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第二章:エドガルド、自分、そして──
変化と悩み~助言はあれども茨道~
しおりを挟むエドガルドの治療が本格的に始まって二ヶ月が経過した。
薬の効果もよく、また周囲の環境も落ち着いた環境であることもあってエドガルドは私がいなくとも新しい執事とメイドの付き添いのもと医師の診察を受けたり、外出することができるようになってきた。
流石に環境による精神の治療に役立つとは思わないが、今回は「薬」の作用で精神が異常にきたしていたので、その悪さしていた「薬」の効果を私の作った薬で少しずつ消していき、同時に治療を行っていたので、かなり良くなった。
精神的な病は治るときは治るが、治らない時は相当闘病を覚悟しないといけないイメージがあったので若干有難かった。
エドガルドの「元執事」の件もあり、執事とメイド等の身辺調査がかなり入念に行われた。
フィレンツォも行われたが、問題は全くなかった。
まぁそうだろう。
能力鑑定魔術――ゲーム的に言えばステータスなどを確認するが、私はもっと深い場所まで確認できる。
といっても、そこまで確認はしない。
簡単に「この人は裏切り者か否か」程度で済ませている。
フィレンツォのは「裏切り者ではない」と書かれていた。
まぁ、こっそり見たから口が裂けても言わないけれども。
それにだ、フィレンツォはこの国で重要な立場にあるアングレカム辺境伯の親戚。
辺境伯の親戚が謀反を企ててるとか色々とやばすぎる。
辺境伯の身辺の見直しもより強める必要があるし、国中洗い出し作業という地獄が待っているのでそれがなくて良かったと私は思っている。
何より神様はが――
『この国をどうにかしようとか考えていたロクデナシは、この国ではエドガルドの元執事の一家とごく一部だからな。前任一家は無関係だから迷惑極まりなかったと思うぞ、せっかく長年築いてきた信用を親類の所為で失ったんだから』
というお墨付きあり安心したが……少し不穏に聞こえたのが気になった。
実際調べたところ、最初のエドガルドの執事一家は無関係なのが分かったが親類が起こした事の大きさから、首都からは追放されることになった。
ただ、無関係なので、アングレカム辺境伯の娘が嫁いだ先の下働きをするという仕事をする事になったそうだ。
周囲が監視できる環境でもあるので、まぁ何かあったらその時は、という感じ。
関係者に関しては……知ろうと思えば知る事ができるが、やめとけと神様に言われたし、周囲も何も言わないので今は聞かないことにしておく。
とりあえず、主犯で実行犯のクズは処刑された。
今はそれだけでいい。
ただ、今は別の問題が起きている。
問題じゃないと言ってしまえば問題じゃないことにもできるけど、私にとっては問題だ。
エドガルドが同室生活を辞めるのを拒否していること。
本人は私が18歳になるまで、と言っているらしい。
18歳、つまり私が留学する歳だ。
まぁ、私としてはどうすればいいのか絶賛悩み中。
神様に至っては。
『どっちでも構わん、好きにしろ』
と言いやがったし!!
――よくないだろ!!――
私からは手をださないようにしているから、そこはいいんだ。
だけども――
向こうがやたらとそういう行動が活発になってるんだよ!!
夜に!!
ぐおおお、リアルでそういうやりとりは得意じゃないというか未経験なんだよ!!
マジでヘルプなんだよ本当!!
『……まさかここまで悩むとは』
――だからヘルプ出したんじゃないか!!――
『いや、一応言った事は守ってるし、それなりに何とか向こうを傷つけずにやってるから大丈夫そうかなと思ったんだが……』
――だったら心配性と笑ってくれ!!――
私は神様に対して声を張り上げた。
――ゲームやってた時、こんなルート行けたことないの!!――
――それにセックスとかそういうのを神様がすんなっていってるじゃないか!!――
――私は我慢できるぞ、だが向こうがそうとは限らないでしょう!!――
実際に声に出して言っているわけではなく、精神的な状態の声を神様にぶつけてるのだが、かなり疲れる。
自分から手をださないようにしている、これは事実。
だがエドガルドが私を欲しているのを「大切だから」といった系統の言葉で何とか抑え続けるのも限界な気がする。
『なるほど』
――大切だからって言って、行為拒否する度に傷ついた表情される私の身にもなって!!――
いや、本当これ。
最初はそうでもなかったが、ここ最近は傷ついた顔をするので良心が痛む。
だが、私は全員を幸せにしたいという目標を曲げるつもりはない。
何せ、エドガルドとは違う意味でめちゃんこ不幸な子おるし。
此処で、そもそもエドガルドを選んだら国として終わるという事になってしまうので、それも嫌だ。
確かに選ばれたその時は幸せかもしれないが、予想としてはエドガルドは自分のみを選んだことで「国が終わる」という事実にずっと苦しむことになるんだろうと思う。
『なんだ、わりと分かってるではないか』
――分かっててもどうすりゃいいのか分からない事がたくさんなんですよ!!――
『成程、いやはやお前はこれだから面白いな』
――おいこら、楽しむな――
『馬鹿共はやるなと言った事をやる、今はやるなだが環境や時代等に合わせて変化させてやっても良いというとやらずに固執する。自分に非はないと声を荒げ、他人に責任転嫁をする。他人が悪いわけでもないのに、自分が気にくわないと徹底的に排除する。人の善意を食い物にする』
神様は何かを言っている。
それが何を指すかくらい、分かるけども、私は言わない。
言えない。
『美鶴だった時の世界はどれほど生きづらかったことか』
――まぁ、そうですね……でも、美鶴だった時はそれなりに楽しかったですよ?――
『……そうか』
――まぁ、殺された時は頭にきましたけど……今はもう、いいかなって――
『ほぅ?』
――ぶっちゃけ殺したクソ上司の事思い出して労力使う暇あるなら、私は皆を幸せにするにはどうすればいいかを考える必要があるんですよ――
『ふむ』
――というわけでちゃんとした助言を下さい、できればエドガルドがこれ以上傷つかない方法を!!――
『……』
――可能なら私の良心も痛まないので!!――
『そこで自分を二の次にするあたりがお前らしい、ふむ、だがそこを気に入っているからな』
神様は何か楽しそうだ。
そしてしばらく何かしているようで黙っている。
『ふむ……』
――どうしたんですか?――
『ちゃんと調べたら割と難しいことが分かった』
――ちょっとー?!?!――
『まぁ、そうだな……うむ』
――あのー……――
『よし、ちょっとだけ襲ってみろ』
――はい?!――
神様の言葉に耳を疑う。
――え、ちょっと、それ――
そんなことをしたら、エドガルドは絶対傷つく。
『エドガルドが誘った時、少しだけだ、明らかに駄目だという反応をする。そしたらすぐに止めてフォローしろ』
――あ、あのほ、他に方法は?――
『ん? エドガルドと外出してお前がちょっと目を離せば――』
――それ以上言わなくていいです、やります――
『分かれば良い』
神様が甘くない事を理解しつつも、それでも気遣って言った内容なのは分かるが言葉の選び方をツッコミたい。
――少しだけ、それでお終い、お終い!!――
私は、何度も繰り返した。
間違えてはいられないのだ、これは。
一度きり、失敗すれば、ご破算。
そう言い聞かせた。
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