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序:異世界転生の前準備
私の人生は終了しました~『運命』は遊び半分で弄るべきものではない~
しおりを挟む人間というのは頑丈に見えて非常にもろい生き物。
人間というのはひ弱に見えて暴力的な生き物。
つまり私が言いたいことは。
あっけなく死ぬから少しは考えろテメェら!!
という事である。
強い衝撃に一瞬で全てが真っ暗になった。
『――おい、聞こえるか』
聞きなれない声に反応して、目を開けると、私は何処までも白だけの真っ白な空間にいた。
「……聞こえてる、けど」
目の前には真っ黒なフードの謎の人物。
中性的な声をしている。
顔は見えない。
『よしよし、名前は言えるか?』
「……高坂美鶴……此処、は何処なの?」
少し馬鹿にしてるのかと思いつつも、見たことの無い場所に連れてこられた私は挙動不審になる。
『美鶴、残念なお知らせだ』
「……何?」
『お前は死んだ』
「……はい?」
――どゆこと?――
『やはり記憶が少し混乱しているようだな』
「んー……えーと確か……パワハラ、モラハラクソ上司がまだ新人の女子いびりまくってて、前々からクソだけども上が何もしないからとりあえず証拠ため込んでおいたんだけど我慢できなくなって、文句つけて口論になって……えーと、凄い衝撃があった気がする」
私は少し前の事を思い出す。
若干記憶が曖昧だ。
『そこまでは覚えてるな。ならば言おう、美鶴。お前、そのクソ上司に、クソ上司が机に隠してた金槌で頭部を殴られ、殴られたら不味い場所をやられて死んだ』
「……は?! 私あのクソ野郎に殺されたの?!」
『そうなる』
良く分からない謎の人物の言葉に、私は怒り心頭状態にならざる得ない。
「あのクソ野郎!! 呪ってやる!! そうそう簡単に死ねると思うなよ!!」
悪霊にだってなってやる、殺された恨み、はらさでおくべきか!
『あー確かに、殺したのはその上司なんだが……』
「何?!」
『……そういう風に、運命弄ったのが……私の身内だ』
「……パードゥン?」
思わずエセ英語を使ってしまう。
『つまり、私はお前達の言葉では神、そしてやらかした馬鹿はそれに連なる者という事だ』
謎の人物基「神」の言葉に思考が停止した。
話によると、私は本来ならばそのパワハラと隠蔽体質を暴露し、訴え、ついでに環境改善をし、ゆくゆくは会社で重要なポジションに着き、それによって才能ある者達を積極的に支援し、会社だけでなく社会を大きく発展させる――まぁ、ある意味「特別な存在」になるはずだったらしい。
ただ、その発展があまりにも出来が良すぎて面白くないと思った「馬鹿」がいたらしく私の運命とかを軽くいじった結果、私はぽっくり死んだもとい殺されてしまった。
生きていたら私がやったであろう事は「偉人」として書物に乗るレベルの事内容だったらしく、まぁ、おかげで大騒動。
やらかした「馬鹿」は格を最底辺まで下げられて「修行しなおし」まで言いつけられて私達的に言えば「地獄」を見ているらしい。
「いや、それで私が留飲さげるとでも? 納得するとでも? はいそうですかって許すとでも?」
『思っていない』
首を振って「神」は否定する。
『お前は既に死んでいる為生き返らせることはできない、お前は確かに生きていれば歴史に名を遺す存在だが普通の人間にはかわらない』
「あ゛─―……そう」
『その代わり』
「ん?」
『お前達の世界では話としてはやっているアレだ。異世界へと転生して人生を謳歌する手助けをしよう、どんな世界でもいい』
そう言う「神様」に私は少し考えてどうせ無理だろうと思いながら言う。
「じゃあ『冬の愛を暁は歌う~愛の輪舞曲~』の世界で主人公のダンテになりたい。あ、女になるとか無しね、男のまま。それと私攻め側になりたい。それで攻略できるキャラ全員を幸せにして、全員と歩んでいきたい」
『……』
私の言葉に「神様」は考え込むように黙り込んだ。
――ほら、やっぱ無理だろ――
『いや、その……できなくはない、が……』
「え、できるの?」
私は「神様」からの予想外の答えに、目を丸くする。
『あ、ああできなくはないが……それで、いいのか? 性別は変わるし、しかもお前はそういう経験ないだろう? 幾らチートとかを使っても、その、なぁ……』
「うるせぇ、私は恋愛対象分からないけど、突っ込みたい性癖の持ち主だったんだよ!! でも女王様って感じじゃないし、女性に突っ込まれたいって人と巡り合う場所とか探す勇気とか打ち明ける勇気もなかったんだよ!!」
私は自分の性癖というか性的な趣向、欲求をぶちまける。
他のオタク仲間の女子のように、恋愛ゲームで主人公に感情移入もしくは主人公の女子と、男子の恋愛模様を楽しむとかはしなかった。
男士同士の恋愛ゲームを初めてやった時、明らかに違う感触を覚えた。
成人向けのゲームで、主人公が攻めとして相手を堕とすゲームだったが、それで初めて主人公に感情移入ができた。
何故か分からず色々探した結果――
私は相手を――どちらかと言えば男性を攻めたいという欲求の持ち主である事が分かった。
女性が男性を責めるゲームは基本、M気質の男性向けなので主人公は男性になる。
なので、私がやるのは男性同士の恋愛要素があるゲームになりがちだった。
欲求を満たすために、夢小説やオリジナルの話だって書いた。
異性恋愛、同性恋愛、関わらず、基本相手が受けになる話を。
でも、別に一般的な異性恋愛とかが嫌いとか苦手とかそういう訳じゃない。
エロが好きなのは否定はしないけど。
けれども、私にも苦手なものはある。
寝取り、寝取られ、不倫、そう言った類の物だ。
なので、どんなにキャラが魅力的だろうと、その要素があるとやらない。
逆にそれがないのなら、快楽堕ちとか、調教物とか色々手を出した。
故に私は常々悩んでいた。
私は何なのだろうと。
心の性別が違う?
いや、違う、私の心の性別はたぶん女性だ。
男性ではない。
SMクラブの女王様的な要素を持っているのか?
いわゆるfemdomのような要素を持っているのか。
それともDom/SubのDomのような要素を持っているのか。
分からない。
自問自答を繰り返しながら、創作活動と、ゲームを遊んだり、薄い本等を読み漁っていた。
恋愛対象と性的な欲求を求める相手はどちらかと言えば男性、女性も嫌ではないが、男性の方がしっくりくる。
けれど、役割は――タチ、攻め、つまり相手を抱きたいという感情がある。
かといって「ふたなり」になりたい訳ではない。
分かってる、これが正しい選択なのか、分からない事が分かっている。
『――成程、自分でも答えは分からず、だがそれならばという訳か』
「人の心読まないでもらえますか?」
『すまんな。だが身内のしでかした事でお前の人生を終わらせたのだ。だからこそ、お前に不幸になって欲しくはない、それだけだ』
「……」
上辺という感じではない、本心なのだろう。
「まぁ、その言葉に嘘はないと信じますけど……」
『少し時間をかけて転生先を選べばいい、その間に知りたいであろうこともあろう』
「あ」
私は「神様」の言葉にハッとする。
『お前が死んだあと、何が起きたか、どうなったのかを』
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