れるのも拒否するのも貴方達の自由です。私はそれを受け入れます」
「何をいまさらそのようなことを」
私の言葉にクレメンテが答える。
「私達は貴方と出会ったあの時から、ずっと貴方の傍にいたいと願っていたのです。この申し出誰が拒否しましょうか」
クレメンテのその言葉に三人が頷く。
「――有難うございます、クレメンテ、エリア、アルバート、カルミネ」
私は全員の言葉に心の中で安堵の息を吐いた。
「――ああ、そうだ。父上と母上に報告を――」
「それならご心配いりません」
「フィレンツォ?」
フィレンツォの言葉に、私は嫌な予感しかしなかった。
「既にご報告済みです」
「ハァ――?!?!」
何時の間に報告したとか色々と訳が分からない。
そして、良く知った気配を感じ振り返ると――
「ダンテ、婚約おめでとう。エドガルドもおめでとう」
おっとりと微笑む、母の姿があった。
「「母上――?!?!?!」」
流石にエドガルドも母が来ているとは予想外だったのか、私とハモって声を上げてしまう。
母が――インヴェルノ王国の后が来たことでとんでもないことになった居間が漸く落ち着き、応接室へと全員で移動して各自ソファーに腰を掛けて緊張している。
誰が一番とかはこの際どうでもいい、母とフィレンツォ以外がめっちゃくちゃ緊張している。
「……あの母上、父上は?」
私は緊迫した空気の中、疑問に思っていた事を口にした。
「フィレンツォから貴方の事を聴いたらひっくり返ってしまったわ。だから私、あの方を置いて来たの。気づいてないのは理解してたけども驚きすぎですもの」
その言葉に私はエドガルドと視線を合わせる。
小声で「後で父上が荒れるぞ」とエドガルドが言ったのに私は頷いた。
母ぞっこんで息子である私達に甘い父の事だ、自分一人置いて息子達の所に行ったなんて知ったら、色んな意味で荒れかねない。
「あ、あの……父上にはお伝えしたのですか……?」
「したつもりなのだけれども……聴いていたかは分からないわ」
おっとりと、なんでもないことのように言う母がめちゃ恐ろしかった。
――とんでもない爆弾用意してくれやがりましたなー?!?!――
おそらく、後でやってくるであろう、父がめっちゃ怖い。
「……」
エドガルドの顔色が非常に悪いし、黙り込んでしまっている。
というか、フィレンツォと母以外全員戦々恐々している。
私はその空気を打開しようとなんとか模索を開始する。
「母上、父上は拒否的な反応をしましたか?」
「いいえ、驚いてから『あのダンテが伴侶を四人も連れてくるなんで奇跡だー!! エドガルドが比翼副王だと!? 何たる深い愛だー!!』とか言ってはしゃいでたら転んでひっくり返って後頭部を強打して気絶してしまったもの」
母上から来た正確な情報に漸く皆が安堵する。
「母上、それを最初に言ってください」
拒否的な反応をされたら怖いのは当然だ。
「あら、そうね。そうだったわ」
にこにこと笑う母が怖い。
――もしかして、母さん、私の事試してる?――
『それも少しあるな』
――やっぱりかちくせう――
私は深い息を吐いてから母を見据える。
「フィレンツォから私と彼らの関係がどのように伝わっていたかは知りませんが、とりあえず、私の愛しい人達を怯えさせるような行為はやめてください、母上」
母は、その言葉に納得した様に頷いた。
「分かったわ、ダンテ。貴方はとても自分の事に疎くて鈍いけれども、自覚をしたらとても凄い子ですものね」
「さりげなく私を下げるのやめてください、フィレンツォとそっくりです」
「それはそうよ、だってフィレンツォのお父様は私の妃教育係の一人だったのだもの」
「「はぁ?!?!」」
「かつ、あの人の執事だったのよ。もう引退してしまったけども」
母からの再びの爆弾発言に私は耳を疑った。
「フィレンツォ!! 私は一度もそんなことは聞いたことがないぞ!!」
思わず普段のフィレンツォとのやりとりの口調になってしまう。
「聞かれませんでしたので」
「ふふ、こういう所、本当にそっくりだわイザイアに」
爆弾がぽんぽんとこう投げ込まれては私の精神が持たない。
エドガルドも同様だし。
エリア達は、インヴェルノ王家の家庭事情とかそういうのについていけずぽかんとしている。
ストレスで胃に穴が開きそうだ。
『開くかもしれんな』
――やめてー!!――
神様の不穏発言は勘弁してほしい、いや本当。
そう願いはするが、それはどうにもできないことだと分かっていた。
応接室の扉が勢いよく開かれる。
「ダンテ!! 婚約が決まったそうだな!! そしてまさか比翼副王まででるとは!! なんていう奇跡なんだ!!」
父が威厳など何処かに放り投げた口調で入ってくるのを最後に、私は前のめりになってテーブルに勢いよく額をぶつけて、意識を暗転させた。
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