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第三章:学園生活開始!

知り、共感し苦しむ~けれども私は決めたのだ~

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 覚えている、エリアと関わると兄弟やその悪友の屑共が余計な事をするのだ。
 出来る事なら、今関わったこの段階で、そんな下衆共と関われないようにしてやりたいのだが……

――あの連中、あれやこれやと口八丁とかでやらかしてくるんだよなぁ……どうにかできないものか――
『まぁ、あの時はゲームだったからな。だがこれは現実だろう、いくらでも手段がある』
――えーっとつまり?――
『まぁ、とりあえず話を続けろ』

 神様の言う通りなら、ここでのやり取りから何かまた助言がもらえるか、私が何か思いつくかどっちかになる。
 ならば、会話を続けるだけだ、より詳しい情報を知らないといけない。




 再び「戻り」私は、治安維持所長のを見る。
「――あまり当たって欲しくないのですが、このような件は何度も起きているのですか?」
「……はい、被害者であるエリア様の兄君達は『こんなこと訴える必要もない』と繰り返しているのです。明らかに怪しいと調査した結果、エリア様を強姦している連中は兄達の知り合い……エリア様に訴えるのを進言したのですが」
「兄達の報復を恐れて、訴える事ができない、ですか……」
 そうして、私は考え込んでこう言った。
「私が訴える事は可能でしょうか『私ダンテ・インヴェルノは、友人が強姦された事が許せない、故に私が代理人として訴えよう』と。フィレンツォ、所長殿、できますか?」

『なんだ、頭が回るではないか』
――褒められている気がしない!!――

 神様の褒めてるんだか、茶々入れてるんだかわからない発言には本当困る。

「それは可能です」
「ですが、ダンテ殿下。代理人とは言え、エリア様を説得しなければそれはできない行為です」
「ええ、ですから、ちょっと今日は彼の説得に時間を使います。フィレンツォ明日の準備等で大変でしょうが……頑張ってくれますか?」
「――ええ、勿論です。ダンテ殿下」
 私の言葉にフィレンツォはいつもの表情になった。

 私に任せて下さい、貴方の信頼を期待を裏切りません、そんな雰囲気を漂わせて。


 フィレンツォはプリマヴェーラ王国の大臣の方に連絡と、それと明日の買い出しをやっってもらっている間に、私は私でエリアの信頼を獲得するというかなり難題に挑むことになった。

――肉体関係……セックス無しでとかハードすぎん⁇――
――前世でゲームでのエリアの攻略時、肉体関係を作ってそこから周囲が入ってこないように頑張ったけど今回はそれができない……――

 私は頭を悩ませる。
 全員幸せにする為の前提条件として私は現在誰とも「肉体関係」を結んではいけない。

『悩んでるなら、とりあえず話してみろ』
――いや、何を?――
『まぁ、先ほどの話以外の内容を』
――……まだ学院生活始まったばかりだし授業も受けてないんですが??――
『まぁ、ちょくちょく助言してやる気はあるから、安心しろ』
――うへぇ……頑張ります……――

 エドガルドの時も、結構大変だったが、家庭環境が悪いから起きたわけではない。
 何と言うか「仕方なかった」のだあれは。
 いや、エドガルドに毒投与しつづけた下衆は仕方なくないな!!
 うん。

 ただ、エリアの場合。
 家庭環境的にエリアの立場が非常に弱い。
 実父が守ろうとしない時点でアレだし、名義上の母親は知っているから守る気もないのだろう。
 異母兄達がどこまで知っているかまでは分からないが、どちらにせよ、あまり良くはない。

 色々考えないと不味いなと思いながら部屋に戻ることにした。

 治療室へと戻ると、エリアは椅子に腰をかけて、私の方を見てきた。
 不安げな表情。

「だ、ダンテ殿下……」

 怯えた声で私の名を呼ぶ。
「どうなさいましたか、エリア」
 私は彼に近づいて、膝をつく。
「で、殿下が、そんなこと……!!」
 エリアは慌てふためき椅子から転げ落ちそうになったので、手を伸ばして何とかそれを阻止する。
 どうしたものかと周囲を見渡すとソファがあったのでエリアを抱きかかえる。

――軽っ!!――

 非常に軽い、一体何を食って生活してるんだと思ってしまう程だ。
 とにかく、彼をソファーに座らせて私は隣に腰を下ろす。
「あ、あの……」
「気にしなくていいですよ、私はそういうのを気にしませんので……」
「で、でも……ダンテ殿下は怖いお方だと……」
 ああ、あの馬鹿男との事か、と納得しつつ即座に否定する。
「私が怒るのは悪意等から誰かを傷つけるような発言、行為をした者にのみです。エリア、貴方は私にそのような事は一切していないでしょう?」
「……」
 それでも彼は不安げだ。
 彼の不安を取り除くのは容易ではないのは理解しているつもりだったが甘かった。

 それに、エリアと私のあの出会いは私とっても「初めて」なのだ。


 記憶に残っている前世でのゲームの情報では、ベネデットはあそこ迄邪魔ではない、いや邪魔だけど。
 エリアは、自分がインヴェルノ王国の次期国王であることから、兄達に命令されて同じ学年であるという事から近寄ってくるのを私は記憶している。

 つまりだ、先ほどのエリアに暴行を働いた連中をぶちのめして、彼を助けたという出会いは私は経験していない、初めての事柄だ。
 ただ、今の彼は私の事を怖がりつつも、助けて欲しい、そんな風にも見える。

 エリアは、自分から救いを求めるような行動はしないだろう。
 となると、私が彼の手を掴む必要がある。

「エリア、ずっとあのような扱いを受けていたのですか?」
 私が問いかけても彼は答えてくれない、けれど唇が僅かに動き、震えている。
「エリア。私は、インヴェルノ王家の名に誓って言いましょう。私は貴方を守りたいのです」
 私はそう言いながらも、決してエリアに圧力を感じさせな用に気を使った。
 彼を怯えさせるつもりはないからだ。
「……」

 しばらくしてから彼は、言葉を途中途中途切れさせながらも、話してくれた。

 実家での扱い、ルチェ・ソラーレ学院に入学した経緯、また自分を強姦し、暴力をふるっていた男達に関する事柄、全てを――

「……話してくれてありがとう、エリア」
 私はそう言うことが精いっぱいだった。

 聞いていて、心が酷く痛くなる内容だった。




――痛い――

 自分の事じゃない、彼の事なのに、苦しいのはエリアなのに、私は酷く苦しくて、心が痛かった。

『お前は予想以上に他人の痛みを自分の痛みに受け取りやすいな。共感力が高すぎる。それは良い事でもあるが良くない事でもある。下手をすれば共倒れの危険性があるからな』
――……はい――

 神様の言葉はきっとその通りなのだろう。

『他者の痛みを分からぬのは良くないが、他者の痛みや苦しみに引きずられすぎる事も良くない。誰かを助けたいと思う前に己が沼に落ちる、それでは助けられる者も助けられず、見捨てるしかなくなる、だがそれを責めてはならない、基本ヒトという生き物は自分を救うことすらままならぬ程弱い生き物なのだからな』
――……そう、か――
『だが、お前は既に一人救った上で、自分も他人に支えられながらも救っている。お前は幸せにしたいのだろう「彼ら」を。それとも此処で挫けるか?』
――……誰が、そんな事するもんか――

 神様のその言葉を否定する。
 その言葉は絶対否定する。

 私は決めたのだ「彼ら」を幸せにしたいと願ったから。
 彼らと歩みたいと彼らを幸せになりたいと思っているのは変わらない。
 まぁ、それが「ハーレム」になるとは予想もしてなかったけども……

 でも、私の決意は変わらない。
 その為に、私はここまで来たのだから。

『――愚問だったな。許せ』

 謝罪する声が聞こえた。

『今まで基本的に、先ほどのような落ち込み方をしなかったからつい不安になった』
――すみませんでした――
『いや、謝るのは私だ。そうだ、お前の意思は固い。故に私も変わらぬ』
――どういう事ですか??――
『お前の手助けをこれからもするという意味だ、ただし今まで以上に口をだすからな、覚悟せよ』

 頼もしい発言に見えて、ここからが茨道の始まりだと宣告する神様。
 だが、それが何だというのだ。
 茨道を歩むことを私は最初から自分で決めていた。

――進んでやる、苦難があっても私は自分の望みを叶えてやる――




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